シュタイナーから読み解く神秘学入門

シュタイナーから読み解く神秘学入門

2011年03月01日
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カテゴリ: 神秘体験空間


 死者


 今から30年以上前にゲーテに関する本を書いたが、資料や文献に基づいた他の学者的な手法で書いたのではない。もともと、私(シュタイナー)にとっての関心の的は、私が問題とする領域に関して、ゲーテが現代人に何を語ろうとするか、を表現することだった。

 ゲーテを研究するのは、死んだゲーテのところに行くためではなく、ゲーテの遺産を通じて、生きたゲーテと遭遇する方法を見つけるためである。

 死者も生者と変わりないという事実や、現に死者が生者の世界にまで働きかけている事実や、ただ肉体を纏いながら行動している生者に対して、死者は(肉体をもたずに)霊として一緒にいる点だけが異なる事実等を前提として、今も生者の魂に語りかけるゲーテに出会う方法を見つけようとした。

 では一体、キリスト教共同体は本当に死者と生活を共にしているのか?

 確かに利己主義的な「不死への信仰」は存在しているが、それが悪いというのではない。なぜなら人智学により、この世の生者とカルマ的に、何千、何万の糸で現在も結びついている死者たちに遭遇する方法を見つけることができるからである。

 この地上に生じる出来事には、生者たちの衝動だけが働いているのではない。死の門を通過した後の人間も、この世への働きかけをやめてはいない。

 人間は完全に覚醒しているわけではなく、部分的にしか覚醒していない。知覚し、イメージするときの人間は覚醒しているが、感情を働かせるときの人間は夢見心地(夢を見るとき)の(主観的な)意識でいる。

 人間の感情は、夢見心地と同程度の意識水準の中で営まれている。更に、意志を働かせるときの人間は、完全に睡眠状態である。夢を思い出すことはできるが、通常の覚醒意識においては、腕を動かすときの意志が、どのように働いているか、を知ることはできない。

人間は、感情の中では夢見状態で、意志の中では眠っている。

 さて、感情と意志とを働かせているとき、その周囲を霊界が取りまいている。ただ通常の覚醒意識では、霊界が見えないだけである。霊界から知覚と思考によって、人間は引き離されている。知覚し、思考し、物質界を享受するとき、死者たちが、地上の人間の間を往き来している。

 人間は、人生を生き、死の門をくぐる。死の門をくぐってもまだ地上の生活との結びつきを失わない。様々な糸が、死者から地上の存在にまで通じている。生者とカルマ的に結びついている死者たちが、感情や意志に働きかけなければ、生者は感情を持つことも、意志を働かせることもできない。

 現代人は、一般的に、死後、もはや何も残らないものと信じている。失われることのない過去の生活の数々の経験を、生き生きとした形で肯定することを教えるのが人智学である。

 (先祖供養は、死者との糸を強化することにつながるようである。感情や意志は霊界からくるので、感情が安定せずに、意志が薄弱なのは、先祖や死者との霊的なみえない糸が弱いともいえる。

 素粒子物理学でいうなら、例えば、電荷は、本来、無限大の地をもつが、周囲の電場により、遮蔽されているので、有限値をもつという繰り込み理論により、実測値が計算できるが、また、原子核を結合していると考えられているグルーオンなる仮想粒子の作用は、単体なら非常に微弱だが、集まると増幅するという摂動論で実測値が求められるが、以上のような現象と同じように感情や意志を考えればよいだろう。)

 人間が成長を遂げるのは、この地上だけではない。死の門を通った後も、人生を豊かにし、叡智を深めていく。この事実を人間は深く実感すべきである。

 この世の出来事についての意見を聞くべき賢者は、死者である、ということを、将来、人間は理解するようになるだろう。

 現在、人間は意識魂を形成中である(意識魂については、著書『神智学』を参照のこと)。その次に来る文化は霊我を形成する。

 霊我は、死者が、この世を生きる人間の助言者になることなしには、決して形成されない。





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Last updated  2011年03月03日 09時08分09秒
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