PR
キーワードサーチ
カレンダー
カテゴリ
小田雅久仁(オダマサクニ)
1974年宮城県生まれ。関西大学法学部政治学科卒業。2009年『増大派に告ぐ』で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、作家デビュー。12年に刊行した受賞後第一作の『本にだって雄と雌があります』で、第3回Twitter文学賞国内編第1位を獲得するなど熱い支持を得る
大人になれば孤独な人間はごろごろいるけれど、あの歳で背負う孤独は、きっと世界という名の冷たい井戸の底にでも落ちたような心地だろう。
「特技は、四歳のころに始めたピアノです。趣味は、音楽を聴くこととと、映画を見ること……」
テロリストに囚われた娘が、堕落した物質文明の象徴として世界に向けて空疎なメッセージを強いられているような、どこか痛ましい雰囲気があった。
自分に鞭打って仕事に向かうが、頭に箍をはめられたような鈍痛が消えず、意識はつねに薄膜がかかったまま。それでも追いたてられるように立ち働くが、日に日に不手際が増えてゆく。誰かがやらねばならない仕事だと自分に言い聞かせても、心が、体が、立ちあがろうとしない。そしてある日、とうとう自分の芯が朽ち木のように折れてゆく音を聞いた気がし、もう駄目だとわかった。続けられない。一日でも早くここをやめねばならない。
004.サクラサク、サクラチル [ 辻堂ゆめ ] 2024.01.30
003.リスペクト [ ブレイディみかこ ] 2024.01.28
254.ストロベリー戦争 弁理士・大鳳未来 [… 2023.12.26