■清原某が覚せい剤を所持使用したカドで逮捕されました。この一件について様々な議論が起き、上下関係の厳しさや精神野球の強制など、学生野球の弊害だと指摘するものまで存在することを知り、ボクは明治時代の末期に突然勃発した『野球害毒論』を思い出しました。
野球害毒論とは、明治44年、東京朝日新聞は当時人気が加熱気味だった野球に対し、ネガティブキャンペーンを展開し、「野球と其害毒」を全22回に亘り連載したもの。その内容は、野球という競技は学生の本分を忘れ精神を堕落させ、また、右手ばかりを使うため右手が肥大する病に侵されるなどなど。まったく支離滅裂な話ではありますが、いま清原某をめぐる議論の一部は、それと同じことに思えて仕方ありません。そういった理屈を明治時代に朝日が綴った『野球と其の害毒』(すなわち野球害毒論)風に書くと、こんな感じになるでしょうか。
■「学生野球の弊害は第一に学生の大切な時間を浪費せしめる。第二に疲労の結果勉強を怠る。第三には上下の規律厳しく、先輩に対し否と言えず悪の道に入る契機となる。大切な時間を浪費し身体を疲労衰弱せしめるまでに至っている。野球選手が学科のできぬのはこの理由からである。そして学科不良になった後は、危険区域へ陥入しそうな恐れあり。否、むしろ堕落の道へ近づいてゆく。さらに学生の身分に過ぎぬのに一般学生とは隔離優遇され、一部の大人が甲子園を頂点とした大会を開催し、木戸銭を取り興行物的することはいかなる弁疏(べんそ。弁解と同義)を以てするも遊戯そのもの評価を第一に押し下げ、かつ遊戯者をいかにも賎劣に見えしむることは十目十指の定評の御座候。また、野球といふ競技は常に強い球を受けるために、その振動が腕より脳に伝わり学生の脳を刺激して、脳の作用を遅鈍ならしめ異状を呈しせるものである」。
■と、まぁ、最後の一文は余計ですが(笑)。野球しか知らない選手を、俗に「野球バカ」と表現するムキもありますが、バカになれるくらい野球に徹することは決して弊害ばかりではないはず。将来にわたっての財産にもなるはずです、きっと。清原某事件の原因を探るのであれば、それは学生野球に求めるのではなく、プロ入り後の「清原某個人と環境の関わり合い」にこそ求めるべきでしょう。
特に「環境」が重要です。ここには有象無象の組織や人物が蠢いているようで、その毒牙にかかれば抜け出すことが並大抵でない様子です。・・・と、ここまで書いて、先般の「野球賭博」に関わった巨人3選手を思い出しました。彼らも「環境」との絡みの中で人生の道を踏み外したのだと想像しますが、清原某の周辺にはもっともっと大きな黒い渦があるように思えます。とすれば、一見完了したはずの「野球賭博」はほんとに全面解決したのでしょうか。そんな疑問が湧いてきます。清原云々よりもそちらのほうが重要と思います。
<関連記事>
1)『野球害毒論』とは、
http://plaza.rakuten.co.jp/amayakyuunikki/diary/201104030000/
http://plaza.rakuten.co.jp/amayakyuunikki/diary/201011200002/
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