村松克哉の「AI×広報マーケティング」実践記 | 現場の生産性を変える視点

村松克哉の「AI×広報マーケティング」実践記 | 現場の生産性を変える視点

PR

×

プロフィール

村松克哉

村松克哉

カレンダー

2026.04.07
XML
カテゴリ: マーケティング




「
一人ひとりの顧客に 、 最適なメッセージを 。」

1990 年代後半 、 私がソニーでエンターテインメントロボット 「AIBO」 などのマーケティングに携わっていた頃 、 私たちはこの 「One to One Marketing」 という理想に胸を躍らせていました 。 顧客データベースを構築し 、 個別のニーズに応える 。 それが次世代のビジネスだと信じて疑いませんでした 。

しかし 、 現実は残酷でした 。

私たちが最終的に選んだのは 、 理想とは真逆の道 。 従来通りの 「 大量販売・大量広告 」 という物量作戦 でした 。 そして 、 現実は衝動買いだけしかないと信じる人たち 。 上から押し付けられたノルマを達成するしかない現実 。

なぜ 、 私たちは 「 個客 」 を置き去りにしてしまったのか ?
なぜ 、 巨大なリソースを持ちながら 、 旧態依然とした 「 数 」 の論理に飲み込まれてしまったのか ?

そこには 、 単なる技術不足ではない 、 「 組織の OS」 と 「 トップの意識 」 という巨大な壁 がありました 。

今 、 世の中は生成 AI の熱狂の中にあります 。「AI を使えば 、 真のパーソナライゼーションが可能になる 」 と 。 しかし 、30 年前と同じ過ちを繰り返そうとしている企業も少なくありません 。

本稿では 、 私がソニーの最前線で目撃した 「One to One Marketing」 の敗北を振り返り 、 現代の AI 活用が 「 単なる効率的な大量廃棄コンテンツ生成 」 に終わらないための教訓を整理します 。

なぜ 、 理想は 「 数 」 に負けたのか 。

その最大の理由は 、 「 広告 」 という劇薬がもたらす 、 短期間の成功体験 にありました 。

広告という強い刺激を投下すれば 、 即座に 「 販売実績 」 という反応が返ってくる 。 その甘い果実は 、 あまりにも魅力的でした 。 当時 、 日本の One to One Marketing の第一人者である服部隆幸氏にコンサルティングを依頼していましたが 、 彼が提示した道は 、 決して楽なものではありませんでした 。

「 既存顧客との関係を築き 、 潜在顧客をデータ化し 、PDCA サイクルを回して目に見える成果を出すまでには 、 少なくとも 3 年はかかります 」

この 「3 年 」 という月日が 、 あまりにも重かったのです 。
CRM という 、 個客と向き合うための精緻な仕組みを構築するよりも 、 派手な広告を打って 「 衝動買い 」 を誘発する方が 、 手っ取り早く今月の数字を作れる 。

「 一人ひとりと向き合う 」 という丁寧な手間は 、 当時の組織目標であった 「 売上規模の急拡大 」 というノルマの前では 、 あまりに 「 非効率 」 なものとして切り捨てられていきました 。

結局 、 組織の OS は 、 個客の顔を見るよりも 、 エクセル上の数字の積み上げを選んだのです 。

しかし 、 広告という劇薬は打つたびに効果が薄れていき 、 最終的には売上は伸び悩み 、 結局 、 事業再構築に追い込まれていきました 。

そして今 、 私たちは 「 生成 AI」 という熱狂の中にいます 。

生産性向上という強力な武器を携え 、 ハイテク企業を中心に AI データセンターへのインフラ投資は過熱の一途を辿っています 。 顧客管理 (CRM) 大手の Salesforce も 、「 人と AI エージェントの共創 」 へと進化を遂げ 、 自律的なアクションや高度な予測で実務を支援するフェーズに入りました 。

しかし 、 その影で起きている現実はどうでしょうか 。
AI を使って 「 とりあえず大量のコンテンツを作る 」「 無差別に DM を送る 」 企業が急増しています 。 これは 、25 年前に私たちが陥った 「 広告物量作戦 」 と全く同じ構造ではないでしょうか 。

自ら AI を使い倒しているからこそ 、 確信を持って言えます 。
AI によって 、 一人ひとりに合わせたメッセージを作るコストは劇的に下がりました 。 技術的な障壁は 、 もはや存在しません 。


しかし 、 使う側の人間が 「 数 」 や 「 ノルマ 」 という短期的な数字の呪縛に囚われたままだと 、 AI は単なる 「 高性能なゴミ製造機 」 に成り下がってしまいます 。

かつての失敗を繰り返さないために 、 今こそ私たちは 、 日本人が本来得意としていた 「 商いの思想 」 を取り戻すべきです 。

富山の薬売りや近江商人の 「 三方よし 」 に見られるような 、 長期的な信頼関係に基づくビジネスモデル 。 この思想がトップダウンで組織の隅 々 まで行き渡らなければ 、 いくら最新の AI を導入したところで 、 持続可能な経営は不可能です 。

道具 (AI) は進化しました 。 次は 、 それを使う私たちの 「 思想 」 が問われています 。

【 執筆・活動のご案内 】

私は現在 、 こうした 「 技術と人間 ( 組織 ) の相克 」 や 「 生成 AI をどう本質的な経営に活かすか 」 というテーマで 、 宣伝会議の月刊 『 広報会議 』 にて連載を担当しています 。

連載タイトル :  「 企業広報における生成 AI の活用 」

執筆の視点 : 単なる効率化を超え 、AI を 「 信頼構築 (One to One)」 のパートナーとしてどう再定義するか 。

35 年のハイテク・マーケティングの現場経験と 、 最新の AI 知見を掛け合わせ 、 ビジネスの 「 温度 」 を伝える執筆活動を行っています 。 記事制作 、 広報戦略のアドバイス 、 研修などのご相談は 、 お気軽に note の 「 お仕事依頼 」 または LinkedIn よりご連絡ください 。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2026.04.07 10:19:26
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: