「魔の山」も「風立ちぬ」いづれも面白そうですね。ただサナトリウムと関連する名作と言えば、昭和に屹立する不滅の孤高、青春、思索の小説福永武彦の「草の花」でしょう。
学生時代数多の小説を読んだが「草の花」ほど心に刻まれた小説はなかった。主人公汐見茂思はサナトリウムで従容として死のステージへと向かうが、汐見茂思ほど孤独と愛を究極のギリギリまで己に問い続けた人はなかっただろう。

悩んでも悩まなくても時は過ぎ行く。愛する者は須らく去っていく。自由気儘に生きられれば最上の人生だろう。されど人は思索せずにいられない。孤独と愛を超えんがために。どこにも人生の正解等はない。或るのはサナトリウムの死へのラストステージのみか。サナトリウムと聞けば「草の花」を思い出さずにはいられない。
ただ「草の花」を読破するには青春の研ぎ澄まされた感性と一定の知力を要するかもしれない。
(2016年12月14日 09時55分01秒)

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2016年12月13日
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一生のうちに読むことのできる本は限られている。だから、読書はできるだけ「名作」として評価の確立しているものを読むようにしている。もちろん「名作」といっても感動するものもあれば、なんでこれが「名作」と思うものもあるのだが…。
今回読み終わった本は「魔の山」。スイスの国際サナトリウムを舞台にした長編小説である。
国際という名にはじず、登場人物の国籍は多彩であり、主人公のドイツ青年とその従兄、ロシア夫人、主人公の考え方に影響を与えるイタリア人と東欧生まれのユダヤ人、それになぜか「大人物」とされるオランダ人の富豪、ついでにわき役ながら中国人までいる。小説のかなりの部分は、イタリア人とユダヤ人の論争なのだが、実はこの論争はさっぱりわけがわからない。これは翻訳のせいではもちろんなく、この時代のヨーロッパ人の精神世界がわかりにくいということがあるのかもしれない。この二人の論争を無意味なもののようにしてしまう「大人物」のオランダ人になると、いったいなにを考えているのか…。
こうした論争部分はちょっと読むのが苦痛であり、これで読むのをやめる人もいるのかもしれないが、それ以外の部分は非常に面白い。雪の中での遭難の危機や交霊術の実験など、それ自体が一つの中編小説のような趣もある。そしてまた、これは21世紀の今日読むからこその興味なのだが、主人公が初めてレントゲン写真をみたときの驚きやレコードではじめて音楽を聴けるようになった感動などがいきいきと描写されている。
サナトリウムといっても、贅を尽くした食事と娯楽の機会が入所者には提供されており、闘病の場というよりも、この世の喧騒を離れた別世界のようだ。登場人物の何人かは病気により、あるいは病気を背景とした自殺により、死んでゆくのだが、それでも、あまり悲惨さはなく、主人公ハンスはあっというまに、サナトリウムの生活に順応してしまう。そして7年後には再び下界に下りていくのだが、これは闘病生活の終了というよりも「ひきこもりからの脱出」のようにもみえる。具体的には、第一次大戦の勃発により志願兵として戦線に赴くのだが、このあたりの主人公の心理は全く描かれていない。
小説として面白いのだが、肝心な部分で理解できないところが多く、読後感としてはちょっと不満がのこる。
*
この国際サナトリウムを舞台にした小説に影響をうけ、高原のサナトリウムを舞台してかかれた小説が「風立ちぬ」である。続けてこれも読んだが、こちらの方はあっという間に読み終えた。男女の愛がテーマで「魔の山」よりはずっとわかりやすい。ただ、主人公は、ヒロインの闘病と並行して、それをテーマに小説を書いており、その結末はわからないようなことを語っている。それがなんとなくヒロインに対して残酷な行為のように思えるのは小生だけだろうか。





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最終更新日  2016年12月13日 20時25分03秒
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Re:「魔の山」&「風立ちぬ」(12/13)  
maki5417  さん
映画 魔の山 (1981)を見たことがありますが、つまらなかったです。
まあ、原作とは別物でしょうが。 (2016年12月13日 20時41分10秒)

Re:「魔の山」&「風立ちぬ」(12/13)  
・曙光 さん

Re[1]:「魔の山」&「風立ちぬ」(12/13)  
七詩  さん
maki5417さん
「魔の山」はちょっとストーリーが映画向きではないですね。主人公の憧れであるロシア人女性は遺伝子のいたずらで一重まぶたの緑の目という設定で、これなんか東洋人の女優がカラーコンタクトを付ければ不思議な雰囲気がでるかもしれません。西欧人からみればロシア人というのは半ばアジア人というイメージなのでしょうか。
そして主人公が愛してやまない歌曲「菩提樹」…これなんか戦場のラストシーンでも使われていました。
映像でみたいのはこのくらいで、全体には「映像で見る小説」ではなく、「読む小説」のように思います。
(2016年12月14日 10時09分59秒)

Re[1]:「魔の山」&「風立ちぬ」(12/13)  
七詩  さん
・曙光さん
青春の読書もよいのですが、いまさら青春には戻れません。
この年代になると周囲にも病む人がおり、職場にも大きな手術を受け、検査結果を待っているという人がいます。だからこそ、生とか死の問題を真正面からとらえた小説を読みたいと思います。
「草の花」もいずれ読んでみます。
かつては猛威をふるった結核ですが、これにより、鋭い目で死にむきあった若い人も多い。様々な文学が生まれたゆえんでしょう。 (2016年12月14日 10時16分41秒)

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