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「ねえ、茶渡君は自分の力が好き?」「……?ああ」自分は人心の機微に聡いと時に言われる。しかし彼女の考えはよくわからない。「あたしは嫌い、かな」「……」「茶渡君の力は他の人を護るためにあるんだよね?死神の力も滅却師の力もそうだよね」「井上の力も」「あたしのは違うよ」何故そこで笑うんだ。「私は拒絶する」魔法の呪文。「私は拒絶する」万能の呪文。「私は拒絶する」絶対の呪文。「防御兼回復役のつもりだったんだけどなあ」「……実際そうだろう」「違うよ。回復系ヒロインは心清くて優しいと決まってたんだよね、考えてみたら」全然違うよ。「全てを拒む人間にそんな資格はないよ」「私は拒絶する」「俺たちは、井上を拒絶しない」「……ありがとう、茶渡君」井上は何を拒絶したいんだろう。それがわかれば全て解決するような気がするのに、俺はつまらないことしか言ってやれなかった。
2006年09月03日
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(「ようやく恋ルキになった」の続き)ひと段落ついたときはもう空が白みかかっていた。具合が悪いくせに、「何だか楽しそうな声がする」って這い出してきたなんて……なんて迷惑な人だ!いやうちの隊長に比べればかわいいもんだが!何時もルキアを大事にしてくれることは感謝してんだが!ああ……仮眠する時間もとれねえ……。「すまんな恋次、巻き込んでしまって」なんだかルキアがしおらしいのは、多分二徹のせいだろう。「気にすんなよ、修羅場に押しかけてきた俺が悪い」「……誕生日おめでとう」一瞬耳を疑った。「わ、悪かったな昨日のうちにいえなくて!あの状況では仕方ないだろう!」「あ、ああ」「私だって楽しみにしていたんだぞ?しかし皆を見捨てるわけにもいくまい!」「わかってるって。そんなに興奮すんなよ」洗う暇も無かった服。「これ、なんとかならないか石田と井上に聞いてみよう。……そのあとで、貴様に何か買ってやる」「いいのか?」「私にだってその程度の蓄えならある!」おっしデート確約!今日も張り切って仕事だ!……結局、俺はルキアと隊長連名で、何所に着ていきゃいいのかわからん服を買ってもらった。そしてその後、一日「二人の」買い物の荷物もちをさせられた。染み抜きの説明をしながら俺を見る石田のあの目を、俺は多分一生忘れねえだろうな……。
2006年09月01日
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(「何だか乱菊さん小説みたいになった」の続き)それから表で花火を見ながら散々飲み食いし、可愛い部下たちへのお土産を買い、ルキアの服を入手したのは結局日付が変わる頃だった。疲れたし散財したけど、これから一番大事なイベントが残っている。看病に疲れたルキアに、こいつを渡すんだ!「せっかくだから、あんたが石田に頼んで作って貰ったことにしちまいなさい。大丈夫、誰も余計なこというもんですか。あの子絶対喜ぶよ!」と、呑み続けのわりに足取りのしっかりした松本さんに知恵をつけられ、まだ残業中だった理吉たちに差し入れし、十三番隊のルキアの元へ向う。(手伝えとの声は聞かなかったことにした。すまねえ)本当に症状は軽かったらしく、もう殆どの隊員は元気になっているようだった。隊長の世話をしているというルキアを呼び出してもらう。「どうした、恋次」「い、いや、その……」流石に疲れた顔で、ルキアは不機嫌そうに俺を見た。「浮竹隊長の様子は?」「ああ、大分よくなられた。明日の朝には起きられるらしい」「そうか、よかったな」だからなんだ。そういいたげなルキアに、きれーな紙袋を差し出す。「なんだ、土産か?」「今日、現世で受け取ってきたんだよ。お前の秋服」「何?」女は着るものと食うものには滅法弱い。松本さんは正しかったぜ。(石田もな)ルキアは目の色を変えて紙袋をひったくった。「あ、あけてもいいか?」「おう」ルキアは袋から服を引っ張り出して歓声をあげた。俺は現世の服はよくわからねえし、売れ線とか流行の色なんてさっぱりだが、ルキアが喜んでいるんならいい出来なんだろう。「いいな……早く着てみたいな!」「そうだな。この服が合ううちに行こうぜ、井上に新しい甘味屋の話聞いたし」「ああ……」自分が寝ずの看病をしているのに、一人で現世で楽しくやっていたのか、という不満はどっかに吹っ飛んだらしい。服を広げて、組み合わせてにこにこしていやがる。「おい、着替えたいんなら、俺は別の部屋で待ってるぜ?」「う」仕事中に着替えるなんて言語道断だ。しかし着てみたい。顔にそう書いてある。「いいんじゃねえか?浮竹隊長はあんま煩いほうじゃねえし」「うむ……」これは、着るな。そう思ったとき、襖がすっと開いた。まさかうちの隊長か!思わず身構えたが、現れたのはここの隊の隊長だった。「おや、阿散井君。お見舞いに来てくれたのかい?」「は、はい」この状況でそう考えるか。マジ呆けなのか見逃してくれたのか全然わからねえ。「つ、ついでに、わたくしの新しい衣類を届けてくれたのです!」「現世ものか、珍しいね。私にも見せてくれないか?」「は、はい」よかった、お咎めはなさそうだ。ルキアから服を受け取ると、隊長は珍しそうに眺めた。「ふうん、向こうではこういう格好をするのかい。ちょっと面白いね」……此処で安心した俺が甘かった。この人が出てきた時点でオチは決まってるだろうが!ふっと息を詰めると。病弱隊長は(ルキアの服の上に)思いっきり血反吐を吐いた。「浮竹隊長!」……ルキアは殆ど涙声だったが、何を惜しんでの涙なのか、俺に突っ込む気力は何所にも無かった。
2006年08月31日
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(「順位はでっち上げ異論は認めません」の続き)松本さんは、美人だ。おまけに色っぽい。しかし何故現在彼氏がいないかと言えば……元彼が滅法エグイ人だという噂があるため……ではなく、当人の言動に色々問題があるからだ。浦原さんいわく「親父ギャル」!毎晩酒をかっくらい、下ネタをがんがん飛ばし、仕事は出来るが基本的に「しない」!一言でいや、全く悪びれない人だ。さっぱりした性格で義侠心があって、これで男なら隊長たちをぶっちぎって人望第一位だろう。ただ……。これ見よがしにでかい乳揺らした相手に、全く動じずダチ付き合いが出来る男は、普通、いない。俺は女の体型にはあまりこだわり無いし、背も高いからまあいいが、「何所を見て話せばいいかわからない」という意見は実際多い。……頑張ってるよなあそこの隊長。ツレが違う事情を話した俺を、一護たちは哀れみに満ちた目で見ていたが、そんなわけで基本的に、俺は祭りに来た殆どの男に羨まれていた。……始めのうちは。「かーっ、やっぱ夏はビールに限るわね!」あんたそれ何本目だ。俺は缶入りのを飲んでいる。松本さんは瓶でラッパ呑みだ。……歩きながら。ああ、前を歩くチャドの背中に底ががんがん当たってる!いや、無関係の奴に当たらないようにわざわざ前を歩いてるのか……出来た奴。井上はわたあめだのやきそばだの片っ端から食いながら、松本さんと大声でくっちゃべってる。一護と石田は、どう振舞っていいのかわからないという顔で、黙って俺たちの後をついて歩いている。いや……もしルキアが一緒でも、まあ女二人の食べ歩きに付き合わされるってことは違わなかっただろうけど。少なくとも、半時ごとにおまわりさんだのほどういんだのに捕まる羽目にはならなかっただろう。当然のように俺の金でビールの飲み比べなんかやってるし……。「なんだか疲れたね、喫茶店にはいろっか?」正午に会ってから絶え間なく喰ってるはずの井上に言われて、「まだ喰うつもりなのか?」と突っ込んだのは俺じゃなくて一護だった。男四人は早めの晩飯、井上はパフェと晩飯、松本さんはビールで一息つく。ここで漸く、俺の誕生日だということを連中思い出したらしい。一護はバンダナ、チャドはなんか飾りもの、井上は縫い目だけはしっかりした人形をくれた。松本さんがくれたのは、ちょっと餓鬼どもには披露できねえもの(汗)。勿論全部有難いが、問題は、石田が寄越した鍵だ。「なんだこれ」「駅前のコインロッカーの鍵だよ。持ち歩いて、無くしたり汚したりしたら困るからね」「へ?」「朽木さんの秋服」「……」ルキアじゃなくて俺の誕生日なんだけど。言いかけた俺を隣の松本さんが突き飛ばし身を乗り出した。「やるじゃん石田!これで上手くやれっていうんだろ?」「は?」「ま、ね」ちょっと待て話がみえねえぞ?「鈍い男だねえ、これを意中の彼女に贈って点数稼げって言ってるんだよ!女は着るものと喰うものにゃ滅法弱い!まして現世の服は手に入れるのに手間かかるからね、ウケること間違いなし!」「……おお!」なるほど、そいつはいけそうだ!ルキアは綺麗な着物なら箪笥にぎっしり持ってるが滅多に着れねえ。しかし現世では現世の服を着て何の不都合もねえ!「有難うよ石田!俺は、俺はやるぜ!」「精々頑張りたまえ」「伊達に女で苦労してねえな!」「……余計なお世話だ!」よし、戻ったらこれでもうひと勝負だ!
2006年08月31日
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(「五時から男」の続き)「やっほー恋次。祭りだって?」「結局松本さん……ぐほ」思わず突っ込もうとした俺の首を、グラマー美人(ただしタチの悪い酒豪)が締め上げた。「女性死神人気NO.1のあたしじゃ不満だっての?」……それって9割女性票……俺の知る限り、野郎で入れたのはどっかのロックな先輩一人だけ……。「未成年だけで歩き回れる健全なイベントなんですけど」「でも酒くらい売ってるんでしょ?」「……売ってると思います」ああ、どうせなら人気NO.2の伊勢副隊長とか(アル中がついてきて井上にセクハラしそうだ)、NO.3の涅副隊長とか(鬼畜科学者がついてきて石田と悶着おこしそうだ)、NO.4の草鹿副隊長とか(保護者がついてきて一護に襲い掛かりそうだ)、……なんか俺って悲観主義者?「ちなみに雛ちゃんは、うちの隊長とデートだから」不幸なのは俺だけか。「隊長と副隊長が一度に休暇とっていいんですか?」「いいのよ、うちの隊長は仕事が速いから。デスクワークは昨日のうちに終わってんの」……そうか、それでこの人だけ体が空いているのか……納得だぜ。ちなみに日番谷隊長は、結局デートを反故にして、十三番隊の仕事を肩代わりしたそうだ。……合掌。
2006年08月31日
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明日は俺の誕生日だ。月末の忙しいこの日に(ルキアと一緒に)休みを取るため、俺は普段は真面目に仕事をこなしている。特に今年は上司が「五時から男(と現世では言うらしい)」になってしまったため、一週間午前様が続いた。だがやはり頑張ればいいこともある!祭りだ!空座町でちょうどこの日に祭りをやるってんで、一護が誘ってくれたんだ。俺は無論、ルキアなど目を輝かせて喜んでいた。現世でも、祭りとなれば屋台が出て、花火を打ち上げて、そりゃあ楽しいそうだ。勿論現世の金を大量に換金した。ルキアが喰いたいだけ奢ってやって、理吉たちに鯛焼きも買って帰ってやらなきゃならねえからな。浮かれつつバリバリ書類を片してたら、とんでもない報告が入った。食中毒だ。ルキアの所属する十三番隊で集団食中毒!なんじゃそりゃあ!なんでも昼の賄いに変なものが混じっていたそうで、病弱隊長が泡を吹き、隊員のうち9割近くが寝込んでいるらしい。程度は軽いが、なにしろ数が数だから、四番隊でも裁ききれず、残りの隊員が介抱せざるをえない。……ルキアが無事でよかった。浮竹隊長は、ありゃあ「病み上手の死に下手」の見本だからな。今度も大丈夫だろう。多分。しかし。俺の、「ルキアと鯛焼き喰って、ルキアとたこ焼き喰って、ルキアとお好み焼き食って、ルキアとかき氷とちょこばななを食う」という計画は見事に潰れた。(あ、りんご飴が抜けた)まあ、一護たちが一緒だから、淋しくはねえけどさ……。いっそ俺も看病に混じるか?病人と酔っ払いの看護には自信があるぞ!嬉しくねえけど。疲れもあって、思いっきりだらけていたところ、「阿散井」「たたた隊長?」なんで戻ってきてるんですかとっくに帰った人が!……ああそうか、ルキアを迎えにいって追い返されたのか。自分で看病するなんて考える人じゃないし、そもそも向いてないし。(泣いて辞退されるだろう)「ルキアは、明日の約束は果たせなくなった」「そりゃ仕方ないですよ。病人が出たんですから、別に苦情はありません」「代わりに、誰かあいているものはいないか、私から働きかけよう」「はあ?いやいいですよ別に。一護たちと同行するんですから」「しかし約定は果たされねばならぬ」……本当にいいんですけど……。相変わらず頑固な人だよな。そのまま帰るところをみると、その代理ってのはうちの隊員じゃ駄目らしい。忙しいから……いや、明日は基本的に何所の隊も忙しいはずだが。吉良か雛森あたりに押し……いや頼む気か?
2006年08月30日
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「朽木さんのお兄さーん、質問があるんですけど!」「……何だ」「どうしてこのお屋敷にはペットがいないんですか?」「ペット?」「えっと、愛玩動物ですよ、猫とか犬とか兎とか!あたしもチャド君も石田君も集合住宅に一人暮らしだし、黒崎君はおうちが病院だから飼えないけど、朽木さんはお金持ちのお嬢様だからきっと色々飼ってると思ってたのに!」「……(暫し考え中)犬なら私の職場に居るが」「(警察犬みたいなのかな?)朽木さんにも懐いてるんですか?」「そうだな」「時々連れて帰っちゃったりするんですか?」「そうだな」「じゃあ一緒にお散歩したり、じゃれあったり、口舐められたり、お風呂で洗ってあげたり、寒い日は一緒に寝たりできるんですね?いいなあ憧れのわんこライフ!」「……(顔には出さないがムカついている)」「に、兄様、どうしたのですかこの兎たちは?」「いや、現世では動物で癒しを得ることが上位者の嗜みと聞いてな」「兄様……私のために兎を、しかもこれだけの数を……(感動)」「それと、当分阿散井を屋敷には呼ばぬように」「え、あやつ何か仕出かしましたか?」「……いや、気分だ……」「?」
2006年08月27日
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(「それは製品名であって料理名ではない」の続き)「お兄ちゃん、石田さんがドーナツ持ってきてくれたよ!」遊子は嬉しそうに俺に報告してきたが、肝心のブツはもう一個しか残ってなかった。おい大皿二つ三人で空にしたのかよ!「親父が十個くらい空座中央病院に持ってったよ」夏梨が付け加えたが、それでも俺の分が一個きりという説明には足りねえ。石田は、恋次がくる前日には必ず試作して、井上たちに試食させる。今日は学校が休みなので、俺の家に持ってきたわけか。最初は、「女のご機嫌とって経費で落とすとはいい根性だ」と思ったが、石田は自分じゃ食わねえから、他人の舌が必要なんだろう。ま、とにかく、ドーナツ作りまできたわけだしな。死神が菓子作ってどうすんだよ、買えば済むだろうと思ったけど、確かにルキアは喜んでる。石田と恋次の、第一印象の悪さからくる反目もようやく消えたらしいし、時間も金もかかったけど、それだけのことはあったと言えるか。砂糖も何もかかってないドーナツを一口齧って、俺は叫んだ。「それでも俺への嫌がらせは忘れねえのか石田!」オールドファッションかと思ったら、ストロベリークリーム入れてやがった……!
2006年08月25日
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(「要するにデートしたい笑顔が見たい」の続き)「おい石田、第一回お菓子教室の結果はどうだった?」「ああ、何とか無事にフルーチェが出来たよ」俺は盛大にずっこけた。「ってミルクを入れて混ぜるだけだろ!教授料取ってそれか?」「仕方ないだろう、阿散井君が自分で口を滑らせて、朽木さんとお兄さんに成果を持っていかなきゃならなくなったんだよ。まあ思ったより手付きが良かったし、次はゼリーを作るつもりだ」「それも果汁とゼラチン入れて混ぜるだけじゃねえか。あとルキアは和菓子のほうが好きだぜ」「人間好きなものには点が辛い。いずれ白玉あんみつも教えるよ」……まあ死神は長生きだし、恋次がいいならそれでもいいさ。と思った俺が馬鹿だった。数日後、久々に会ったルキアにいきなり、「一護、ふるーちぇの美味しいお店を教えてくれ!」と言われた俺は、二人を心から呪った。
2006年08月24日
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半年振りの自宅は相変わらず豪華だが色褪せて見えた。こんな家に男やもめが一人暮らしなんてどんな気持ちだろう、とふと思う。「……あれ?」個人住宅には大きすぎる液晶テレビの下に、プレステ2がある。……あいつゲーム脳の信者じゃなかったけ?小学校の時、クラスでゲームボーイを持ってなかったのは僕だけだったぞ。買ったとも貰ったとも懸賞で当てたとも思えない。まして僕のために用意してくれたわけがない。メモリーの代わりにポケステが刺さっている。……何のソフトが入っているんだろう。スイッチを入れてみようか。……父がプレイしていたのは、可愛らしい動物キャラクターが登場する「どこでもいっしょ」というソフトだった。父と犬の「雨竜」の生活はどうやら最終日に入っていて、僕は慌てて途中で電源を切った。……見なかったことにしよう……。
2006年08月24日
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(「ケーキは四等分」の続き)「一護てめえ、祝勝会にどうして俺たちを呼ばなかった!」「ああ?とっとと向こうに帰ったくせに何言ってんだよ。お前らだって飲み会くらいしたんだろ」「あの隊長と一緒で落ち着いて酒なんて飲めるかー!自分の適量がわからない人間と飲む酒の味気なさがわかるのかお前に!」「……なんとなく」「何時倒れるか、まさか吐くんじゃねえかというあの緊迫感!たまんねえよ一次会が終わって隊長たちが帰ってから、副隊長だけで飲みなおさなきゃやってらんねえ!」「……おー(やっぱ酔ってんなこいつ……)」「それに最近は毎日定時に帰って、ルキアと甘味食べ歩きだぜ?その分俺が残業してんだぜ?いや下手にお供して、鯛焼きの薀蓄なんか聞かされるのは真っ平だけどな。ルキアもすっかり感化されて、この間話題のあんみつ所に誘ったら、あそこの白玉は作り置きで硬いとか抜かしやがんの!」「……(げんなり)」「畜生甘いモンが山ほど出たんだってな。俺も喰いたかったなー(泣)」「いや山ほど喰ったのは井上だけだ。幾らでも喰うから石田が張り切って作りやがって、俺たちゃ匂いだけで吐きそうになった」「メガネが作ったのか。そういや器用な奴だった……弟子入りしようかな」「へ?」「俺もルキアに山ほど甘いモン喰わしてやりてえ!」(……勝手にしろとしか言いようがねえな……)
2006年08月23日
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「あんたなにやってんの」石田は逃げなかった。「こんにちは、有沢さん。別に何もしてないよ?」ああどいつもこいつも。「あのさ、言っとくけど、あたし幽霊見えるから。あんたが今弓矢出してたのも見えたし、町中を黒い着物の連中が駈けずり回るのも、そん中に一護が混じってるのも見てたから」「……黒崎の影響だよ、それ。ああいう霊圧垂れ流しの奴がいると、周囲の霊感も自然と上がっていってしまうんだ」「そうなんだ。……あんたは、普通の奴だと思ってたよ」何故か溜息が出た。「悪霊退治なんて、随分勇ましいじゃないか」此処だけの話だが、あたしはコイツに一方的な親近感を感じていたんだ。「男のくせに」、手芸部で料理自慢で美白に気を使っていて、キモいだのなんだの言われても全く相手にしないところに。あたしも「女のくせに」って言われ続けているから、全く話は合わなくても同士のような気がしていた。だけど、グロい幽霊相手に弓を構えた石田は、えらく凛々しく見えた。「やっぱりあんたも男なんだ」「は?」ぐるぐる考えてたら、我ながらよくわからない感想に落ち着いた。石田は怪訝そうな顔をしていたが、「別に、性差は関係ないだろう。これは家業だよ。母も祖母も同じ事をしていた」「ええ?」「オフレコだよ。忘れてくれたまえ」うん、あたしは噂話は嫌いだ。それより、「だったらあたしを弟子にしてくれ!」「パス」「何でさ?」「……能力が高ければ誰にでも出来るわけじゃない。「性質」が重要なんだ。君は向いていない」「じゃあ織姫は」あの子も戦っているんだろう?「能力は向いている。だが性格は向いていないね」「そんな……」「僕には君の気持ちがわかる。人に戦わせて、自分は安全なところで護られているなんて、性にあわないし納得いかないんだろう。でも、これは「頑張れば誰でも習得できる」ものじゃないんだ」「……」「じゃあ、また明日、学校で」石田の話は、あたしにはちっともありがたくなかった。でも、それなりの説得力はあった。「それでも、あたしはあんたらの力になりたいんだ」あたしの声は、虚しくアスファルトに滲んで消えた。
2006年08月23日
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「へえ隊長さんってのはそんなに凄いんすか」触らぬ神に祟りなし。とりあえず居候二人の話に相槌を打ってみる啓吾。「おうよ、なんたって「剣八」だからな!」ますますテンションの上がる一角。「剣八というのは、僕たちの世界では最強の人を表すんだよ」注釈をいれる弓親。「ああありますよね最高の称号って!「高尾」とか!」「なんだそれ」江戸時代からの風習です。「当代一の花魁にだけ許される名前っすよ!今でも、この名前を名乗っているおねーさんに外れはないそうです!俺も何時かお相手して貰いたーい!」意外と物を知っている啓吾、しかし「「隊長と水商売の女を一緒にするなボケェ!」」……あまり役に立つトリビアではなかったようである。
2006年08月22日
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(「主役はまだ現れない」の続き)「イチゴじゃない……」井上織姫は呆然と呟いた。「い、井上さん、栗は嫌いだった?」「好きだけど、チャド君が、帰ったら石田君がイチゴのケーキ作ってくれるって言ってたから。すっごく楽しみにしてたのイチゴのケーキ」「……」イチゴはまだ高いから、とはちょっと言いづらい。イチゴイチゴと連呼されて、軽くむかついている黒崎もこの際どうでもいい。「じゃあこれは僕の誕生日の分ということにして、今度井上さんの誕生日分にイチゴのケーキを作るよ」「え、本当?(あたしの誕生日にはチョコレートケーキ焼いてもらったんだけど、まあいいや得しちゃった)だったらあたし、これ食べたらイチゴ買ってくるから!ナゴシレンがいいな!」「……ナポレオンのことかな井上さん」「待って織姫、あたし一度にそんなに食べられない……」「俺もちょっと……パス」「ム」「あ、じゃああたし持ってかえって夜ご飯にする」「……ワンホール丸ごと?」「黒崎、興味があるなら(イチゴが安くなってから)また作ってあげるよ」「……いや、そうじゃなくて……(汗)」
2006年08月22日
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「すまん、石田」「何が?」「誕生日、何も用意できなかった」「……君が僕の誕生日を知っているということが驚きだよ……」「井上から聞いた」「ああ……」荒れ果てた光景。一陣の風すら吹かない。まるで時間を感じさせない世界。「彼女の誕生日、何かしたかな。忘れたよ、もう」「……」「あれから随分時間が経ったような気がするけど、そうでもなかったんだ」「……ム」どうしていたかは聞かない。何故此処にいるのかは聞かない。「戻ったら……そうだね、ケーキを焼こうか。イチゴたっぷりのやつ」「……俺が作ろう」「いいけど、僕はこうみえても舌が訓練されているよ?」「……やめておく」「あっははは」「……季節柄栗か芋のほうがいいと思う」石田は笑いを納め舌打ちした。「君に食材を指摘されるとは思わなかった」「すまん」そして時間は過ぎていく。
2006年08月22日
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「石田、おぬし何故一護と親しくしようとしなかったのだ?」「いきなり何のはなしだい朽木さん」「いや、ふと思ったのだが。おぬしが一護に死神への恨み言を吹き込んでいたら、あやつは死神代行を引き受けることをもっと渋ったかもしれん」「ああ、それはいいね。……黒崎に声をかけなかった理由?「君、霊が見えているだろう」とか言って、周囲にひかれるのが嫌だったからだよ」「別に他の話題でも良かったと思うが……」「僕は黒崎の霊力にしか用は無かったよ」この正直者。「それに黒崎は、虚や滅却師の話を聞いたら、何時か手伝わせろって言い出す」「いいではないか」「良くないよ。滅却師は世襲じゃない。滅却師の仕事を手伝ったものは死神に滅却師として認識される。その末路は……今の君なら知っているだろう?」「……」「だから僕は一人でいたんだ」「……わたしはおぬしの味方だぞ?」「……うん、そうだね」「一護もだ」「……ああいう不良と付き合うと内申書に響きそうだよね」「…………お主は本当に正直だな」
2006年08月20日
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「石田、ちょっと頼みがあるのだが……服を何着かデザインして貰えないか?」「謹んでお受けするよ朽木さん!ワンピース?ツーピース?今度はお嬢様らしくフリルとレースをつけようか」「いや、私の服ではないのだ」「え?(誰だろう、黒崎、それとも阿散井君?)」「実は、兄のデザインした「わかめ大使」が正式にキャラクターグッズとして展開されることになってな。着せ替え人形用の服を考えて欲しいと依頼されたのだが、兄も私も専門外なのだ」「うん、被服関係なら任せてくれたまえ!で、「わかめ大使」のデザインは?」「……このような感じだ(さらさら)」「……(絶句)、ごめん朽木さん、できれば実物が見たいな僕……」「やはり私の絵ではあの素晴らしさを伝えきれんか……わかった、今度持ってこよう」そして実物を前に固まる石田。
2006年08月11日
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「黒崎誕生日おめでとう」石田は珍しく、満面の笑みで言った。「はいこれプレゼント。「お、おう」女の子のように綺麗なラッピング。「何か意外だな。お前が俺の誕生日を祝ってくれるなんて」「そうかい?素直に嬉しいと思っているよ、君が無事に17歳になることが出来て」ふっと目を伏せ、「僕は、17歳になれるかどうかまだ判らない」「……考えたこともなかったな」16歳になることも、17歳になることも、俺は当然の権利としか思っていなかった。子供の頃から戦ってきた石田には、年を重ねることに、俺よりずっと強い思い入れがあるのかもしれない。「で、これなんだ?」「参考書」「はあ?」「君随分成績下がったよ」それがオチかよ、と言ったら、来年も同級生でいられるようにね、と笑われた。(7月15日 前日記より)
2006年08月08日
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「じゃあ、君は蟹座なのか」今日が黒崎一護の誕生日だと聞いて、石田雨竜はふうん、と相槌をうった。「水の星座だね。母性の星。セーラームーンの主人公と一緒だ」「関係ねえだろ」「一番不倫に走りやすい星座らしいよ」「ひでえ偏見だな」「水の星座は感情を司る。火の星座は霊性、地の星座は物質、風の星座は知性を現す」「……だから突っ走るんだって言いたいのか」「偏見だね」にやりと笑う。「僕は蠍座。……水の星座だよ」(7月14日 前日記より)
2006年08月08日
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少年がそこに連れてこられたのは、そう、秋のことだった。何年前の秋かはもう覚えていない。攫われてきたのだ。いきなり黒装束の男たちに囲まれて、意識が遠くなって……気がついたら、研究所のようなところにいた。身代金を払ってくれる人はいないよと言うと、そんなことは知っているよと笑われ、その笑顔に心底ぞっとする。縛られたり、暴力をふるわれることはなかったが、別室の阿鼻叫喚には目も耳も塞ぎたくなり、世話役は無口な少女で、彼女に迷惑がかかると思うと逃げるに逃げられなかった。第一どうやって逃げればいいのかわからない。建物はぐねぐねといりくみ、周囲の景色に見覚えはなく、そこにいる人は皆自分が此処にいる理由をしっているようで、少し動けばすかさず扉を閉ざす。そこにいたのはほんの数日のことだったが、平凡な少年の神経をすり減らすには十分だった。体を(件の少女に)徹底的に洗われ、奇妙な白い服を着せられて、まるで人身御供のようだと考える。「おとなしくしていてください。そうすれば、誰も酷いことはしません」少女は何度も繰り返し、少年はそのたびに頷いた。何かしようにも、その隙がないのだ。「君も攫われてきたのか?」「いいえ、私はここで生まれました」「ここはどこなの?」「……」黙って首を振る、その表情が余りにも悲しそうで、それ以上は聞けなかった。それから虫籠のような部屋に入れられた。虫籠でなければ、ドールハウス、だろうか。施設とは比べ物にならない立派な家具。手の込んだ食事。身の回りの世話をしてくれる人々。トイレもお風呂もちゃんと着いている。ただ、徹底的にないものが三つ。自由がない。プライバシーがない。そして、話し掛けてくれる人がいない。硝子張りの部屋で、お仕着せの白服のまま、布団に潜り込む。部屋の外には誰もいないが、何処かで自分を見ているのだろうと思うと、恐怖に身が竦んだ。どうして、と思う。産まれてすぐに係累を亡くし、体が弱いのと人見知りのため養子縁組の話もなく育った子供をこんなところに閉じ込めて、一体何が面白いのだろうか。「石田」名前を呼ばれたのは、何年ぶりだろうか。少年は、のろのろと布団から這い出した。その姿は、ここに入れられてから、殆ど変化がない。ただ、目に光がない。安楽な暮らしをしているはずなのに、すっかりやせ細っている。着たきりの白服には、何故か染みも皺もない。出来の悪い人形のような形をしていた。それなりに整ってはいるが、魂を感じさせない形をしていた。彼を呼んだのは、黒髪の女だった。年がわからない。童女のような顔に、老女のような表情を浮かべている。「すまない、ここから出してやることは出来ないんだ」彼女は言った。「私にできるだけのことはしてやる。此処にいてくれ」「……僕が此処にいることで、誰が得をするのかい?」「……私の、息子だ」「僕は会ったことがある?」「いや、ない。お主は滅却師だ。直に会わせるわけには行かない」くいんしー?なんのことだろう。だが、これではっきりした。……自分はやっぱり、人身御供だったのだ。それから何年経っただろうか。鏡に映る自分の顔は、まだ子供のままに見える。彼女の子供は、今でも自分を必要としているんだろうか。何処からか自分を見て、……何を考えているんだろう。足はすっかり萎えてしまった。来年には歩けなくなるかもしれない。何処まで壊れれば価値がなくなるのだろうと、ふと思った。(4月16日 前日記より)
2006年08月07日
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親父は朝から神妙だった。妹二人を家から追い出して、ダイニングの椅子に「掛けろ」なんて言い出すから何事かと思った。「……実はな」「お、おう」「お前は、俺の本当の子供じゃないんだ」「……」少し考えて、結局延髄切りが決まった。「てめえそういうネタはエイプリルフールにやれ!」「嘘じゃない」ち、まだ白を切りやがる。「こいつがお前の本当の父親だ」そういって取り出したのは、いいかんじに色あせた写真。少し若いこいつとお袋、なんか仏頂面の男。勿論俺には欠片も似てねえ。……つうか、どっかで見たような顔で、正直ちょっとぞっとした。「み、認めたくねえけど俺はてめえにそっくりじゃねえか!」「そりゃそうだ。甥が伯父に似ていてなにがおかしい」「へ?」「俺と真咲は本当は腹違いの兄妹でな。俺が仕事でこっちにきたときに、部下って名目で連れてきたんだよ。それでまあ、お前たちが出来ちまったってわけだ」……なんだそれ。えらく込み入った冗談だな。「実はお前も双子でな。ばれたら餓鬼もただじゃすまないってんで、霊力の高いお前は俺と真咲の子って届け出して、もう一人は父親に引き取らせた」「じゃあ遊子と夏梨は」「あいつの子なんだろうな。聞かなかったけど」「……」俺は黙って写真の中の男を見た。名前なんか知りたくなかった。俺はなぜ、親父は何時までたってもオチをつけないんだろう、どうして今日は4月1日じゃないんだろうと、それだけを考えていた。(4月19日 前日記より)
2006年08月06日
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二年になって石田は変わった。そりゃもう、中に改造魂魄が入っているとしか思えないほど。一年のときは余り目立たなかった石田だが、現在、その名前を知らないものは学園内に一人もいないだろう。悪名だ。男女問わず付き合って、きっかり4週間で捨てる、という……。残念ながら、彼に近ければ近いほど、この噂を否定できないのだ。一番初めは三年の女生徒だった。笑顔を振り撒き、お弁当を作り、一緒に勉強して、アパートに連れ込んでいけない遊びに浸り……ある日突然「別れたよ」と言うものだから、周囲は皆ふられたものと思った。どこか嬉しそうな顔で昼食を奢った啓吾は、「やっぱり女の人は面倒だね」とのコメントに爆笑したが、それに続く「だから今度は男子と付き合うことにした」に思いっきりコーヒー牛乳を吹いた。前々から秋波を送られていたという、その一年生の顔には一護も見覚えがあった。一目も憚らずいちゃついて、それでも最後にはけろりと縁切りした。それから一年弱、ほぼ間をおかず誰かと不純な交際を続けている。いや、たとえ健全なお付き合いだとしても、この節操なさは流石に問題だろう。付き合っている間は、尽くして尽くして、予定期間を過ぎるとあっさり他人に戻る。そして次の日には新しい恋人が出来ているという寸法だが、割り切れるのは石田のほうだけで、相手の多くは人前でキレる、泣きつく、土下座する、逆に脅しにかかる。途中から男とばかり付き合うようになったのは、いざとなれば一護が殴り飛ばしてくれるのに味を締めたためらしい。一体どういう心理なのか、石田と付き合うのは一種のステータスと化し、織姫や啓吾などは始終取り持ちを頼まれている。「自分は飽きさせないと思うんだよ、皆」することは似たり寄ったりだけどね、とマフラーを編みながら石田は平然と言ってのけた。「あげるよ、凝ったものじゃないけど。君に似合いそうな色だ」「……サンキュ」投げつけられたマフラーは、手慰みに作られたとは思えないできだった。一月だけの恋人に、料理は作っても、形に残るものは与えない。手芸部部長なんだから、手編みとかリクエストされるだろうと聞いたとき、「捨てられるとわかっているものを作るなんて御免だよ」と答えられたことを思い出した。「昔はこれ一本編むのに凄く時間がかかったんだけどね、慣れるとすぐに編めちゃうんだよね」「……暇人だな、お前」「うん」勉強も家事も、好きでもない相手に笑顔を向けることも、少しも苦ではない。霊を視ることもできなくなった僕は、暇で暇で仕方ないんだと、感情の篭らない声で石田は呟いた。(6月24日 前日記より)
2006年08月06日
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「ごめんね、あたし「雨竜君の彼女です」ってお父さんに嘘ついちゃった」井上さんはへへ、と笑い僕はスプーンを取り落とした。「父には知らせないでください」と言った僕を黒崎の父親は一喝し、僕は結局黒崎医院から実家に強制連行された。もう二度と皆に会うこともないだろうと思ったら、翌日井上さんだけとはいえ家にあげられて、一瞬自分の耳を疑った。そして一週間もたたないのに、明日から彼女もこの家にすむのだと聞かされてた。「ただのクラスメートがリハビリまでついていくのは変だし、虚退治の仲間ですっていったら怒られそうでしょ?で、色々お話が弾みまして、あたしも一人暮らしだっていったら、良かったらうちに来なさいって。僕は多分開いた口が塞がらないって顔をしていたんだろう。井上さんは慌てたように、「石田君に相談しなかったのは悪かったけど、なんだかとんとん拍子に話が進んじゃって、あたしもそのほうが楽だし、生活費入れなくていいっていうし」「……君がそこまでする必要はないよ?学校にも行った方がいい」「授業にはね、じつはとっくについていけなくなってるの。随分休んじゃったから。もう一度一年生するつもり」「有沢さんや黒崎と違う学年になるよ」「黒崎君も、出席日数たりないんじゃないかなあ」「……」僕たちは皆成績は上位だった。しかし僕はもう学校をやめさせられているし、井上さんたちは進級が危ない。これが「日常」を捨てた代償だろうか。でも、本当に君がそんなに僕を気にかける必要なんてないんだ。たまたまあの時、僕が君の一番傍にいたってだけなんだから。黒崎だって茶渡君だって、あの位置にいたら君を庇って、視界を塗りつぶされていただろう。元々弱視で、実家に経済的余裕がある僕がこうなったのは、不幸中の幸いだった。「早く訂正しないと、僕と結婚させられるかも知れないよ?」「あはは、そうかもしれないね」僕は将来を悲観していない。彼女は将来など考えていない。僕は井上さんが好きで、井上さんは黒崎が好きだ。彼女が僕と結婚してくれるとしても、それは愛情じゃなくて同情にすぎない。僕は人に同情されるなんて真っ平だ。だから彼女は僕をしあわせにできない。僕がしあわせになるとすれば、それは。「……石田君、おかわりは?」「うん、貰おうかな」……それは、全てを諦めたときだろう。(6月27日 前日記より)
2006年08月05日
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