ユーカリの木陰で里の行

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2012.03.11
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被災された方々、震災で大切な方や家を失った方々には、
どれほど長い一年だったことだろう。

あの日、次々と流れてくる恐ろしいニュースに驚愕し、打ちひしがれていた。
こんな恐ろしい災害に遭ってしまったら、
どうやって生きのび、再び歩き始めることができるのだろうか?
言葉もなく、
とにかく何か自分にもできることをと義援金を送ったり、祈っていた。

一年後の今日、NHKワールド・プレミアの衛星放送で、


5つの被災地から生中継で、被災された方々が、
同日同時刻に、被災された場所と同じ場所で、
被災した経験を語ってくれる、という番組だった。

ビルの屋上の煙突に登り、津波からは逃れたものの、
そのまま一人孤立していたという、陸前高田市の男性。

大火災に包囲されていた、気仙沼市の3家族。

南三陸の病院に取り残されていた患者と医師。

仙台市の列車の中で一夜を過ごした乗客たち。

屋根に乗って、海の中を3日間漂流し続けた、南相馬市の男性。

壮絶な体験から生きのびた方々だった。

屋根の上でたった一人、海の上を漂流し続けた男性は、

とにかく生きて、妻のことを知人や親せきに伝えなくては。
そう考え、濡れてない毛布と布団が流されてきたときには、
妻が与えてくれたのだ、と感謝して、
夜中に青い光を見たときには、光に生きる勇気をもらい、
淋しくて堪らないときには、歌を歌って自らを元気づけたのだという。


一月前にした娘のお宮参りのことを考えていたそうだ。
妻と娘のために。
そして市役所に避難し亡くなってしまっただろう両親と弟のぶんも
生きのびなくては、と。

気仙沼市のご家族は、津波の後に襲ってきた大火災に怯えながらも、
家ごと流されてきた家族を助け出したのだという。
その家のおばあさんは、ベランダの手摺りにつかまっていた男の子に気づき、
「おばちゃんが、なんとかして助けてあげるからね!」と、
ほんとうに、2家族を着物の帯を使って助け出したのである。

その家のご主人が語っていらした。
 助け上げた人たちから、自分たちも力をもらった。
 3日間がんばれたのは、3家族がいたから。
 小さな子たちの存在があったから。
 救った人たちに、救われた、と。

電車に取り残された、60人ほどの乗客たちは、
水や食料を誰からともなく分かち合って、そこで一夜を過ごしたのだそうだ。
キャップ一杯の水を回し飲みして、食べ物を一口ずつ齧り合う。
いつ水や食料が供給されるかもわからない状況にあって、
限られたそれらを分かち合える精神。
なんて力強く、やさしいんだろう。

乗客たちは外の、津波で生き残った人たちも救出し、
老人の方は車両から外したベンチに寝かせ、
若い人たちが1時間おきにマッサージをしたという。

「うちの子はいませんかーっ!?」と
水の中をかき分け息子を探しにきたという女性が、
電車に一人で乗っていた男の子と再会を果たしたときには、
車両から拍手が湧き上がり、乗客たちももらい泣きをしたそうだ。
それまで、家族へ遺書を書き、心が半ば麻痺していたのが、
そのとき力をもらった、次は自分も皆のために何かをしようと思ったと、
一人の乗客の方が語っていらした。

医療器具も津波で流され、患者に寄り添うしかなかったという、
病院に取り残された医師のお話も心に迫った。
一人なら絶望してしまったような極限の状況に置かれ、
自分よりも弱っている患者さんたちが目の前にいることで、
努めて平然と振舞おうとしていた、
自らの崩れそうな心を保つことができたのだ、と話してらした。
目の前に支えるべき人たちがいることで、自分の命も活かされている、と。

極限のなかにあって、支え合い、生きのびた方々。
彼らの伝える言葉は真摯で、思いやりや愛、英知に溢れていた。

一年前、私は、
こんなひどい災害に遭われた方々にどんな言葉をかけることができるのだろう、
などと思ったけれども、一年が経った今、
被災された方々の言葉に心を打たれ、励まされ、教えられていた。

「伝えてゆきたい」とおっしゃった。
私も、聞きたい。
その一言一言に耳を傾けたいと思う。
もっともっと、いつまでも語り継がれてゆくことを願う。

その日、子どもたちが、
震災で亡くなられた方々や今も苦しんでおられる方々を思い、
黙想をしようと言ってきた。
前日に、週一度通う日本人学校で先生からもお話を聞いたのだそうだ。
学校では東日本大震災一周年追悼式を行い、また募金を募るという。
その幼稚園に通う息子も、お小遣いから寄付をするのだと、お金を集めていた。

被災されお亡くなりになられた方々のご冥福と、
今も苦しんでおられる方々の平安と、復興を祈って、
子どもたちと一緒に掌を合わせ、黙想した。

震災の爪痕は深く、復興までの道のりは長いと言われる。
たとえ細くとも長く、自らのできることをして応援し続けてゆこうと思う。

復興を祈り、チベット仏教の古典、長い経典を唱え終えた朝、
雨上がりの空に、虹がかかっていた。
思わず写真に収めようとカメラを取りに行きレンズを構え、ハッと気づく。
鮮やかだった虹のかけ橋の上にぼんやりともう1本、
そこには2本の虹が。

その虹に希望を託して、また祈った。








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Last updated  2012.03.23 09:09:04 コメントを書く


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