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Nov 12, 2014
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 武田信玄と上杉政虎の雌雄を決する、川中島合戦は終わったが、

その翳で戦国の世が、微かではあるが変貌を始めたのだ。

 それは一国の衰亡を発端として起こった。

 その国が東海一の大国、駿河の今川家であった。

 上洛を目差した義元が桶狭間で討死し、倅の氏真が当主に座った

時から、その衰亡が始まったのだ。

 その原因は父、義元の弔い合戦もせず、女子と酒に現を抜かす、

氏真の無能な所業の所為であった。

 戦国乱世にあっての弔い合戦は、武将としての拠り所であったが、

氏真は全く無能な男で遂に、父親の弔い合戦をせぬままに日を送り、

その態度をみた多くの豪族が、今川家を見限り離脱して行った。

 その影響が顕著に現れたのが三河の地であった。

 ここは元々、三河松平家の支配地であったが、当主の非業の死で今川家

が庇護し、そのまま属国とした一帯であった。

 義元が織田信長に討たれた知るや、今川家の城代は三河の最重要拠点の

岡崎城を、真っ先に放棄し、駿府へと引き上げて行った。

 まさに戦略眼のない城代であった。

 その空城となった岡崎城に松平元康が抜かりなく入城し、氏真に義元の

弔い合戦を進言したのだ。

 これは今川家への恐怖から出た進言で、こうしておけば元康は今川家の

縁者として身の安泰が計れたのだ。

 今川家がこのように衰退しても、その力は絶大で氏真が元康を討てと

命ずれば、赤子の手を捻るように元康は簡単に討たれたであろう。

 氏真からすれば元康の進言は煩わしい事であったが、元康は今川家の

武将であり縁者である、そう信じきっていたのだ。

 未だに駿府城には、元康の妻子が人質同然に捕らわれている。

 それ故に岡崎城入城には寛大であり、宿老達も今川の為の行動と考えていた。

 元康はこの好機を逃さず、三河を確りと松平家の領地として固めたのだ。

 こうして大国、駿河の衰亡が、近隣諸国へ大きな影響を与えたのだ。

 まさに駿河を巡り、三河、遠江、尾張、美濃の地が沸騰を始めたのだ。


 駿府の隠居所の座敷に信虎を交え、五名の者達が集まっていた。

 真冬というに座敷には障子戸を透かし、燦々と陽の光が差し込み、

火鉢もいらないほどである。

 信虎は六十七才となっていたが、一向に謀略の衰えもみせず益々、

陰湿な策謀をめぐらすようになっていた。

 座敷には信虎の股肱の小林兵左衛門とお弓の二人と、小十郎も同席し、

武田家の忍びの頭領である、河野晋作と信虎の会話を聞いている。

「河野、川中島の合戦では間違いなく山本勘助は討死いたしたか?」

「左様、首級は発見できませなんだが、間違いなく山本さまの遺骸」

 河野晋作にも忍びの頭領らしく貫禄も備わってきた。

 お弓が顔色を変え唇を噛み締め顔を俯けた。

「信玄はいかがいたしおる?」  

 信虎がしわ深い顔をみせ、鋭い口調で訊ねた。

「信繁さまはじめ山本さま、さらに多くの武将を失われましたが、漸く

心の傷を癒されたとお見うけいたします」

「莫迦者が、駿河に軍勢を繰り出さずに関東に現を抜かすとはな」

 信虎が口汚く罵った。

「今は北条殿と手を結び上杉勢と対する、これが武田家の戦略にございます」

「そちは越中の本願寺をどう見ておる。まさか調略を止めた訳ではあるまいな」

「越中の一向門徒衆はお味方、ことある度に越後の背後を脅かしております」

「甘いのじゃ」  

 信虎のしわがれ声に怒気が含まれている。

「どうせよと申されます?」

「輝虎が関東に出陣した留守に、一気に越後国境から攻め込むのじゃ」

「上杉政虎は名を改めましたのか」  

 お弓である。

「将軍足利義輝の偏諱(へんい)を受けてな、そのような些事はよい。

何故に越中の本願寺と共に越後を攻めぬ」

「留守居役の長尾政景は評判通りの武将、迂闊に攻め寄せますと痛い目に

あいまする」 

 河野晋作が恐れる素振りも見せずに反論した。 

「判った、暫くは眼を瞑ろう」

 信虎がしわ深い顔を歪めている。

「ところで本日、我等を呼んだ真意は何でございます?」

 河野晋作が眼を光らした。  

「そち達は世の中を見ておるのか?」

 信虎のしわ深い顔に怒気が含まれている。

「・・・-」  

 全員が答えに窮した。

「尾張、三河をよく眺めよ、美濃では義龍が急死いたし、十四才の龍興

(たつおき)が跡目を継いだ。それに乗じて織田信長め、奴は美濃攻略に

奔走いたしておる。先年の五月には森部の戦いを仕掛け、今は墨俣に砦を

築き小牧山にも築城しておると聞く、いずれ美濃は信長の手に落ちよう。

一方の三河はどうじゃ?」

「申しあげます」  

 それまで黙していた小十郎が、抑揚のない声を発した。  

「申せー」

「松平元康殿、岡崎城で勢力を張り三河の諸豪族の城を攻略いたしております。

このまま放置いたせば三河、遠江は、遠からず松平家が支配いたしましょう」

「まずは三河じゃ、今川の倅は弔い合戦もせず女と酒にうつつを抜かしておる。

このまま信玄が手をこまねいておれば、小十郎の申す通りになるじゃろう」

「それは判っております」  

「河野、そちは判ってはおらぬ」

 信虎の怒声を浴び、河野晋作が顔色を変えた。

「判っておるなら手をうて莫迦者が、三河も一向門徒衆の巣窟じゃ。特に

野寺の本証寺は門徒衆にとり大切な寺じゃ、ここに調略の手を伸ばせ」

「申し訳ございませぬ、我等は三河の一向門徒衆の力を侮っておりました。

彼等の力は小豪族や、松平家の家臣まで及んでおりますな」

 河野晋作が感心の面持で応じた。

「川田弥五郎は元康により、旗本に取り立てられておる。河野、その弥五郎を

通じ、松平家臣達が元康に逆らうような工作を考えよ」 

「承知いたしました」 

「小十郎は地侍や門徒衆をそそのかすのじゃ。出来るか?」  

「判ってござる」

 小十郎が感情のない声で応じた。

「大殿には驚きに御座います。駿河に居られ各地の様子を知っておられるとは」

 河野晋作が驚きを隠さずにいる。

「そちも武田の忍びの頭領じゃが気配りが足らぬ、これは全てお弓の働きじゃ」

「お弓殿の」  

 お弓が口許をほころばしている。

 成程な、武田家の軍師であった山本勘助さまを手玉に取ったお方じゃ。

 河野晋作が一人、合点した。

「いずれにしても標的は上杉輝虎と三河の松平元康じゃ、心して励め」

「大殿は、他に何かをおやりになられますのか?」  

 河野晋作が尋ねた。

「わしは駿府城を調略いたす」  

 信虎が乾いた顔で平然と答えた。

「何とー」  

「今川家は駄目じゃ、わしはの今川の重臣の中で瀬名駿河守、 関口兵部、

葛山備中守を狙っておる」

 河野晋作が一瞬言葉につまった。いずれも今川譜代の重臣達である。

「成算はおありに御座いますか?」  

「なくて話はせぬ」  

 再び怒声を浴びせられた。

「大殿、お話しせねばならぬ事がございます」

 河野晋作が威儀を正している。

「なんじゃ?」

 信虎が不審そうに河野の顔を見つめた。

「信繁さまのご最後の様子にございます」

「何とー」

 信虎が男兄弟のなかで一番、可愛がった倅が次男の信繁であった。

「どのような最期であった?」

 信虎が眼を瞑っている。河野晋作が信繁の最後の模様を語った。

 戦況、不利を悟った信繁は家来の春日源之丞を馬前に呼び寄せ、

信玄直筆の法華経陀羅尼品(だらにほん)の経文を金粉で書いた母衣と、

乱れ髪の一握りを切り取って渡した。

「父の形見として吾子、信豊に渡してくれよ」

 と遺言を残し、群がり寄せる越後勢の中に駆け入り、壮烈な討死を遂げた。

「・・・・信繁、さぞや無念であったじゃろう。信豊に形見を残したか」

 老いた信虎のしわ深い頬に、涙が伝っている。

 四人が呆然と信虎の様子を見つめている。

「信玄に伝えよ。政虎なんぞと合戦するから信繁を殺したのじゃ、武田の

標的は今川じゃ。この言葉を伝えてくれえ」

 涙が零れるままに、声を震わせる信虎であった。

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Last updated  Nov 12, 2014 02:08:32 PM
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