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Jan 6, 2007
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カテゴリ: 小説 上杉景勝
「もう、お酒はおよしなされ」

 つねなら酔いもせぬ酒量なのに、今宵は強かに酔った。

「さあ、寝所にお入りなされ」  「そういたします」

 綾のすすめに、すなおに腰をあげ思わずふらついた。 「肩を貸しましょう」

 肩にすがって寝所に導かれた、姉の躯に触れるのは数年ぶりであった。

さらさらとした黒髪と柔らかな躯に景虎は我を忘れた。

 寝所に入るなり綾を抱きしめた。  「景虎殿、なにをなさる」

「姉上が好きにございます」  抗う綾の襟元を激情のまま広げ顔を押し付けた。

かぐわしく懐かしい香りにつつまれ、すべてを忘れた。



 綾は子供時代から、弟の景虎に異常な愛情をそそいできた、それだけに激し

い抱擁をうけ、すべてを受け入れた。

 景虎は実の姉を抱き、綾は胎内に弟の胤を宿したと確信した。

 激情がさり、景虎が声なくうな垂れている。

「悩むことはお止めなされ、二人はこうなる運命(さだめ)だったのです」

 綾の冷静な声を聞きながら、景虎は姉の乳房に顔を埋めた。

「いいですか、今宵のことは夢です。忘れさるのです」 「・・・-」

「きっと、貴方の やや が産まれます、ですが、その子は政景殿のお子。分ります

な」 燃えるような眸で景虎をみつめ、綾は身繕いをすませ寝所から去った。

 たった一度の過ちであったが景虎にとり、生涯一度の女人が実の姉の綾であ



決意した。

 翌年の弘治元年十一月二十七日、綾は次男を出産した。赤子は長尾喜平次

(きへいじ)と名づけられた。綾は政景とのあいだに二男二女をもうけたが、不幸

にも長男の義景(よしかげ)を亡くすことになり、喜平次が家督を継ぐこととなる。


 一方、景虎はこの年の三月二十四日に村上義清(よしきよ)高梨政頼(まさより)



 越後の精兵を率いての善光寺着陣であった。

 一方の武田晴信(はるのぶ)は、一万二千名で川中島に陣をしいた。第二回の

川中島合戦である。武田勢は越後勢の精強を恐れ、犀川(さいかわ)手前の

善光寺西方の旭山城に、三千の兵を入れてたて籠もった。

 景虎は引き連れた八千名の精鋭で決戦を挑みたかったが、旭山城が邪魔とな

り戦線は膠着した。対陣すること百五十日、犀川付近で小規模な小競り合いは

あったが主力戦ではない。

 武田勢は補給線の伸びで不利をさとり、今川義元(よしもと)に和睦の調停を

依頼した。景虎は信濃衆の旧領回復を条件として、和議に応じ兵を引いた。

 この退陣の途中、長尾政景より次男誕生の知らせをうけた。

 景虎はこの知らせで、綾の産んだ子が己の子であると確信した。彼の全身に

喜びがはしった、いずれ会うことになろう。

 あれ以来、いっさい女子を退け、強靭な意志の力と禅の世界に没入することで

女色を断ってきた。そんな国主を人々は好奇と神秘な眼差しで見つめ、不犯の

将と噂するようになった。

 彼は戦塵(せんじん)のなかに明け暮れる年月を過ごし、青竹をつかんで関東、

信濃、越中(富山)と兵を進めていた。その勢い風来電過(ふうらいでんか)と恐れ

られた。余談ながら、永禄三年、政景の城下で希代の軍師となる男子が産声を

あげた。父は坂戸城の薪炭(しんたん)をあつかう俗吏(ぞくり)で、樋口惣右衛門

兼豊という。赤子は幼名を与六というが、出生の月日は不明である。この幼児が

のちの上杉家の軍師となる、直江兼続(かねつぐ)である。

 この年の五月十九日に、駿河(静岡)の支配者である今川義元が、上洛途中の

桶狭間で、織田信長の急襲をうけ、あっけなく命を失っている。

 産まれいずる者、死する者、これが戦国乱世のならいである。

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Last updated  Jan 6, 2007 09:56:14 AM
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