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訳:高橋 康也・高橋 迪絵:アーサー・ラッカム
1984年01月 新書館より
相変わらずろくでなし感の強い話ですが、特に今回は主神ヴォータンのへっぽこぶりが
際立つ内容です。(^^;前半はジークリンデとジークムントの話、後半はワルキューレの話になります。
以下、粗筋と感想になります。ネタバレに注意。
ジークムントとジークリンデは、ヴォータンが人間の女性に生ませた双子の兄妹。
ジークムントが父親と狩りに出かけている間に、館が山賊(ナイディング一族)に襲われ、
母は殺され、妹は行方不明に。
ジークムントと父は追放されて逃走するが、度重なる盗賊達の襲撃により
父と離ればなれになる。
ジークムントは一人で旅を続け、ある娘から助けを求められる。
身内から意に染まない結婚を強いられたため悲しんでいる。
ジークムントは娘を守るために、彼女の身内と戦い、勝利するが、
兄弟達の死体を見た娘は泣き崩れて動かない。
ジークムントは娘を守って戦うが、武器を叩き落とされ、娘を殺されてしまう。
負傷したジークムントは逃げて、ある家にたどり着く。
その家はフンディングの家で、その妻はかつてさらわれたジークリンデ。
ジークリンデがジークムントを介抱するところへ、フンディングが帰宅。
ジークムントが身の上を話すと、フンディングは娘の身内の一族だったため、
一族の仇として、フンディングと決闘しなければならないことになる。
武器がないジークムント。
ジークリンデはとねりこの木を示し、そこにジークリンデが無理に結婚させられた夜に
旅人が刺していった剣があると言う。
その旅人はヴォータンであり、剣にはヴォータンの魔法がかかっていて
他の者には抜くことができなかった。
その剣を抜き、ジークムントとジークリンデは互いへの愛を確かめ合って喜び合う。
よくある話と言えばそうですが、娘に助けを求められたジークムントが相手を殺しちゃうのが
ちょっとびっくり。
だって娘が親兄弟を殺されたら悲しむの当たり前だし。
娘を連れて逃げるくらいにしておけばよかったのに。
そして、ジークムントとジークリンデが出会ってたちまち恋に落ち、何の躊躇いもなく
愛を語り合うので、この時代の神話世界では兄妹の恋はOKなのねと思っていたら、
後にフリッカ(ヴォータンの妻)が『恥ずべき交わり』と非難していて
やっぱりダメなんじゃんと思いました。
後半はヴォータンとフリッカの言い争いからスタート。
フリッカは人間の女なんかに生ませたジークムントに、ヴォータンが肩入れして
剣にかけた魔法で助けようとすることが許せない。
フリッカは結婚の女神であり、結婚の掟を破ったジークムントに対して
フンディングから復讐を求められ、婚姻の守護者としてそれを了承したのです。
浮気の事も婚姻の女神としての主張もフリッカの方が正論であるため、ヴォータンは
フリッカに口論で屈して、ジークムントを助けないことを約束させられてしまいます。
ヴォータンは仕方なく、ワルキューレの1人であるブリュンヒルデにジークムントを
殺すよう命じます。
ワルキューレは全員で8人いて、ヴォータンと知の女神エルダとの子。
いずこの主神も浮気者ですが、フリッカはワルキューレ達の事は認めて(諦めて?)いるので
ギリシャ神話のヘラよりはだいぶ寛大です。(笑)
しかし、ヴォータンはジークムントを死なせたくない苦悩をブリュンヒルデに語ります。
指輪がアルベリッヒの手元に戻ったら、神々の支配の世が終わってしまう。
その前に巨人族のファーフナーから指輪を取り戻さないといけないが、指輪を与えるという
契約をしているため、取り戻すことができない。
そのために神の意志の影響を受けない自由な人間が必要で、それがジークムントだが、
自分が剣を与えたため、神の意志の影響を受けているとフリッカに矛盾を突かれて
助けることができなくなった。
こうなってはもう終わりだ、自分にできることは何もない、終末だと嘆き騒ぐのです。
それを聞いたブリュンヒルデは、ヴォータンの命令に背いてジークムントを助けようとします。
が、決闘の場にヴォータンが現れ、ジークムントは死んでしまう。
ブリュンヒルデはジークリンデを連れて、姉妹達の所へ逃げ出します。
ジークリンデのお腹にはジークムントの子が宿っており、ジークフリードと名を与え
荒野に逃がします。
命令に背いたブリュンヒルデに怒り狂ったヴォータンは、ワルキューレから追放し
人間の男と結婚するという罰を与えると言います。
それって罰なんだ。
神々から見た人間って、愛されていなくて、ほぼ奴隷扱い。(^_^;)
ブリュンヒルデはヴォータンへの愛を語り、ヴォータンの本当の望みを忠実に実行したのだ
と訴えます。
ヴォータンはブリュンヒルデを深く長い眠りの中に閉じ込め、いつの日か彼女を目覚めさせた
人間の男の妻になると定めます。
でも愛する娘の言葉に心を動かされ、眠ったブリュンヒルデの周囲を火の神ローゲの炎で
包み、勇敢で強い男しか近寄れないようするのです。
ヴォータンって子供っぽいと思います。
ブリュンヒルデを大切に思うなら、嘆き騒いで話なんか聞かせなきゃいいのに。
ブリュンヒルデを罰したのも、自分の命令に背いたからというよりは、フリッカに対して
面目が立たないからって感じですよ。
次の話は「ジークフリード」。英雄的な人間の男がブリュンヒルデを起こしにくるのかな?
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