シュタイナーから読み解く神秘学入門

シュタイナーから読み解く神秘学入門

2011年03月30日
XML
カテゴリ: 神秘体験空間


演劇(前半)


 役者が特に大切にすべきことは、夢に対する特別な感受性を育てることである。

 「夢の中に生きる訓練を積み、夢の中に現れる様々な形姿を想起して、夢の体験が次第に明確に意識できるようになるほど、舞台上でよい演技ができるようになる。」

 上記は舞台芸術のための公理である。実際、上記の態度により、表面的ではなく、芸術的に自分の様式を確立できるようになる。

 役者にとっての深い神秘性が始まる。夢の世界を理解し、進んで参入できれば、これまで十分に深く体験することのなかった日常生活上の営みの微妙な相違がわかってくる。これまでの日常生活の慌しさの中で感じられてきた事柄が別様に体験できるようになる。

 例えば、5時にお茶をすることを考えてみる。その時間に、恭しげな式部官がワザとらしく冗談を語るときや、例えば女流舞踊家ミュラー女史が優美な振る舞いを示すときや、お茶に呼ばれても、普段は滅多に顔を見せない堅苦しい教授が、まるで義務でもあるかのように口ごもりながら、お世辞を言う場合とでは、内なる魂の在り様が異なることは明らかである。

 上記のような日常生活上の様々な営みは、孤独の中で夢の体験を想起する場合とは異なった経験を示している。今は極端な例を挙げたが、上記のような経験上の微妙な相違を感じ取る必要がある。

 日常生活の中で体験する1つの経験内容の意味を、内的に生き生きと感じ取れるようになる必要がある。まるで夢のように淡く現れる内密な生活体験の中に、完全に身を委ね、そのときの内なる魂の経過を、心を集中させて感じ取る必要がある。



 実際、舞台上である役割を生き生きと演じることができるためには、予め混沌とした日常生活の中での経験を生々しく把握する必要がある。以上のように、舞台上の役割を演じる準備をはじめ、益々、その役割を魂の中に深めていき、最後には自分の見た夢と同じくらいの身近さで、その役割を感じ取れるようにすべきである。

 勿論、以上のことは全て、遙か彼方にある目標だが、その目標に向かって歩むことはできるはずである。

 また、以上の準備に、正しい言語表現を結びつける必要がある。夢に見ることができるほどにまで、演劇上の役割や身近な関係を結ぶ一方で、曖昧な輪郭の中に、個々の台詞を融合させ、色彩豊かな言葉の響きの中で個々の役割や演劇全体を1つのものとして感じさせる必要がある。

 夢が与えるイメージ全体の中に、個々の台詞が、融けこみ、まるで当然のように、言語から、上述したような方法で、表現が作り出される。以上の2つの方法を準備段階で並行して進ませる際に、個々の役割が生かされてくる。

 従って、以上の意味で、役者や音楽家や歌手は、各々の自分の芸術への理解を通じて、共同で舞台芸術のために働くことができる。極端なことを言えば、ピアニストも眠りながら曲を演奏できる段階にまで到達すべきである。そのような段階にまで、当たり前に演奏できるようになる。

 同時に芸術家は、自らの芸術を通じて、「天にまで高く歓声をあげたり、逆に死んだように、落ち込んだり」することもできなければならない。

 とはいえ、「天にまで高く歓声をあげる」ことで、(「死んだように落ち込む」方はできるだけ避けるのが普通だが)、益々、頭でっかちになってはいけない。明白な意識をもって、自らを客観視できていなければならない。

 以上述べたことは、現代の役者が意識して訓練すべきことである。シェークスピアの時代の役者たちは、以上のことを本能的に行っていた。なぜなら、当時の役者はイメージ豊かなファンタジーを持っていたからである。

 この事実は、シェークスピアの台詞のつくりかたを見ればわかる。彼は、鮮明な夢の体験と同時に優れた言語形成力も共に持っていた。彼の作品を見ればわかるが、彼は、舞台上の左右や前後全ての役者の魂の体験を、台詞を通して表現できた。

 彼は特別信じられないような感受性を発揮し、台詞で表現した。当時の舞台は、居酒屋を多少造り変えた程度の粗末なものだったが、その舞台で演じられる全てに対して、信じられないような感受性を発揮していた。

 実際、シェークスピアは居酒屋の事情に精通していた。彼は、巷の畸人変人たちが信じているような「全くの孤独な男」などではなかった。彼は庶民生活に通じ、その経験をもとにして役者を舞台に登場させ、自らも舞台に登場した。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2011年03月30日 16時54分56秒
コメント(0) | コメントを書く
[神秘体験空間] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: