2012年11月10日
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- 映画コラム -
荒野 ・・・
輝かしい 『バッタモン』 の世界





西部劇で 『荒野の』 とタイトルされるのは 当然日本独自のネーミングです

ウエスタンの直訳の 『西部』 では無く 『荒野』 とした所に
日本人が考え 思い描く アメリカ開拓者魂 が形になった様な印象を受けます

『七人の侍』のリメイク作である 『荒野の七人』は
企画を考えた ユル・ブリンナー が 『七人の侍』に感銘を受けて
西部劇版にリメイクする許可を経て映画化されたものでしたが

脚本に明確な版権がまだ無かった当時の邦画界では
脚本権を僅か 250ドルで売り渡した東宝の態度に

ユル・ブリンナーは 『太っ腹』 と感激したとの話もありますが
アメリカには 『寛大』 に映ったのか 『愚か』 に取ったのか 疑問を残す所です

映画化は平坦なものではなく ハリウッドシステム上の対立などから
紆余曲折を経て 現在の監督:主演になった経緯がありました

日本の お役所的態度が無ければ、ハリウッドのアメリカ的対立が無ければ
今日の形での 『荒野の七人』の映画化は無かった と考えると

国家間のスタイルが 最も良く結果に反映された 『好例』 と
言えると思います

日本語のタイトルは 『七人のガンマン』でも良さそうなものでしたが
『荒野の』が付けられた経緯のその歴史は古く

私が知っているだけでも
ジョン・フォード監督の1946年の名作 『My Darling Clementine』の邦題が
『荒野の決闘』と 半世紀以上もの歴史があるタイトルで

『の』 の歴史の中でも、非常に由緒正しきネーミングであると思われます


西部劇全般のことを 一纏めに 『荒野の』 として
日本の配給会社がタイトルからジャンルを連想出来るようにした
映画ファン向けの 古くからの 配慮 の様にも思われます

今回は『荒野の』に纏わる、西部劇のバッタモン(偽物)を
ご紹介したいと思います

あなたは幾つご存知でしょうか?


△▼△▼△



荒野の用心棒
Per un pugno di dollari/A Fistful of Dollars
1964年9月 イタリア
監督:セルジオ・レオーネ 音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:クリント・イーストウッド、マリアンネ・コッホ、ジャン・マリア・ヴォロンテ


『荒野の七人』 は黒澤明監督作の 『七人の侍』 のリメイク作でしたが
こちらはマカロニウエスタンの大傑作でありながら

黒澤作品の 『用心棒』 を 無許可でリメイクした
正真正銘の 『バッタもん』 映画です

『用心棒』を観たセルジオ・レオーネが感銘を受けて
何処かで聞いた様な話ですが・・・

脚本家達を呼んで まずセリフを書き写したと言いますから
もうこの時点で確信犯的な パクリ が始まっていたわけです

感激した割には黒澤サイドの許可を得無かったのは
極東の僻地の映画界だと舐め切っていたのではと思えて来る話ですが

当然、この後 東宝 に訴えられた本作は 敗訴 し 原作の一文字を入れさせられる
顛末となりました


△▼△▼△



荒野の1ドル銀貨
UN DOLLARO BUCCATO/ONE SILVER DOLLAR
1965年 イタリア/フランス
監督:カルヴィン・ジャクソン・パジェット
出演:ジュリアーノ・ジェンマ (モンゴメリー・ウッド)、イヴリン・スチュワート


マカロニウエスタンの大スター ジュリアーノ・ジェンマ の日本での出世作です
銃で撃たれ 胸に入っていたコインが盾になって助かる・・・というベタな展開は

この映画が元ネタになっております
本作はこのネタ一発で乗り切ろうとする力技で作られた 映画ファン泣かせの一作です


ジュリアーノ・ジェンマの名前がなぜか モンゴメリー・ウッドになってますが
これはイタリア映画がアメリカで売り出す為の 『芸名』 です

イタリア映画ではヒットしないだろうと言う事で
アメリカ映画を装ってこの様な策を取った アメリカ対策でした

アメリカではイタリア製西部劇を 『スパゲティーウエスタン』 と呼んでおり
日本では映画解説者の 淀川長治氏が
スパゲティーじゃ弱いからマカロニウエスタンと呼ぼう という事になりました


『荒野の用心棒』 の大ヒットを受けて斜陽気味だったイタリア映画界が
こぞってマカロニウエスタンを制作し始め、

当初 ハリウッドから調達していた主演俳優をイタリア国内で立てるようになり
その中から ジュリアーノ・ジェンマや フランコ・ネロなどが
スターになって行った経緯があります

映画界の危機的状況を便乗商法で回避した逞しさは
今のヨーロッパにこそ必要な力技の様に感じるのは 私だけでしょうか・・・


△▼△▼△



荒野のドラゴン
SHANGHAI JOE/IL MIO NOME E SHANGHAI JOE
1973年 イタリア
監督:マリオ・カイアーノ
出演:チェン・リー、クラウス・キンスキー、ミクリヤ・カツトシ


前回の紹介でも良かった 『合わせ技』 の登場です

これを観たのは 子供の頃入り浸っていた 街の三番館ですが
なぜか日本語吹き替え版になっていました

かなりのポンコツ映画で、主人公を演じる俳優も
やたらトランポリンを多用する割には アクションにリズムもキレも無く

只々動きが重かった所から 明らかにカンフーの達人でも何でも無い事は
子供の目にも明らかで 観ていて物凄く見苦しかった記憶があります

格闘シーンも武術と言うよりは
トランポリンで跳ねまわる他は ほとんど殴り合いになっているので
全編 ドラゴンと称するお下げの小男の 『チンケなサーカス』 に付き合わされる80分でした

更に、強敵と称して登場するのは
まるで 『ロボット8ちゃん』 に出て来る様な 突っ込むのも嫌になる程の 真っ赤な忍者で

コント55号の坂上二郎のネタの 『赤忍者』 を思い出すキテレツさでした
この下りを 『あ~あ、あ~あ』 と納得された方は 年がバレると思いますw


△▼△▼△



荒野の渡世人
KOYA NO TOSEININ
1968年6月 日本
監督:佐藤純弥
出演:高倉健、志村喬、ジュディース・ロバーツ、ジョン・シャーウッド

我らが 『健さん』 が、今回は相棒の池部良の助けも無く
タイトルのネタはむしろ 『渡世人』 の方にあると思われるので

順当に 『荒野の』 がネーミングされる映画であるかは 疑問を残す所です

この前にも東映は健さんで 『網走番外地 荒野の決闘』 なる映画を作っており
子供の頃正月にモノクロテレビでなぜか縦長になる画面で鑑賞した記憶からは

荒野 は何の関わりも無く
単に付けたかった感が 見え見えが見え隠れする作品との覚えがありますw

内容は、アメリカに住む2世の健さんが両親を殺され ガンマンに銃を習って・・・
という スティーブ・マックイーンの 『ネバダ・スミス』 の様な内容なのですが

何ともグデグデで、西部劇に見られるリズム感あるスタントが全く無く
仇の家族との交流やら 銃を習ったガンマンの余計な親子ネタやらで

西部劇で最も重要な テンポが削がれた 怪作となっております

ラストは 『ケーン! カムバーック!!』で
『シェーン』・・・もう何も言う気はございません・・・・


△▼△▼△


というわけで、いかがでしたでしょうか?

他にも 『荒野の少年イサム』 なるアニメもありましたが

この、日本が誇るカテゴリー 『荒野の』 に掛ける映画配給会社の思いが
お分かり頂けましたでしょうか

それでは 次回をお楽しみに


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レビューが気に入りましたら それぞれ

荒野の用心棒 「 正真正銘の『バッタもん(パクリ)』映画
荒野の一ドル銀貨 「 アメリカ製に見せ掛けたイタリア製西部劇
荒野のドラゴン『 街の3番館が似合う かなりの怪作・・・

のリンク先に飛んだ後
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最終更新日  2013年10月25日 03時30分57秒
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