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2023.08.30
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テーマ: 読書(8559)
書名


移動祝祭日 (新潮文庫 新潮文庫) [ アーネスト・ヘミングウェイ ]

目次

サン・ミシェル広場の気持のいいカフェ
ミス・スタインの教え
“ユヌ・ジェネラシオン・ペルデュ”
シェイクスピア書店
セーヌの人々
偽りの春
副業との訣別

フォード・マドックス・フォードと悪魔の使徒
新しい文学の誕生
パスキンと、ドームで
エズラ・パウンドとベル・エスプリ
実に奇妙な結果
死の刻印を押された男
リラでのエヴァン・シップマン
悪魔の使い
スコット・フィッツジェラルド
鷹は与えない
サイズの問題


引用

もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、パリはついてくる。パリは移動祝祭日だからだ。


感想

いわた書店「1万円選書」に当選した時、
2021.11.28「 ブックセラーズ・ダイアリー [ ショーン・バイセル ]
を挙げた。

そして選んでいただいた本(2022.02.06「 2022年1月に読んだ本まとめ/これから読みたい本 175.シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々 [ ジェレミー・マーサー ] 」。

で、その本の中にパリの有名書店、初代「シェイクスピア・カンパニー」がヘミングウェイの『移動祝祭日』に登場するとあり、読んでみた。
こういうのなんて言うのだろう、入れ子式読書?
点と点が順番につながっていく読書。

余談だけれど、書題を私ずっと「いどう・しゅくさいび」と読んでいた。
書誌情報みると、「イドウシュクサイジツ」だった。
すごく素敵なタイトル。
この本の最後の解説にもあるけれど、この本のタイトルは、ヘミングウェイがライターのホッチナーへ話している中(上記引用部)で使った、"a moveable feast"という言葉から来ている。
ふと、フランス語の先生が、「パリは街全体が遊園地」だと言っていたことを思い出した。
あるいはミュージアム。

しかしまさか、自分がヘミングウェイを読む日が来るとはね!
というのも、日本であっても海外であっても、古典のレベルに達した有名な作品というのは、「読み時」を逃したらもう手に取らないような気がしていた。
たとえば背伸びをしたがる高校生だとか。
私は高校生の時にカミュと芥川龍之介をよく読み、ほかにも名著と呼ばれる作品を片っ端から読んでみていた。
その良さはいまいち分からなくても、「そういうものを読んでいる自分」に酔っていたんだろう。
でも今思えば、カッコつけの理由であっても、そういう「読み時」を持てたことは良かったと思う。
だって社会人になってから読もうと思うことがなかったから。
本は出会い。

で、肝心の「シェイクスピア・カンパニー」には一章が割かれているし、なんだか映画の中の人が実際に登場した!みたいな嬉しさがあった。
1921年〜1926年にかけてのパリ。アーティストたちの交友。ヘミングウェイの作話について。
キラキラした橙色のライトがたくさんついた、回転木馬。
広場に置かれたそれがまわるのを見ているような作品。
「ふうん」という教養として読んだ感があり、「おもしろー!!」とはならなかったけれども。
なぜか、「172. 神戸・続神戸 [ 西東三鬼 ] 」を思い出した。
雰囲気が似ていたのだと思う。
どこかへ行こうともがいている、どこにも行けない人たち、のような。

ところで私はこの本を、地元の夏祭りで順番待ちをしている時に読んでいた。
青から暮れていく空、中央に据えられた祭りやぐら。
四方に放射線状に張られた提灯がともる。
そして思う。
私の眼の前の世界にある、この「祝祭日」について考える。
本の中のパリーーー持ち運べるメリーゴーランド、ランタンーーーとの、圧倒的なその差異について。
私の世界では、それがくるくる回る盆提灯になるにしても。

本を読むことは、ひとつの「移動祝祭日」ではないか、と思う。
本を読むことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、本はついてくる。
本は移動祝祭日だからだ。


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最終更新日  2023.10.06 23:56:32
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