PR
Calendar
Freepage List
Keyword Search
体験して、わかること――自閉症「体験」記
「自閉症」について、どんなことを知っていますか。
名前は聞いたことがあっても、くわしくは知らない方も多いかもしれません。
自閉症は、先天的な脳の機能障害です。
一般に、社会的なコミュニケーションが苦手、
特定のものへのこだわりが強いなどの特徴があります。
たとえば、
(1)冗談や比喩の理解が苦手で、
言葉を額面通り受け取ってしまう
(2)変化が苦手で、
物の配置や予定が急に変わるとパニックをおこす
(3)指さしなどの社会的な合図、
ジェスチャーの理解が苦手――などです。
ただ、苦手なことや知的な発達度は人によって違い、
この「一口には語れない」ことにより、
自閉症への理解がすすんでいないという面があります。
実際に自閉症の世界を「体験」することを理解のきっかけにしてもらいたいと、
昨年12月、東京・新宿でワークショップが開かれました。
会場は、廃校になった小学校を改装したイベントスペースの一室。
記者自身も参加し、
「謎解き」に挑戦しながら自閉症について学んできました。
その様子をご紹介します。
「では、くじをひいてくださーい」。
参加者12人が3チームに分かれ、
くじで先生役1人と子ども役3人に割り振られます。
舞台設定は「未来の学校」。
そこに迷い込んだ3人の子どもが、
先生の助けを借りながら、
謎を解いて元の世界に戻るというストーリーです。
迷い込んだ3人は、まずいつもと違う感覚に戸惑います。
いろんな音が聞こえる、目が見えにくくなり、
指先の感覚も鈍くなって、細かい作業をするのが難しい――。
そんななかで、
先生の助けを借りながら問題に挑戦していきます。
「いつもと違う」感覚になるために、
子ども役の人は、耳に集音機、目には視界を狭くするゴーグル、
そして2枚重ねの手袋を身につけます。
自閉症の人の持つ感覚はさまざまで、個人差があります。
たとえば聴覚ひとつをとっても、
敏感な人は大きな音やざわざわした場所が苦手で、
反対に感覚が鈍い人は名前を呼ばれても気づかなかったりします。
下図参照。

参加者がつけた三つの器具は、
音に敏感・視野が狭い・触覚がにぶい、
という状況をそれぞれ体験するためのものです。
集音機が周りの小さな音も拾うため、
どんなに一生懸命聞いても、先生が何を言っているのかは、
雑音にまぎれて聞き取れません。
「あっちに行こう」と言われても、
指す方向が見えず、どうしていいか分かりません。
答えを書こうとペンを取っても、
指先がすべってなかなかふたを取ることができませんでした。
そうした感覚上の困難に加えて、子ども役の人には、さらに役柄が振られます。
引いたくじにそれぞれの子どもの特性が書いてあり、参加者はそれを演じます。
自分から質問するのが苦手なケイタくん、
長い文章を耳で聞いて理解することが難しいエディちゃん、
全体の指示で動くのが苦手なヒトミちゃん
――それぞれ、自閉症の子の「困難」の一つをキャラクターにしてあります。
一方、子どもを導く役の先生も、手探りです。
最初は子どもの特性は知らされないので、
どの子が何が苦手かは自分で考えていくしかありません。
その上で、その子に合った接し方で問題の解答に導いていきます。
先生役だった参加者は
「一人に気を取られると他の子に目を配れないことがあり、
難しかった。
でも、紙に書いたり、
『今はこの問題を解こう』と具体的に指示したり、
その子にあった接し方をすればちゃんと反応がある。
関わり方を工夫することが大事だと感じた」。
エディちゃん役だった参加者は
「長い言葉で話されると分からないという設定だったので、
意思疎通をするのが難しかった」。
ケイタくん役の参加者は
「こちらから質問できないという状況だったので、
会話をひとつできるだけでもとても重要だと感じた」
と語りました。
参加者には教育関係者も多くいました。
ある小学校教諭は、
「特別支援学級に行っている子でなくても、気になる子はいる。
個別に声をかけるなどの支援が重要なんだなと改めて思った。
学んだ声かけを生かしたい」
と話しました。
2015年5月に開始したワークショップは、
これまで16回開催され、のべ233人が参加しました。
ワークショップを主催する自閉症児支援NPO法人「ADDS」の熊仁美代表は、
「キャラクターは、自閉症の子どものうち、
通常学級に進んだ子をイメージした。
授業になんとかついてはいけるけど、
誤解されやすい子たちです」
と説明します。
ワークショップでは、先生役は、
少しずつ明かされる生徒の特徴に合わせて対応を考えます。
エディちゃんは、耳からの情報の処理が苦手。
「文字や絵など、目に見える形にして示せば長い文章も理解できる」
とのヒントを受け、先生役はメモを手に説明をしていました。
適切な対応があるか否かで、
子どもの可能性は大きく左右されます。
キャラクターの特性が書かれたカード。「エディちゃん」は聴覚情報の理解が苦手
「ヒトミちゃんとケイタくんの難しさが全く違うように、
接する時に『この子の難しさは何かな』と、
一人ひとりが違うという前提で考えてほしい」。
熊さんは「一人ひとりが違う」という多様性は、
自閉症を理解する際の壁ではなく、鍵であると考えています。
自閉症の人に対しては、視覚化した方が分かりやすい、
はっきり指示をした方が分かりやすいといったある程度のルールはありますが、
「それはどの人も同じ。
自閉症支援に特別というよりは
コミュニケーションのルールとしてあるべきだし、
一人ひとりが
感じ方も学び方も違うということを意識して関わるだけでも、
可能性はひろがっていく」
と話します。
「自閉症の人は、全体をざっくり把握するのは苦手だが、
細かいことに気づくことは得意。
たとえば、絵本を見て、どんな場面かは説明できなくても
、その絵の中で一人ひとりが何をしているかはすごくよく覚えている。
ワークショップのストーリーには
『自閉症の人たちの強み』というポジティブなメッセージもこめてある」
米疾病予防管理局によると、
アスペルガー症候群などを含む
「自閉症スペクトラム障害」の米国の子どもは68人に1人。
教育現場で直接自閉症の子どもたちと関わっている人以外でも、
できることは多いと熊さんは話します。
自閉症の人には知的に障害がない人もいます。
ただ、その中には「上司の指示や友達の冗談をうまく理解できず、
疎外感を感じたり、
率直にものを言いすぎて
社会に受け入れられなかったりといった難しさを抱えている人もいる」
と熊さんは話します。
「『勉強も仕事もできるのだから、ただ怠けてるんだ、ただ性格が悪いんだ』
と思われ、障害を理解されないつらさがある」。
コミュニケーションがうまくいかないことは目に見えにくいため、
障害のためと理解してもらえず、誤解をうけてしまうといいます。
だからこそ、周囲の理解が広がることが重要だと熊さんは考えます。
「電車の中や街中で会っていることもあると思う。
職場、友達など、つきあっている人の中にいるかもしれない。
心当たりがある場合は、
その人を理解することを楽しむというように関われるといい」
心理学を学ぶ大学生だった2004年から
自閉症児の支援にかかわってきた熊さんは、
「ほんとにいろんな子がいるんですよー」
と笑顔で話してくれました。
「理解を楽しむ」ことができるのは、
一人ひとりとちゃんと向き合っているから。
ワークショップはその第一歩を踏み出せる場だと感じました。
ワークショップは毎月開催されています(参加費2500円)。
申し込みや問い合わせは ADDS へ。
[朝日デジタル
http://digital.asahi.com/special/kotoba/jinken/SDI201601126856.html
]
「理解を楽しむ」ことができるのは、
一人ひとりとちゃんと向き合っているから。
本当にちゃんと向き合うことの大切さを思い知らされますね。 🌠
人一倍疲れやすい発達障害の親が、子育て… 2026.04.25 コメント(4)
重度の知的障害者を10年間も「労働搾取」… 2026.04.23 コメント(8)
発達障害の子を育てるということ 番組に… 2026.04.22 コメント(8)