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2023.10.01
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書名



ベスト・エッセイ2023 [ 赤木明登 ]

目次


赤木明登 工藝家の夢
阿川佐和子 松岡享子さんの教え
秋田麻早子 青と黒のお話
浅田次郎 アジフライの正しい食べ方
荒俣 宏 木を見て、鳥も見ること
石田夏穂 気分はビヨンセ
磯野真穂 ありのままの自分とは

今井真実 おいしい物語
上田岳弘 メタ・メタバース
内澤旬子 どう考えてもおかしい
内田春菊 隠れマッチョ
大辻隆弘 漕代駅
小川 哲 ぼくらの第二次世界大戦
奥泉 光 オンラインの日常で
角田光代 はじまりの旅
鎌田裕樹 本と引越し
川添 愛 心に残る 猪木の言葉
神林長平 「フィクション」の力

きたやまおさむ あの素晴らしい愛
桐野夏生 女ともだち
鯨庭 石膏のヒポグリフ
久栖博季 末裔の足裏
黒井千次 日記帳 隙間だらけ上等

小池真理子 月の光とクリスマス
郷原 宏 巨星は一日にしてならず
佐伯一麦 耕せど 風は冷たい春
酒井順子 “オンラインアグネス”、登場
佐藤利明 情熱のミスター・ダンディー
佐藤洋二郎 生きているだけで幸福
沢木耕太郎 ただそれだけで
沢野ひとし 兄のピッケル
茂山千之丞 代役、有リマス
篠 弘 梅雨入りの「伝単」
柴田一成 宇宙人
杉本昌隆 走る棋士
鈴木伸一 藤子不二雄Ⓐさんを悼む
須藤一成 ゾウ
青来有一 「石原慎太郎」という物語
関田育子 演劇は「恥ずかしい」
大道珠貴 おかしかねえ おかしかねえ
髙田 郁 つくし
武田砂鉄 (笑)でこの笑いは伝わるか
田中慎弥 生き残った者として
中山祐次郎 間違えてはいけない問題
七尾旅人 犬の暮らしの手帖
乗代雄介 教えてあげたい
服部文祥 あるがままを登る
林 真理子 母校へ、ただいま!
平岡直子 幽霊
平松洋子 繰り返す
藤沢 周 白紙の手帳
藤原智美 映画館は社会と地続きだった
藤原麻里菜 天井を見続ける
古川真人 あぶない、落ちるぞ!
ブレイディみかこ 千里の道も地べたから
細川護熙 寂聴さんのいない京都
細馬宏通 「伏線」と「回収」
穂村 弘 命の時間 錯覚と凝視
堀江敏幸 嘘でもいいから
本田秀夫 「絆」に二つの意味
町田 康 西村賢太さんを悼む
松尾スズキ 宮沢章夫さんを悼む
三浦しをん オヤジギャグの道理
三崎亜記 粉モノ・ダイバーシティ
宮田珠己 古地図は間違っているほど楽しい
村田あやこ 「路上園芸」という小宇宙
村田喜代子 電気が消えた!
森田真生 さいごのかずは
山内マリコ すてきな机上旅行
柚木麻子 夜の釣り堀
夢枕 獏 ファンタジーに捧げた肉体
綿矢りさ 野菜が甘い

感想


前年に新聞や雑誌などに掲載されたエッセイから、選ばれた「ベストエッセイ」が集められたもの。
編集委員は、角田光代、林真理子、藤沢周、堀江敏幸、町田康、三浦しをん。

毎年出ていて、一つ一つが2〜3頁程度の分量で読みやすい。スキマ時間に一編読める。
その時時の、コロナだったり亡くなった方だったりを扱ったエッセイも多く、後から読み返すと「ああ、この年はこんなことがあったなあ」と感慨深いタイムカプセルのようでもある。

(これまでのレビュー。あれ、2020と2021は読んでなかったっけ?)
ベスト・エッセイ2019 [ 日本文藝家協会 ]
ベスト・エッセイ2022 [ 日本文藝家協会 ]

短いエッセイだけれど、「あ、このひと好きだな」という書きぶりの書き手がいる。
作家だけでなく、いろんな人が書いたエッセイがあるので、読み終えた後に筆者紹介でプロフィールを見て「ああ、この人はこういう人なのか」と確認するのも面白い。
そして何より、「私がこのエッセイ集のなかで一番お気に入りなのはどれかしらん」と探すのも楽しい。

今回だと、私は岸本佐知子「栗」かな。
栗とウニは親戚だったのではないかと、感動の再会シーン(イガとトゲが刺さり合う)まで妄想するのが可笑しくて、顔がほころんだ。

あとは、何気なく読んでいた「ぼくらの第二次世界大戦」。


そのためにはまず、かつて起こった歴史上の戦争を「理解」しなければならない。「馬鹿だったから愚かなことをした」というところで歩みを止めずに、「たしかに、こういう状況に追い込まれたら戦争に向かってしまうかもしれない」という地点まで進まなければならない。
戦争を「他人事」ではなく、「自分の身にも起こりえること」だと理解すること。愚かな行為に至るまでの過程を知ること。「敗戦」というのが最終的な答えであるならば、その途中式を描くこと。


ここを読んでいて、「ああ、分かる。そう、『なぜではなく、どんなふうに』なんだ」と思って読み進めていたら、だから『地図と拳』を書いたんだ、と続いて「えっ?」となって書き手を確認した。
小川哲さんだった。

地図と拳 [ 小川哲 ]
がどういった想いで書かれたのか、その背景がエッセイに書かれていた。
なんというか、ふらっと入ったバーでたまたま小川さんが隣に座っていて、意図せずその裏側を訊いたような、ちょっとドキドキする感じがあった。

山内マリコさんの「すてきな机上旅行」では、リアルにそんな出会いがある。
憧れていた筑紫哲也さんに、アルバイトをしていたカフェでばったり出会った山内さん。
筑紫さんの趣味が「机上旅行」と聞き、「筑紫哲也っぽい!」と唸る。
そして時は経ち、2020年。コロナにより海外旅行ができなくなり、山内さんは「机上旅行」を思い出す。
ヴィクトリア朝時代、男性名を名乗って発表されたジョージ・エリオットの『回想録ヨーロッパめぐり』。
1850年代、パートナーのゲーテ研究(当時はまだゲーテ没後22年で、ゲーテを直接知る人にインタビュー出来ていた)に同行し、ジョージ(本名メアリ)はワイマールへ旅する。
山内さんは、Google Mapに星をつけながら、本を読み進める。

前に、
読んで旅する海外文学 [ 重松理恵 ]
を読んで、本で世界を旅するのも面白そうだと思ったけれど、その国を舞台にした本も良いけれど、実際の紀行文ならより楽しいだろうな。
私もやりたい!机上旅行。

平岡直子「幽霊」は、朝型人間と夜型人間が同時に起きている時間を「糊代のような部分」と呼び表しているのが秀逸。
『ベスト・エッセイ2022』の武田砂鉄「部屋にいる感じ」とも似ている。これも選者の趣味か。

穂村弘「命の時間 錯覚と凝視」は、年をとると「○歳○ヶ月」と呼ぶようになる、という話。
そして私たちはまた、生まれて間もない頃は「○歳○ヶ月」と呼んでいたのだと。
月単位で命を見守る、そのはじめと、おわり。

武田砂鉄「(笑)でこの笑いは伝わるか」は、『ベスト・エッセイ2022』でも万城目学「(笑)わない作家」がありましたね。編者の中に(笑)が引っかかっている人がいるんだろうか。

杉本昌隆「走る棋士」は、棋戦では遅刻時間をそのまま引かれたり、長時間の場合三倍引かれるなんてこと知らなくて「へえ」と思った。
茂山千之丞「代役、有リマス」も、狂言師って全部の役が出来るから全員代役できるのね?!と驚いた。すごいよね、それ。

いろんな味が出てくる「サクマドロップス」みたいなエッセイ集。
さて、あなたのお気に入りは、どれですか。
(ちなみに私、ハッカ味はきらい!)


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最終更新日  2023.10.01 00:00:17
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