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2017.01.30

口入屋用心棒「春風の太刀」　鈴木英治

テーマ：最近、読んだ本を教えて！(24648)

カテゴリ：読んだ本

２００６年８月　双葉文庫より

殺し屋・佐之助との死闘の末、深手を負う。
次期沼里城主・又太郎の心配りや、日頃から世話になっている
小日向東古川町の口入屋・米田屋一家の献身的な看病もあって、
ようやく傷も癒え始めた折りも折り、
米田屋の長女おあきの亭主・甚八が思わぬ事件に巻き込まれる。
好評書き下ろし長編時代小説、シリーズ第五弾。
（裏表紙紹介文より）

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以下、粗筋と感想になります。ネタバレに注意。

直之進が米田屋で看病をされている頃、佐之助も千勢の看病を受けていました。
３日間意識不明で、４日目からようやく食事を取れるようになり
御飯を作ってあげたり、体を起こしてあげたりと甲斐甲斐しい千勢。
日中は勤めている料亭に仕事に行くんですが、佐之助が待っていると思うと
家に帰るのも楽しく、周囲から「いいことあったの？」と尋ねられる状態。
ここまで来たら諦めて自分の本心を認めちゃえばいいのにと思うのに、
佐之助は藤村円四郎の仇なのにこれでいいのか、と悶々としています。

千勢を押し倒してしまいます。
ただ無理強いする気はないので、千勢にひっぱたかれて素直に手を引く。
「明日、出て行ってください」という千勢に、
「明日でいいのか？今すぐと言わないのか？」と千勢の心を見透かしたような言葉。
ここまでわかっているならさ～と思うのだけど、翌日には本当に出ていきます。
引き留めてほしい佐之助と、引き留めたいのにできない千勢。
うん、もう完璧なメロドラマです。

ただ、その後の佐之助の勘違いが残念。
千勢が思い切れずにいるのは、亭主・直之進がいるせいだ、と。
いや、そっちじゃなくてさ。
既に藤村円四郎の存在ですらなく、さすがにフリーダムな千勢も

わかってない佐之助は、直之進を倒す覚悟を新たにします。

そして、直之進の所へ。
自分が千勢の所にいた事を明かして嫉妬心を煽ったうえで、
互いに病み上がりだから、時を改めて決着を付けようと宣言して去ります。
対する直之進はと言えば、おきくに床から助け起こされた時に

千勢を問い質し、佐之助の世話をしたのが本当だったと知ると、
千勢の目を覚まさせるためには佐之助を殺すしかない、と決意する。
もうね、直之進のこういうところが男としてダメダメだと思う。
いい加減、自分がとっくに振られていることを認めて、千勢のことは
諦めればいいのに。
三角関係昼メロ展開は、当分はこのシリーズの主軸として続く模様。

もう１つ、口入屋用心棒シリーズとしての話。
これまでは沼里の藩内騒動がメインでしたが、これが解決した今回、
用心棒として働くのは単発の事件となりました。
米田屋の長女おあきの夫・甚八が殺されてしまったのです。
殺される直前、急に金回りがよくなり、何かの商売に精を出している様子。
何か悪いことをしているのではないかと心配したおあきが米田屋に相談、
直之進が甚八を尾行して調べてみることになった矢先の事でした。

その後の直之進の調査の結果、甚八は僧侶専門の女郎屋を始めていた事が判明。
商売の元手となる金がないので、出入りしていた賭場のヤクザの親分に相談。
親分に資金をだしてもらう代わりに、利益は折半としていたのが、
親分が商売ごと横取りしようと甚八を始末したという真相。
富士太郎に話し、女郎屋の摘発に参加することになった直之進。
雇われていた用心棒と戦いになります。
病み上がりで体が鈍っていたためと、用心棒風情と侮っていた心の隙を突かれ、
苦戦するのですが、何とか勝利をおさめます。
もっと鍛錬しなければ、と反省した直之進は、ずっと世話になっていた米田屋から
自分の長屋へ帰ることにして、一件落着。

話の本筋とは関係ないですが、琢之介の身の上がわかりました。
ある北国の家中の士で勘定方の役人だったそうですが、ある日、上司と妻が不倫して
いたのが発覚。
妻は琢之介の出世のためにしていたと告白。
上司を斬るつもりで乗り込んだが、命乞いをされて斬れず、一発だけ殴った。
屋敷に帰ると妻は自害。
上司は処罰を受けて無役に。
城中の暮らしがいやになった琢之介は、江戸へ出てきたそうです。

更に、琢之介が師範代を勤める道場主の身の上も明らかに。
元々は旗本の跡取りだったのが、５年前に勘定方に勤めていた父が使い込みの
濡れ衣を着せられて切腹、お家は取り潰しになったとのこと。
同じ勘定方ということや、それぞれに色々な事が身に降りかかるものなのだなと
感慨を覚えた琢之介でした。

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