on the other side of the world

2005.07.15
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カテゴリ: 埃だらけの洋館
幽霊屋敷の洋館1 、3

生暖かい風が吹くとか、いやーな悪寒がして理由もなくガクガク恐くなるとか、一ヶ所だけ空間が凍り付くように冷たいとか、憎悪を込めた呪声が聞こえるとか、そういうのは(ココで読んで下さっている方に申し訳ない気がするが)一切ない。

ドアノブが「カチャッ」と目の前で回って、ドアが「キー」と全開して、ちょっと間をおいて、「バタンッ」と閉まるのをしばらく二人で並んでみていたが、二人ともワクワクと嬉し楽しい気分だった。

「アタクシ達、 お化け屋敷買っちゃった のかなぁ。」

「まっさかぁ。って言ってもこれってまずいかもしれない。」

「アタクシ達って寝ぼけてる?こういうのって寝付くときに金縛りにあったとか、飛び起きたら首が浮かんでた、とか寝ぼけてる人にない?」

「つねってあげようか?」



「イテテッ。こんにゃろめ。」

そのまま、ドアをそっとしておき、顔を洗って歯を磨いて、一階に下りて紅茶をすすりながら荷物の整理にかかった。半信半疑のまま箱を開けたりステレオを組み立てたりしながら「どうしよう」と相談しあった。

時々、「お化け対策」に真剣に取り組んでいることに、二人して噴き出して笑い転げてしまったりした。

話し合う時点でもう一つおかしい事が判明した。アタクシは眼がパッチリ覚め、あーだこーだと考えている内にドアが「うるさい」と思い、最初はベッド上から体を起こしてその屋根裏部屋に続くドアが開いたり閉まっているのを眼に止めた。アタクシ達の寝室のドアもすでに開いていたことになる。それは、毎晩二回は起きて用を足すムーミンが開けて寝たものと思っていたが、彼はその晩熟睡して起きなかった、と言う。

まるでだれかが「みて、みて」といっている様だ。他のドアは全部閉まったままだった。

通常の出勤時間を過ぎると、ムーミンはアタクシ達に洋館を売った不動産屋に電話をかけた。他に色々取り引きを終えるための打ち合わせだったが、最後に何気なく、「ああ、前にここに住んでた人、不思議な現象がある、なんていってませんでしたか?ちょっと不思議なことがあるんですけど」と聞いてみた。

「え?...『ははぁ、やっぱり出ましたか』ってちょっと無責任ですねえぇ、ハッハッハ」

笑いながらしばらく話していた。アタクシは、「 ぬあぁにぃぃ 、『やっぱり出ましたか』だとぉ、あんなに何回も顔を合わせたのに一言も言わなかったじゃあないかぁぁ、もっと真剣にやれいぃ」と歌舞伎顔になっていた。

ムーミンはアタクシ達の体験の詳細は伏せて、「見た人が?ハッハッハ、どんなのが出るんです?」と聞いていた。

随分の数の目撃者がいるそうではないか。アタクシ達に売り譲った人達は(四五回会ったのだが)寝室を数名の留学生に貸したり、屋根裏部屋をちょっと豪華に改造してベッド・アンド・ブレクファストとして客を入れていたり、近くの病院の「付近で有料で泊まれる宿リスト」に登録して病院に通うためにこの町に来た患者やその親戚を泊めていたり、いつもギュウギュウ詰めの状態で住んでいた。その中で「見た人」というのは沢山いる、と聞いてちょっと悪い予感がしたが、二箇所に限られている、とも聞いた。



あっそう。

アタクシが今コンピュータに向かっている書斎から、座ったまま背を反り返すと見える、「屋根裏部屋に続く階段のドア」。

これを聞いた後、ムーミンとアタクシはまた(結構気軽に... アタクシ達こそもっと真剣にやれいぃ、なのかもしれない)荷物を整理しながら相談した。ムーミンが手を止めた。

「くだらないかもしれないけど、話をしてみない?」

「え?」



二階に上がってみると、ドアは開いたまま動いていなかった。開いたドアを通して、階段に向かって、アタクシ達は手を繋いで並んだ。「ちょっとばかばかしいかも」と思いながら、胸がドキドキした。

ムーミンがいつもの穏やかな口調で話し出した。何処をみて話せばいいのか分からない。不合理な事をしているのでちょっと恥ずかしい。

そのとたん、急に、アタクシの全身の鳥肌がズババババッと立った。髪の毛もザワザワ立つ。びっくりして、眼を丸くしてムーミンの顔をみた。

ゆったりと話し続けているが、顔が硬直している。繋いだ手が急に汗べっとりになっている。よくみると腕に鳥肌が立っている。彼も、急に異常なものを感じているようだ。でもやはり「恐い」のではない。「ワクワク」が主だ。

アタクシの顔をみて、「大丈夫?もうすぐ終わるから」と言って、言葉を続けた。最後に、「そして僕達になにかしてさしあげられることがあって、それがあんまり恐いことでさえなければ、どうにか教えて下されば可能な限り出来ることはします」と言ったとたんアタクシの鳥肌がぴたっと嘘のようにおさまった。

それから数年たっているが、いったい何だったのか分からない。「して欲しい事」も伝わってこない。だが、それ以来ずっと静かだ、とも言えない。あれから二三回、その現象はまだ起きている。友達が泊まりに来ている時に限るのも不思議だが、毎回ではないので訳が分からない。



- - -

誰が何を見たか??

幽霊目撃者1






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Last updated  2005.09.05 06:50:59 コメント(2) | コメントを書く
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