2004年08月15日
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帝政打倒
 連合国側は、イスタンブールの皇帝政府を、アンカラ政府に対する対抗馬として使い、出来るだけ有利な取引をトルコと行おうとしていた。
そのため、ローザンヌで新たに和平会議を開きたいという連合国側の申し出は、アンカラ政府に対してだけでなく、皇帝政府にも送られた。
 そのことが明らかになったとき、トルコ全土で怒りの嵐。
祖国を滅亡させるも同然の条約を連合国と結び、「ギリシア軍は敵にあらず。
ギリシア軍に抵抗する者は反乱者なり」という勅書まで出した皇帝が今なおトルコの主権者とは。
すでに半ば自分達こそ主権者だと自覚していたトルコ国民は、メフメット6世に対する怒りを爆発させた。
 ケマルはその国民の怒りを背景にして、一気に強硬策。
国民議会で、皇帝制度とカリフ制度とを分離して、帝政の方は絶対に打倒しなければならないと演説。

彼らはメフメット6世の一貫した祖国への裏切りに対してこそ激怒していたものの、帝政打倒までは主張していなかった。
そのため、帝政打倒をただちに決議せよというケマルの要求は拒否された。
 しかし、国民は議員達より、ずっと急進的になっていた。
もはや国民はケマルこそ自分達の唯一の指導者だと信じていた。
 その国民に向かって呼びかけた。
「国家の主権は国民のものである!オスマン王家はそれを私物化し、6世紀に渡って祖国を不法に支配し続けたのだ。
今こそ諸君は自分達の権利を取り戻さねばならない。
皇帝制度がある限り、再びメフメット6世のごとき人物が現れ、祖国を滅亡へ導いてしまうであろう。
ついに独立を守り抜いた我々が、今なすべきことは2度と祖国の独立を危うくしないために、その危険の原因となる皇帝制度を廃止することだ!」
 ケマルに煽られた民衆は、議会が開かれている建物に押し寄せ、「帝政打倒!」を絶叫。
 11月3日、ケマルは議会で大演説をした後、「私は諸君が本日この場で、皇帝制度の廃止について、満場一致で賛成するものと信じる!」と怒鳴るように言った。

議長は弱々しい声で、「ガーズィの提案を採択し、これより議決を行います」と言った。
何人かの議員は手を挙げなかった。
しかし、議長は、「満場一致で議決!皇帝制度は廃止されました」と宣言。
 民衆は帝政が打倒されたことに狂喜。
民衆はアンカラの粗末な議事堂になだれ込み帝政廃止に賛成したかどうかを、全ての議員に問いただし、曖昧な返事をしたものに集団暴行をやった。


 1922年11月下旬に開催。
1923年7月合意。
トルコは大戦前のヨーロッパ領土を取り戻し、北イラクこそ英国に譲ったが、小アジアは確保。
その上、治外法権制度は完全に廃止され、財政管理権もトルコの手に戻った。
ボスポラスとダーダネルス海峡を非武装地帯にすることと、両海峡を国際管理委員会の支配下におくこと。
しかし、その国際管理委員会の議長国にはトルコがなったのだから、トルコの面子はたったと言うべき。

 ▼親日家ケマル
 アタチュルクの晩年、トルコへ赴任した武富大使は、その執務室の書架に、主としてフランスで出版された莫大な数の日本に関する書物が並んでいたと雑誌に書いている。
また、アタチュルクは武富大使に、「私は日本から多くのことを学びました。
日本はトルコ共和国の先生です」と語ったという。
 武富大使の前任者だった吉田大使はアンカラで病死されたが、危篤の知らせにアタチュルクは病院へ駆けつけ、その額に心からなる別れの口づけをしたという。
他国の大使公使でアンカラで客死した例は、他にもいくつかあるが、その最期にアタチュルクが駆けつけたのは、吉田大使の場合だけだったそうである。

 ▼トルコの留学生は、ドイツで歓迎された
 何故なら、自分達がヴェルサイユ条約という、屈辱極まる和平条約を阻めなかったのに、トルコが同じ様なセーブル条約を実力で阻んだことは、ドイツ人を驚嘆させたから。

 ▼当時のアタチュルクの睡眠時間
 せいぜい4、5時間。
そのうえ、例の大酒のみの習慣は続いていた。
アルコール度では50度もある強い酒で、それを毎晩1本(約700cc)は飲み干していた。
しかも、彼の起床は大体午前7時だったが、一度も二日酔いの症状はみせなかった。

 ▼超人
 わずか15年の統治において、一国にルネサンスと宗教革命と産業革命とをもたらした鉄人。

 ▼借金返済
 アタチュルクは苦しい国家財政にもかかわらず、トルコ帝国が外債という形で借りていた、約1億6000万金貨リラ、つまり今日の邦貨で10兆円を越す借金を、旧帝国の約束通りの利子をつけて返し続けた。
そして、この借金をトルコが払い終えたのは、アタチュルクの死後16年目の1954年のことであり、対ロシア戦争の軍費調達のため、初めて外債という形で西欧から借金した1853年から数えれば、実に101年もかかった勘定になる。
 そして、そういう誠実さや、自らその独裁を終わらせようとしたところからも、同じく独裁者でありながら、彼がスターリンやヒトラーとは根本的に異なる人物であったことが容易に証明されよう。
(大島直政著『ケマル・パシャ伝』新潮選書)





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最終更新日  2004年08月15日 12時56分39秒
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