シュタイナーから読み解く神秘学入門

シュタイナーから読み解く神秘学入門

2011年02月12日
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カテゴリ: 神秘体験空間


 「生命の樹(セフィロト)」について(後半)


 もし、例えば、16のアルファベットを数え上げ、覚えても、それだけでは、あまり読書の役には立たない。

 同じようにケテル、コクマー、ビナー、ケセド、ゲブラー、ティファレト、ネツァク、ホド、イェソド、マルクトという10個のセフィロトを数え上げ、覚えても、古代ユダヤ人にとっては、A、B、C、D、E、F、G、H等々と文字列を並べる幼児と同じにみえるだろう。

 アルファベットを数え上げ、覚えるだけでなく、その文字列の意味を読めなければならない。改めて考えてみると、字母となる文字数はたったの25か26なのに、この僅かな文字から、なんと多くの書物がこれまで書かれてきたことか。

 例えば、カール・マルクスの『資本論』を手にとってみれば、そこには26の字母しか存在しない。その26の字母が、各々無数に組み合わさり、この書物を壮大な思想の構築物として組み立てている。

 アルファベットだけを知る人間が、「資本論」を手にとり、この書に書かれている26の字母を読めても、その字母が配列の順を各々変えて並んでいるだけで、内容を理解できなくなる。

 同じように、古代ユダヤ人にとって、10個のセフィロトは字母にすぎなかった。但し、古代では字母を、現代のような1文字ではなく、複数文字の単語として表していた。

 やがて字母がヨーロッパに伝えられたとき、字母となる単語(言葉)の意味は失われた。



 以上のように、どの字母も単語(言葉)と意味を持っていた。古代ギリシア人は字母と単語(言葉)を区別しなかった。ところが古代ローマ人になると、もはやアルファ、ベータ、ガンマ、デルタ等々ではなく、全く抽象的にA、B、C、D、E、F、G等々と呼んだ。

 以上のように、古代ギリシア文化が古代ローマ文化に移行したとき、ヨーロッパは壮大な文化の下痢を起こした。以上のような壮大な下痢症状の中で、文化の中の霊的本性を失った。

 以上のことは、古代ユダヤ文化の場合、特に大きな意味を持っていた。古代ユダヤ人が最初の字母である「アレフ」を書き記すとき、「アレフ」という単語(言葉)で、「人間」を意味づけした。どの字母も感覚世界の言葉を示していた。

 ところがケテル、コクマー、ビナー、ケセド、ゲブラー、ティファレト、ネツァク、ホド、イェソド、マルクトは、霊的な字母のためにだけつけられた名称(言葉)だった。霊界の中でだけ読める単語だった。

 古代ユダヤ人はアレフ、ベト等々の外なる物質世界のためのアルファベットと、10個のセフィロトという霊界を理解するためのアルファベットとを持っていた。

 例えば、ケテル・ケセド・ビナーと綴れば、「霊界における至高の力が自由に叡智を生じさせる」という意味だった。

 (ケテル「至高の叡智」、ケセド「自由」、ビナー「知性」)

 コクマー・ゲブラー・マルクトと綴れば「叡智が生命力の霊たちを生み出し、地上で働かしめる」という意味だった。

 (コクマー「叡智」、ゲブラー「生命力」、マルクト「大地力」)

 以上のように、10個の霊的な字母を通じ、一種の霊学を学んだ。

 ところが、西暦1、2世紀の古代ユダヤ人は、以上の内容を知っていたのに、その後の古代ユダヤ人は散り散りになり、世界中に分かれ別れになっていった。ラビの下で学ぶ弟子のことをカカミムと言うが、カカミムたちはセフィロトを学んでも、どう読むのか正確には分からなくなっていった。



 ところが、中世の半ば頃に、ライムンドゥス・ルルスという人物が現れ、非常に重要な教えを説いた。しかし、もし、現代人が、ライムンドゥス・ルルスに関する書物を読んだら、その馬鹿げた内容に大笑いするだろう。大抵の書物には、次のように記されている。

 「このライムンドゥス・ルルスは、10個の言葉を各々紙片に記し、その紙片を、博打を打つように(現代風にいえば、カードゲームをするように)、ごちゃ混ぜにして並べ、その結果を書き記し、そこから色々な知恵を引き出した。」

ラインムンドゥス・ルルス
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%A5%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%83%AB%E3%82%B9

 けれども、上記の記載内容には深い思想が込められていた。彼は、現世的なアルファベットでは真理を探究できず、通常の思考法で解釈しても役に立たず、まるで賭博に使うルーレットのように不確かな結果しか出てこないので、逆に、不確かな10個のセフィロトを使い、通常の思考法から除外した組み合わせが示す新しい言葉の解読法を学ぶ必要がある、と考えた。

 彼は著述の中で以上のように述べている。そのためのイメージとして、霊的なルーレットを廻すように、セフィロトの各文字を記した紙片を混ぜ合わせ、そこから超感覚的な開示を読みとろうとした。



 今日でも、上記の10個の概念は、「存在」、「特質」、「所有」というような10個の単語として、論理学の授業で活用されている。上記の概念は、人類史上の興味深い事実だが、古代ギリシアの彼方のアジアでは、セフィロトの樹により、霊界の出来事が学ばれた。

 西暦1、2世紀頃の人間は、古代ギリシアやローマ等において、アリストテレスの生命の樹によって霊界の読み方を学んだ。しかし次第に、上記の両方の樹(西洋のアリストテレスの樹と東洋のセフィロトの樹)の内容は忘れられ、ただ10個の概念を数え上げ、覚えることができるだけになってしまった。

 (現代では、この生命の樹のことを、ヒポクラテスの木として、単なるプラタナスという植物の樹と解釈して、骨董品のようにして大事に飾っているが、古代人がみたら苦笑するような喜劇だろう。

 例えば、「現代人は、我々が、プラタナスの樹の下で、講義をしたとでも解釈しているようだ。なぜ、学院の建物「神殿」があるのに、わざわざ、そんなことをする必要があるのか? 植物学を教えたとでも思っているのかな? 無知にもほどがある。」と言うだろう。)

 そして、今、はじめて、人智学徒により、霊界を読み解くために、10個のセフィロトが用いられるようになるべきである。もし、霊界が読み解けなくなれば、次第に人間は、人間について何も知ることができなくなってしまうだろう。

 古代ユダヤの賢人がゲブラー・ネツァク・ホドと綴り、書いたり、語ったなら、それは「生命力が腎臓の中で夢を孵化する」という意味にとることができた。

 (ゲブラー「生命力」、ネツァク「運動、克服」、ホド「生殖力、共感」)

 そして、それは、「人間の中の霊的な人間が夢の内容を生じさせる」という意味でもある。

 19世紀後半から、次のようなことがよく行われるようになった。テーブルが置かれ、その周りに何人か、例えば8人が席を占め、両手を広げ、外側の指が隣の人の外側の指に触れるようにし、テーブルの上に置く。

 すると、テーブルが振動し始める。その8人はテーブルが床を叩く音の数を数え、その数から字母を取り出す。

 以上は心霊術の集まりなのだが、このとき何を期待しているのか。この心霊術に集う人々の信じるところは、人間がいくら頭で考えても、深い認識には達しない、真の認識はどこか別のところから来る、というものである。

 (日本人の会議も、どこかこのような心霊術に似ている。)

 以上のような考え方に対して、ゲブラー・ネツァク・ホドが語るのは、次のようなことである。

 霊界を認識しようと思っても、霊たちを見ることはできない。霊は身体を持たないので、見ることも聞くこともできない。だから、上記のような人たちは、テーブルを身体に見立て、霊たちを、もう少し分かりやすい存在にしている。

 ついでに述べておくと、上記の心霊術の場合には、ごく一般的な事柄しか現れてこない。いずれにしろ、テーブルを取り巻く人たちは、霊が現れ、聞ける存在になることを期待しているが、そもそも、その人たち自身も、霊ではないのか。

 自分の中に霊を求めるなら、テーブルを通して現れる霊よりももっと遙かに偉大な霊に出会うことができるはずである。

 人間は人間らしく、自分の肢体、自分の声、特に自分の思考力を用いなければ、霊的な夢を体験することもできないだろう。

 勿論、テーブルが踊り始めるのも、周りに座っている人たちの無意識の力がテーブルに働きかけているからだが、人間が、自分の中の霊的な人間を語らせようとしなければ、決して、高次の無意識の声に耳を傾けることはできない。

 (わざわざ外に求めるのではなく、既に自分のなかに存在する、自分の中の霊的存在に耳を傾ければよい。でないと、現代の唯物思考の典型のように、古代人が、わざわざ外に出て、プラタナスの樹の下で医学教育をしたと錯覚し、プラタナスの樹を崇拝し、偽者の宗教を信じてしまうのと同じである。

 現代人は、ヒポクラテスが何を教えたのか、よりも、ヒポクラテスが教えた史実をありがたがっている単なる愚かな収集家へと益々堕落してしまうだけではないのか? 死体を集めても生命は生まれない。医学はもはや死体同然なのかもしれない。悪魔に騙されていることも知らないのだろう。

 人間としてのキリストの研究も大切だが、霊としてのキリストを理解しない限り、人間という存在はみえてこないのだから。)





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Last updated  2011年02月12日 13時08分54秒
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