Accel

Accel

June 7, 2010
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
 とうとう、今日は皆が散り散りとなる日であった。
 その朝・・・。
 朝とといっても、まだ日が昇っていなかった。
 薄暗い中で、いかつい体を堂々と揺らしたブナンが、数名の大人を集めた。

 ラサ。
 ジューロ。
 エグゾ。
 ロジー。
 カン。

 ビュッツ。

 彼らは、それぞれ、4つの班に別れ、これから班の纏めをしていくこととなっていた。


 ブナンは、近くに長れている大きな川辺まで、彼らを来させた。
 そして、先に川辺に胡坐をかくと、どっこらせという感じで酒瓶を両脇にドスンと置いたのである。
「おお、寒い中、悪い悪い。
 俺らは、これから、別れ別れになる。
 まあ、こうやってしんみりお別れするのも最後。
 酒を用意しておいた。
 まあ座れ」
 ブナンは右脇に置いた瓶を取ると、直接口を付けて酒を飲み始めた。
 エグゾは、はやくよこせといわんばかりの目線を送りながら腰を下ろした。



 ブナンは、すっかり髪をそりあげた頭をなで、へへっと言った。
「いやあ、レンハー。
 今回の功績は、一番お前があげた。
 よく生きていてくれた。俺は嬉しいぜ」
 ブナンはまず、レンハーに酒瓶を手渡した。


「そうだそうだ」
 皆、口を揃えてにこやかに言った。


「俺とレンハーは、身重の女の班に行く。
 他の仲間は、お前と別れ別れだ。
 レンハー、最後に、仲間になにか・・・、言っておきたいことがあるか?」
 ブナンは、深緑の瞳をレンハーに向けた。
 レンハーは、もじもじしている。


 すると、ジューロが脇から言った。
「数日は、ハーギーに居たんだろう?
 どうだった?」
 ハーギーの言葉を聞いて、たちまち一同は、ふっと顔が険しくなった。
 レンハーは、下を向いて静かに応えた。
「うむ。
 ハーギーは、燃えている部分と、燃えていない部分があった。
 残りのハーギーには数名遭ったから、追われたら怖くて、なかなか出られなかったんだ」

「燃えていない部分・・・」
 エグゾがつぶやく。


「まだ、ハーギーには、何人か居そうか」
「まるで見当がつかない・・・」
 ラサが問うたが、レンハーの応えは短かった。

「抜け出してから、誰かに追われたか?」
「いいや・・・」

 他にも質問をした物がいたが、ぽつり、ぽつりとしたやりとりだった。

 レンハーの隣に座ったロジーが、酒を取り上げた。
「どっちにしろ、まだ、ハーギーは、”生きて”いるようだな・・・」


 ブナンは、すると、酒を回せ、と手で合図した。
「ああ、ところでだ。
 実はこうやって集まって貰ったのは他にも理由がある。
 あのカンがなあ。
 ニルロゼの剣を貰ったそうだ」
「えっ!?」
 皆が、驚きの目を向けた。
 カンが、にこりと笑う。

 ブナンは酒瓶を手に収めると、残りを一気に飲み干し、それを地に置いた。
「俺もなあ、あの剣に、とても興味があるのでなあ。
 どうだ、みんな?
 あいつだけ貰うなんてずるいと思わないか?」

 ラサが、ムッとしながら答えた。
「おお、あの剣は、たしか東の鍛冶の剣だったな?
 そりゃ、すげえ」
 そうだ、と他の男も言った。

 ブナンは、立ち上がると、にっこりと言った。
「とりあえず、見させてくれよ。
 いやあ、触ってみたいもんだ」



 金髪の青年カンは、ひょい、と右手を上に上げた。
 すると、剣が・・・ブナンの方に、放り投げられる。
 恐ろしいカンのその腕の力と、技量を示しており、音もなく正確にブナンの腕に剣は収まった。

「ほう」
 ブナンは、剣を抜いた。
「これはすばらしい」

「ブナン、俺にも!」
「まあまあ、エグゾ、慌てるな。
 右廻りから順に回そう」
 ブナンは、ラサに剣を渡した。

「へえーー。
 すごいもんだ。
 思ったより、軽い」
 ラサは、立ち上がり、何度かその剣を振った。
 そして、隣に渡す。

 美しい剣は、ジューロ、エグゾ、ロジーの順を回った。
 そして、カンの元に・・・
「ほい」
 カンは、剣を抜かず、レンハーに渡した。
 レンハーも、剣を抜いて、振ってみた。
 そして、最後のビュッツに渡した。


 渡り終えると、ブナンが言った。
「カンは、まだ若いからなあ。
 俺に、頼んできたのだ。
 この剣を、ぜひもっと”使える男”に渡したい、と」
「なんだってっ!?」
 男達が、色めき立ち、瞳に虹を浮かべて湧きあがっ!

「す、すげえ!」
「本当か!?カン!?」
 皆の目線を受け、黙ってカンは頷いた。


 ブナンは、逞しい腕で剣を掲げた。
「そういう訳だ。
 俺こそ、という男はあるか」
 と、言われると、男達は、ただ、顔を見合わせるだけである。

 ブナンは、笑って、川を指差した。
「じゃあ、あの川に投げてしまうぞ」
「な、なにーーー!?」
 男達が、再度騒ぐ。

「じゃ、じゃあ俺が」
 エグゾが立ち上がる。
「ほう」
 ブナンは、顎で川を示した。
「俺から取れたらやろう」

 ブナンは、素早く川に入った。
「こっちへ来な」
「望むところ!」
 二人は、鞘のままの剣で戦い始めたが、あっという間に勝敗がついた。


「あちゃー」
 ビュッツが腹を抱えて笑った。
「ブナン相手に勝てる奴は、いるのかよ・・・ハハハ」
 そういいながらも、彼も川に入っていく。
 ブナンと闘うなど、これからもうないのだから。


 とうとう、闘っていないのは、カンとレンハーだけになった。
「レンハー、行けよ」
 ブナンに倒され、水に濡れたロジーが笑いながら言った。
 もう結果はわかっている。
 ブナンのやっていることは、「その結果ではない」ことが、判明しているのだ。

 ブナンは、こうやって互いに剣を合わせ、呼吸を交わし。
 最後の別れをしようとしているのだ。



「ブナンとやりあうなんて、もうないぜ」
 ジューロも笑って、レンハーに言った。




**************
参加ランキングです

にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ 人気ブログランキングへ

**************
●猫勝手にご復活キャンペーン実施中!
参加されたい方はページをお読みのうえ、ご参加意思をコメントか掲示板、またはメールなどでお寄せ下さい☆


●フォトアルバム整理のため、フリーページ大改造しました!
 向かって右側のFreepage Listに多少イラストを載せましたのでお暇な時にぜひ~(^^
Accelバナー を、第5章までUPしました! 海外の音色 さんの音楽をお楽しみ下されっ★

最近のイラストは pixiv にのっけてます。よろしければ。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  June 7, 2010 01:26:49 PM
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Profile

月夜見猫

月夜見猫

Comments

月夜見猫 @ 愛するケーナさまあはあと! おはようございます☆ >いつも本当にあり…
月夜見猫 @ オスン6757さん おはようございます。 >いつもありがと…
月夜見猫 @ もぷしーさん★ おはようございます。 >今まだうろうろと…
風とケーナ @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) 月夜見猫さま、こんばんは♪ いつも本当に…
オスン6757 @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) おはようございます。 いつもありがとう…

Calendar

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: