Accel

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May 4, 2010
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 少年の踏み込んだ先は、赤の色、それ以外の表現ができない場所であった。

 赤以外が、そこにはなかった。
 赤に囲まれ、目はくらみ、息は詰まり、頭がおかしくなりそうだった。

 赤い机の前に座るは、赤い衣装の男二人。
 マンサガと、”赤”、メルサである・・・


 くくく
 ほほほ


 彼らは揃って、小さく笑っていた。


 少年ニルロゼは、唇を軽く噛んで、剣の柄を握った。


 お前たちがそうしてのうのうとゆっくり構えているって事は、
 俺等のしている事、筒抜けというところか」

 さらり、少年は剣を抜くと、その先をマンサガに向けた。


 ぎい

 その時・・・
 閉めたはずの、赤い扉が重い音を開けた。
「!?」
 流石のニルロゼも驚き、後ろへと振り向いた。
 少年が目にしたのは・・・
 大人のハーギーだった。


「俺の出番に間に合ったなあ」
 大人は、ニヤリと言った。
 その甲冑が、血だらに染まっている。
 それは、返り血だけではないようである・・・。

 赤茶色の瞳を持つ男・・・



「ニルロゼ。
 役者交代だ」
 メンはそう言うと、すっと、前に出た。
 ニルロゼは首を振り、思わず剣を振りかざしてメンの出足を遮ろうとする。
「だ、駄目だ!
 ここは俺が!?」
 だが、メンは、有無を言わさなかった。
 よもやすれば、剣術だけを取ると、ニルロゼが腕が上かもしれなかった。
 しかしそれでも、ここは大人の貫禄と、圧倒的な熟練の厚みで、メンは少年に威圧感を与えたのである。

「ふん。
 こんなに格好いい場面をやるくらい、俺は心が広くないんでねえ・・・」


 すると、開いたままの扉の向こうから・・・
 もう一人、顔を出した男がいる。
「ニルロゼ。
 メルサはメンに任せろ。
 こっちへ来い」
 ハーギーの男が少年に手招きをしていた。
 金髪の持ち主のカンである。
 カンは、メンと共に、屋上からここへと来ていたのだろう。


「早く行けえ!!!!」
 メンが叫んだ!

「駄目だ!
 俺は・・・」
 ニルロゼは、剣を仕舞うのも忘れてメンににじり寄り、食い下がった。
「お、俺がここは!
 あんたは、あんたのような人は、生きて外に出て欲しいんだ!
 外に出た皆を守って欲しいのに、どうして判らないんだ!!!」

「お前がここをヤルってかよ・・・ふふ?」
 メンがゆっくり笑うと、少年の方に振り返った。
「このハーギー、ぶっこわしたいんだったら、お前が外に出るんだ、
 ニルロゼ。
 お前だって本当は判っているだろ?
 こいつら、斬っても死なねえんだぜ」
 メンは再び振りかぶると、赤の方へと向き直った。


「ニルロゼ。
 ハーギーをぶっこわしたいのは、大事な人を守りたいからだろ?
 だったら生きろ・・・。
 早く!
 外に出ろ!!!!!!」

 少年・・・
 ニルロゼは・・・
 幅広の背を向けるメンの姿をただ見ることしかできなかった。
 彼の手は震えていた。


 赤い扉の向こうから・・・
 カンがゆっくり入って来て、ニルロゼの肩を優しく引き寄せた。
「さあ。
 ここはメンで大丈夫だ・・・行くぞ」
 カンがぐいっと外の方へと少年を連れて行こうとする。

「い・・・嫌だ・・・
 俺は・・・もう・・・
 もう、”ああいう思い”をしたくない!
 駄目だ」
 手を振り解こうとする少年に、カンが優しく言った。

「大丈夫だ・・・
 ”ああいう思い”なら、もうとっくに俺等もしている」

 それを聞いて、少年は、メンが言っていた言葉を思い出し、ハッとした。

”前にもハーギーを壊そうとして・・
 生き残ったのは・・・・”


「カン・・・」
 ニルロゼが茫然と呟くと、カンは、青い瞳で頷いた。
 大人と少年は、赤い部屋を出た。
 扉の前を守っていたハーギーは、一人残らず斬り倒されていた。
 流石、このカンとメンの二人の剣技を示す痕跡であった。


 扉をすっかりとは閉めず、カンが言った。
「お前も、重々判っているだろう。
 あのメルサは、尋常な者ではない。
 斬っても死なない。
 その理由は、俺もわからない・・・
 だから、多分、このハーギー、お前達が出ても、また機能し始めるだろう」

 そこで一旦唇を閉じ、ふう、とため息をついて、またカンはじっくりと言った。
「ニルロゼ。
 お前は、外に出ろ。
 外に出て、残った者を守るんだ。
 そして、メルサの力の元を・・・
 その元を見つけろ!」

 その言葉が終わるやいなや・・
 はっ!とカンの顔色がいきなり変わった。
「メン!?」
 そう言うと、金髪の青年は飛びつくように扉に手をかけた!

「メン!」
 カンは叫びながら、扉を開ける!
 扉の向こうは、相変わらず赤かった。
 全てが、赤かった。
 赤い床に・・・
 真っ赤に染まったメンが・・・
 倒れていた。



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Last updated  May 4, 2010 08:31:46 PM
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月夜見猫 @ 愛するケーナさまあはあと! おはようございます☆ >いつも本当にあり…
月夜見猫 @ オスン6757さん おはようございます。 >いつもありがと…
月夜見猫 @ もぷしーさん★ おはようございます。 >今まだうろうろと…
風とケーナ @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) 月夜見猫さま、こんばんは♪ いつも本当に…
オスン6757 @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) おはようございます。 いつもありがとう…

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