チビ僕

2006.06.24
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カテゴリ: 小説
心って誰かと一緒にいるだけで、誰かのことを思うだけで、いろいろ変化することが出来るんだ。

そうゆうのを心の持ちようっていうのかな?




―――化け猫―――




そこにはひとりの化け猫がいました。
化け猫・・・なのでひとりではなく1匹という方が普通かもしれませんが、そこにいた化け猫は1匹ではなく、ひとり。

ひとりの化け猫は、茶色いまだら模様の嘘でも美しいとは言い難い硬そうな毛を小さく靡かせてよそよそしく辺りをキョロキョロと見回しています。


テト テト テト


化け猫の足音など、誰ひとりとして聞く者はいない。
化け猫本人さえも、自分の足音を聞こうともしなかったし、思いもしませんでした。

身を潜めるようにゆっくりと、重そうに、小さな手と足を動かします。

それはどこか、強く我慢している―――寂しい背中に見えました。






また夜が来て、いつものように夜が来て、太陽が化け猫の存在を消そうとしました。
そう化け猫は思いました。
夜になると自分の目が頼りです。
化け猫は、ようは化け猫なので夜は強いはず、何も心配はいりません。
でも心配いらないと、大丈夫は違う。
化け猫は夜でも心配はいらないけど、けして大丈夫ではありませんでした。
でも、それを知っているのは化け猫だけ。
世界が化け猫の存在を消そうとしました。
そう、化け猫は思いました。



気がつくと朝でした。


だけど化け猫は見ようともせずに、またトボトボと歩き出します。


トテ トテ トテ トテ



化け猫の足音は誰の耳に届くこともなく、悲しく消えてゆきました。



 *




猫にもなれない。

自分は、いったい何なんだろう。

物心ついた時は、猫だった。
4本足で歩き、他の野良猫と一緒に人間に餌をもらったり、ゴミ箱を漁ったりして、昼間は屋根の上で日向ぼっこをしたりして。
普通の猫だったはずだった。
いつ人間に化けられるようになったんだっけ?


体が急に熱くなり全身になんともいえない力を注ぐ、そして気づいたら2本立ちで生活する人間の姿になれる。
最初はなれなかったその姿も次第になれていき、衣類を纏いアクセサリーをつけるのがとても楽しくなった。

人間の言葉は物心ついた時から、猫の姿の時にも聞き取る事が出来た。
それは他の猫にも出来ることなのかわからない。
ただ私にはそれが出来たのだ。


化け猫は、猫としての自分と人としての自分と、どちらが本当の自分なのか考えました。
でも考えても考えても、答えは浮かばず、むしろ考えれば考えるほど、空回りするばかり。

自分はいつか死ぬとき、猫なのか、あるいは人なのか。



私は化け猫だと知った時、猫じゃないと言われた時、その時から人として生きようと思ったんだ。
あのときのことはあまりよく覚えていないけど、周りと違うというだけであんな仕打ちをされなければいけない理由がわからない。
今まで仲良くしてくれた野良猫仲間達も私を無視し、冷たい目で見ていた。

その時私は、この短い人生を人として生きてみようと思ったんだ。
例え化け猫は化け猫でしかないと、わかっていても。
なんで人間として生きたいなどと思ったのだろう?
今となってはあまり良く覚えていない。
ただ餌を与えてくれるおばあちゃんの顔は、いつだって優しかったし温かく見えたんだ。


いつか死ぬのだろう。

あと何年、生きれるのだろう。
私は死ぬ時、人でいられるのだろうか。



あの人は、幸せでいられるのだろうか。







~中編に続く~












 * * *


やっと書き終わった!!(やっと載せることが出来ました。)
25日に中編、26日に後編を載せます。
前編はまだ物語のほんの一部なので、ぜひぜひ続きを読んでやってください。





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最終更新日  2006.06.25 02:01:30
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