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2017.01.11
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カテゴリ: 探訪 [再録]

                                                                    [探訪時期:2014年1月、2009年11月]

それでは、写真撮影OKの範囲で、本堂細見を始めましょう。

本堂の唐破風造の向拝の屋根の鬼板のこのマークは寺紋でしょうか。
三室戸寺のホームページには説明がないようです。

兎毛通 (うのけとうし) の部分は瑞鳥が彫刻されています。たぶん鳳凰でしょうね。

私は建物、特に向拝の木鼻や蟇股などの彫刻を眺めるのが好きです。








獅子は共に龍の方向に首を捻ってにらんでいます。

虹梁の上の大瓶束 (だいへいつか) の両側にも草花の飾りが巧みになされています。




貫頭の両端の木鼻に施された象の頭の彫刻はお寺によって多様な意匠がありおもしろいものです。


向拝所、本堂の前面には青銅製でしょうか、大きな香炉が置かれています。
正面には鬼板と同じ紋が光っています。

「咸神之力 巍巍如是」
 咸の意味には「1)みな。ことごとく。2)あつめる。おわる。3)ゆきわたる。あまねし」その他の意味があり、巍巍とは高大なさまを意味するそうです。 (『角川 新字源』)
「神の力を咸す。巍巍たること是の如し」(神のちからがゆきわたり、その高大なさまはこのようにすばらしい)と解せばよいのでしょうか。
修験道、神仏習合とみれば、神と仏に隔て無しですね。私の勝手な解釈かもしれません。
香炉の脚の部分の造形がユーモラスです。


(てばさみ) の部分すべてに草花が彫刻されていて華麗です。

垂木にも全面に彫刻が施されていてすごいですね。 (資料1)

本堂に向かって左側(西)の外縁端に、 (びんずる) が置かれています。

ビンドラ・バラダージャ 賓頭盧跋羅堕闍 と音写されて、それがさらに省略されたのですね。 「おびんずるさま」 として親しまれています。「日本では堂の前に置き、これを撫でると除病の功徳があるという俗信がひろまった。なでぼとけ」 (『広辞林』三省堂)

賓頭盧は「優填王の臣であったが出家して阿羅漢果を証して神通に達した。世人に神通を用いて仏に叱られ、西方の土地で教化するように命じられ、南方で衆生を度した。のちインド小乗寺院では上座に置き、中国では食堂にその像を安置する風があり(のち文殊を上座とする)。わが国では堂の前縁に置いて、除病の撫仏 (なでぼとけ) の風が起こったが伝染病媒介のため禁止された」とも別の書に説明があります。 (資料2)
『広辞林』は「釈迦に呵責され、涅槃を許されず、釈迦の入滅後も衆生の救済にあたった。白髪と長眉の姿で示される」と説明しています。

その傍には、 賓頭盧絵馬 が奉納されています。

逆に、右側(東)の端には 朝鮮鐘の龍頭 が置かれています。かつては朝鮮鐘が本堂の一隅にでも吊されて使われていたのでしょうか。
調べてみると、日本に伝わった新羅時代の梵鐘で遺品として現存するのは5例、韓国でも6例だけのようです。福井県敦賀市に国宝と指定された朝鮮鐘があるそうです。 こちらからご覧ください。


本堂正面の外縁上部には、中央にこの 鰐口 が吊り下げられています。参拝の際に綱を揺すって敲くあれです。神社なら大きな鈴が吊されていますね。その左右に様々な奉納額などが掛けられています。いくつかご紹介しましょう。

左の方に 円板の懸仏 、右の方には たぶん貨幣を使って塔をかたどった奉納額
 西国十番三室戸寺のご詠歌を刻した額
他にもいろいろと一面に掛けられています。

本堂の東隣に在る阿弥陀堂

 阿弥陀堂の前面の香炉も福寿講の奉納によるものです。


もともとこの場所に、 親鸞聖人の父、日野有範の墓 があったそうです。 親鸞の娘覚信尼が墓上に阿弥陀堂を建立し、阿弥陀三尊像を安置して祖父の菩提を弔ったのだそうです。
「四十八願寺」 という額が阿弥陀堂に掛けられているのは、日野有範の隠棲していたお寺の額と伝わるからだとか。
四十八願というのは、「大無量寿経」(仏説無量寿経)に出てくる宝蔵菩薩がたてられた四十八願から由来する言葉なのでしょう。

阿弥陀堂の屋根の鬼瓦
 頑丈そうな屋根


2009年11月 この時、本堂内陣の特別拝観がありました。
記憶では、本尊と結ばれた5色の長い布の紐が本堂前まで延ばされていたと記憶します。ご本尊との結縁という意味だったかと。


それでは、阿弥陀堂の東をめぐりましょう。

つづく

参照資料
1)『図説 歴史散歩事典』 井上光貞監修 山川出版社
  用語は掲載図に記載の用語及び説明文を解釈して利用しています。
  私の理解不足、誤解が含まれているかもしれません。
2)『新・佛教辞典 増補』 中村元監修  誠信書房  p440

補遺
ビンドラ・バラダージャ  :ウィキペディア 
阿羅漢  :ウィキペディア
びんずる尊者像
信州善光寺のびんずる尊者
第24回 おびんずるさん 善光寺法話   :「信州善光寺」
興福寺の賓頭盧尊者
上野公園・清水観音堂の賓頭盧尊者
優填王 ←  ウダヤナ  :ウィキペディア 
優填王像   :「龍門石窟」
朝鮮鐘  :ウィキペディア
秋月城跡出土の高麗鐘(県指定)  :「朝倉市」
山王十社本地懸仏  収蔵データベース :「奈良国立博物館」
日野有範(1)  :「コトバンク」 
日野有範  :「歴史上人物 つながりしりとり」
三室戸寺(4) 日野有範卿と三室戸  :「正覚寺住職、松原功人のブログ」 
四十八願  :ウィキペディア

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Last updated  2017.01.12 21:03:14
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