後藤英彦の作文教室

後藤英彦の作文教室

PR

×

Profile

ごっちゃん815

ごっちゃん815

Freepage List

February 21, 2005
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
2.話し言葉と書き言葉(2)

八世紀、特に平安期以降かられんめんと続いてきた日本の書き言葉は、湿った自然に寄り添う「情感」の記録でした。

前回の記事でこのように書きましたが、もう少し具体的な説明が要るのではないでしょうか。ただ「情感」と言い切るだけでは、不親切で抽象的にすぎるからです。とりあえず、歴史上の数ある「情感」の記録を韻文と散文に分けて簡単にみてみたいと思います。

書き言葉の中に「韻」を含めるから「韻文」というわけですが、日本列島に住みついた原始の人々は発声の中にすら、「韻」をこめるのが好きでしたから、村の長老や巫女(みこ)などの口を借りて伝えられた伝承の中にも、「韻」を踏むものが多くみられました。

奈良、京都を中心とした和人(倭人)の軍隊に追われて東北、北海道へ落ちていったアイヌ民族は、文字をもちませんでした。東洋人に白人の血がはいってできた誇り高い人々ですが、多勢に無勢、武力の差はいかんともしがたいものでした。

坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)や文屋綿麻呂(ぶんやのわたまろ)は、征夷大将軍(野蛮人を征伐する将軍の意味)となって蝦夷(主としてアイヌ人とみられる)を征伐するのに三千人から五千人を引き連れて東北へ向かいました。

当時のアイヌ人には兵団という概念がほとんどなく、せいぜい数十戸からなる村単位(コタン)で和人の軍隊を迎え撃ちました。これでは勝負になりませんが、中には武勇と知略に優れた壮年・青年らもいて、かれらの武勇の数々を英雄詞曲として後世へ伝えました。
アイヌ語でユーカラと言いますが、これらはいずれも「韻」を踏む芸術として知られています。

八世紀に大伴家持選で成立をみた万葉集(二○巻、約四千五百首)は、国民詩の金字塔としてあまりにも有名です。大和言葉(やまとことば)に中国の漢字を当てた「万葉仮名」という文字で書かれています。



○ わが宿のいささ群竹吹く風の音のかそけきこの夕べかも 
の前半部分を万葉仮名で書けば 
和我屋度能伊佐佐村竹布久風能・・・となります。

○ 夕さればあかね雲敷くかなたより鶸(ひわ)鳴き群れて寺塔の上へ

これを我流の万葉仮名で書いてみましょう。
由有沙礼婆阿架根雲志九嘉奈太用利卑倭那企武列天寺塔努宇曳倍

夕方になると、真っ赤なあかね雲を敷きつめたはるか向こうの空から、無数の点と化した鶸(ひわ)の大群がころろ、きりりと鳴きながら大寺院の塔の上へ飛来してきました。まるで、あかね雲の空間をまだらの雲で染めあげたかのようです。

群れをなして大きくみせるこの習性は、外敵に備えての自己本能でしょうか。体のサイズは雀とほぼ同じです。雀と違うところは、くちばしと前面の胸毛の部分がともに黄色なことです。渡り鳥の仲間だそうですが、小さな野鳥たちはこれから一体どこへ移動していくのでしょう。

上の歌は白状すればわたしの作で、余興のつもりで書きましたが、ここで強調したいのは、日本の和歌は五七五七七の定型で「韻」を響かせるという事実です。

「五七調」とも「七五調」とも言われる韻律の響きは、原始より自然と共生してきたわたしたち日本人の胸に深く染みこんで、和歌はもとより松尾芭蕉を祖とする俳句をはじめ島崎藤村らの近代抒情詩へ決定的な影響を及ぼしています。

○ 古池やかわず飛び込む水の音  芭蕉



言葉に宿っている不思議な霊威、日本人はこれを言霊(ことだま)と呼んで大切にしてきました。古い祝詞(のりと)を読むと、うやうやしい言霊の世界であることを実感させられます。「五七調」とも「七五調」とも言われる韻律は、古代から伝えられた呪力(じゅりょく)とも無関係ではないでしょう。

島崎藤村の詩、「初恋」も伝統の「七五調」で詠まれています。美しい藤村の世界を味わいつつ、韻文の講を閉じたいと思います。

○ まだあげ初(そ)めし前髪の 林檎(りんご)のもとに見えしとき 前にさしたる花櫛(はなぐし)の 花ある君と思いけり 
○ やさしく白き手をのべて 林檎をわれにあたえしは 薄紅(うすくれない)の秋の実(み)に 人こい初(そ)めしはじめなり
○ わがこころなきためいきの その髪の毛にかかるとき たのしき恋の盃(さかずき)を 君が情(なさけ)に酌(く)みしかな








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  March 27, 2005 06:56:57 PM
コメント(1) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Comments

声字実相義@ 愛(i)を語る「あ」の分節 ≪…「あ」の音…≫は、梵語のア「 」の阿字…
??????@ ?????? 何?何?何?何?
哀歌@ すご~い なんてスバラし~んでしょうll
どぴゅ@ みんなホントにオナ鑑だけなの? 相互オナって約束だったけど、いざとなる…
ボーボー侍@ 脇コキって言うねんな(爆笑) 前に言うてた奥さんな、オレのズボン脱が…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: