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2023.07.11
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テーマ: 読書(8231)

書名



残月記 [ 小田雅久仁 ]

目次


そして月がふりかえる
月景石
残月記

感想


2023年150冊目
★★★

2022年本屋大賞第7位。
これで、2022年の本屋大賞は西加奈子さんの『夜が明ける』以外のノミネート10作中、9作読了。
本屋大賞に取り上げられていなかったら、読んでなかっただろうし、知らなかっただろう作品。
「吉川英治文学新人賞」と、「日本SF大賞」もW受賞してらっしゃる。


月をテーマにしていても、
月の立つ林で [ 青山美智子 ]
とはえらく趣きが違う。

苦節を経て、大学で教えるまでになった男。テレビのコメンテーターをするようになり顔も売れ始めた。糟糠の妻に、かわいい盛りの子どもがふたり。しかしある日、月が裏側を見せたその時、世界は停止し、見知らぬ同姓同名の男が彼に成り代わったーーー「そして月がふりかえる」。
おばが持っていた月の風景のように見える石。それを枕の下にいれて眠ると、ひどい夢を見るのだという。ーーー「月景石」。
月の満ち欠けに呼応する月昂病を発症した男。彼は竹刀の腕を見込まれ、独裁者のために闘技場で剣士として生き残りをかけて戦うことになるーーー「残月記」。

というわけで、直接関係しない3つの小説が収められています。
帯にはディストピア小説とある。
私の困惑をぶっ飛ばすくらい3つ目の「残月記」は良かったです。
著者は、

小田雅久仁(オダマサクニ)
1974年宮城県生まれ。関西大学法学部政治学科卒業。2009年『増大派に告ぐ』で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、作家デビュー。12年に刊行した受賞後第一作の『本にだって雄と雌があります』で、第3回Twitter文学賞国内編第1位を獲得するなど熱い支持を得る


というわけで、この本が3冊目。

専属作家ではなく、兼業作家なのだろうか。
しかし筆力があるなと読んでいて思った。
作り込むのがすきなんだろうなあ。

大人になれば孤独な人間はごろごろいるけれど、あの歳で背負う孤独は、きっと世界という名の冷たい井戸の底にでも落ちたような心地だろう。

「特技は、四歳のころに始めたピアノです。趣味は、音楽を聴くこととと、映画を見ること……」
テロリストに囚われた娘が、堕落した物質文明の象徴として世界に向けて空疎なメッセージを強いられているような、どこか痛ましい雰囲気があった。


こういう、ちょっとした比喩が冴えわたっている。
透明な石みたいにひんやりとして、まるっこくてなめらかで、美しい。


「残月記」の瑠香が、姥捨て山のように老人が死を待つ「長寿園」で働くうち、心身を疲弊させて

自分に鞭打って仕事に向かうが、頭に箍をはめられたような鈍痛が消えず、意識はつねに薄膜がかかったまま。それでも追いたてられるように立ち働くが、日に日に不手際が増えてゆく。誰かがやらねばならない仕事だと自分に言い聞かせても、心が、体が、立ちあがろうとしない。そしてある日、とうとう自分の芯が朽ち木のように折れてゆく音を聞いた気がし、もう駄目だとわかった。続けられない。一日でも早くここをやめねばならない。


と思うところ、すごく今の自分みたいだと思った。
全然追い詰められている切迫度は違うのだが。
どこに行ってもなにかしらあるよねえ。
一生懸命やっているんだけどねえ。

最近、「あなたはやさしいのだ」と言われて、誰かを、何かを、騙しているような気になった。
偽物の壺でも売りつけようとしているような。

本が好きな人は、自分の周りにバリケードを築いているんだよね、とある人に言われた。
だから本当は本が読みたいんじゃないんじゃないかって、思ってると。
人の和に入りたいのに入り方が分からないから、本を読んでるんじゃないかと。

お前に何が分かるんだよ、と私は思った。
本を積み上げて、一冊一冊積み上げて、自分の周りに砦を築き上げて。
その中でようやく息を吐ける、その気持が分かるか?
本で作った鎧で、それを身に纏わないと世界へ出ていけない、その気持がわかるのかよ?
そうまでして、この世界でなんとか生きていこうとしているんだよ。
そして、ファックユー、本が大好きで本が読みたいんだよ。


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最終更新日  2023.07.11 00:00:19
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