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2026年07月23日
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カテゴリ: 読んだ本


ある世代は記憶しているかもしれないが、その昔、旺文社文庫というのがあった。若草色のつやつやした表紙も感じよく、ほどよく挿絵の入っているのも気に入っていた。それも外国文学では原典にあった挿絵というので、イメージ想像の助けには十分であった。中学生の頃は学校の図書室でよくこの旺文社文庫を借りて読んだ。日本や外国の古典的作品が多かったのだが、今はそうした古典と言うのはあまり読まれないのだろうか。書店でもあまり見かけないし、世界文学全集などというものも発行されなくなって久しい。
中学生の頃はよくそうした世界文学なるものを読んでいたのだが、だいたいは自分が読んだというために読んでいたように思う。要するにあまり物語を理解していたわけでも、面白いとおもっていたわけもなかったように思う。
「父と子」はその旺文社文庫で中学三年の夏休みに読んだ。十九世紀のロシアを舞台に世代の対立という永遠のテーマを描いたと小説というのに惹かれ、期末テストが終わったらさっそく借りてワクワクしながら読んだ。読んでいるときは、やはりあまり面白いとも思わず、読み終わったときはただ読み終わったというだけの感想しかなかった。ただ、小説のディテールはところどころ妙に印象に残っていたので、いつかは読み返したいと思っていたのだが、まさかこんなに間があくとは…。ただ読みながら中学三年の夏の記憶がよみがえってくるので読書とは不思議なものだ。
今にしてみると、なぜ、面白くないと思ったのかがわかる。主人公は「女性及び女性美の愛好家」とあるが、それってただの面食いだろうし、ヒロインに惹かれたのも美人というのが大きな要素だ。今読んでみると、この真意は唯物的で科学しか信じない主人公が詩的なもの、芸術的なものを否定している故だろう。また、最初に読んだときには登場人物の行動がわかりにくかった。ロシア文学には必ず高い教養と自尊心故に社会になじめない余計者という人物がでてくるという。日本で言うと高等遊民が近く、登場人物の一人であるパーヴェルがそれにあたるのだが、他の登場人物も何をしているのかよくわからない。主な登場人物はそれぞれに領地を持っており、それだけで暮らせるので、社交を中心に物語が進行するので、中学生の頃はわかりにくかったのだろう。特に仕事をするわけでもなく、友人の家に長逗留、美女の誉れ高い未亡人の家に長逗留で、その間の恋愛や反目で物語が進む。
世代の対立がテーマと言うが、これは19世紀ロシアにおける特殊事情がある。西欧では着々と近代文明が発展している。ロシアでは貴族という地主階級と農民との完全格差社会になっている。貴族は農地管理以外は社交が生活の中心であるのに対し、農民は無知なままにおかれている。まさに生産手段を所有しているか否かで階級が決まる社会であり、貴族と農民は別の民族といわれるくらいに酷い断絶があった。そうした現実の中から、西欧主義、虚無主義など様々な思想が若い世代に生まれてくる。そういう意味での世代対立である。
主人公のバザーロフは医師の卵で自然科学者であり、何物も尊敬しない虚無主義者として描かれている。自然科学をつきつめていけば、身分制的権威も宗教的権威も根拠をなくす。19世紀のロシアはそうした社会変革につながる思想やそれによる動きが徐々に醸成されていった時期なのだろうし、そういう時代の若者とその父世代の対立を描いた小説として興味深い。





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最終更新日  2026年07月23日 22時25分04秒 コメントを書く


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