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2017.12.26
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カテゴリ: 探訪 [再録]
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杵築神社の石鳥居から境内を出て、参道を南に歩き、道路を右折して下ツ道に戻ると、南東角が「二階堂地蔵堂」です。


説明板によれば、 この付近にかつては「膳夫寺 (かしわでら) 」があり、そのお堂に裳階が付いていたので二階造りに似ているところから「二階堂」と名づけられたと伝わる のです。この地名が小字名ともなり、 明治になってこの地域が「二階堂」と名づけられる由来となったようです。


「膳夫」という言葉 をどこかで読んだような・・・・・と思っていると、説明板の内容・後半に記されています。 聖徳太子の妃となった膳夫姫に由来するとか 。「初め天香具山の北側に膳夫寺を造営したが、後にこの場所に移建したものという」 (説明板より) 。この寺がいつしか廃寺となり、その後に祀られたのが、現在の二階堂地蔵堂の起源だそうです。

建物の屋根が少し段違いになっています。向かって左側が地蔵堂で、右側が観音堂です。 内部は繋がっています。
正面の格子扉から堂内を拝見できましたので、写真を撮らせていただきました。


左側の 地蔵堂 には、 石造の地蔵菩薩半伽像 が祀られています。 この仏像には天正9年(1581)、念仏結衆十八人の銘があるそうです (説明板、資料1)

右側の 観音堂 には、 三十三観音像 がひな壇状にずらりと並べて祀られています。


説明板が立つ右傍に 様々な石造物がまとめて安置され、中央には様々な石造部材を寄せ集めた石塔が祀られています。


石仏 が彫られているとわかるものと、 五輪塔や宝篋印塔を浮き彫りにした板碑 もあります。同様に、右側にも石仏と五輪塔を彫り込んだ板碑が立っています。

北東角には、隅切りをして多角形にした少しレトロな感じの民家の建物が目に止まりました。
時代的な存在感のある建物です。

再録にあたり、余談を加えます。元のブログにまとめを載せた時、友人からこの建物に似た感じの建物が大阪でも見られると教えてもらったのです。その場所に今年(2017)の9月に行ってきました。

この2つ建物です。どちらもお店が営まれていました。一つは入口が同様に位置しますので、ナルホド!!と感じた次第です。建物って、おもしろいですね。
JR大阪駅から比較的近い場所でした。中崎西1丁目の北西角の交差路のところです。交差路の角地にあり、双方向の見通しからか角切りがされているので、結果的に同じタイプになったという結果でしょうか。東海道本線の西側にある新御堂筋の華やかなショッピング街とは対照的に、高架線路を挟んだ東側の中崎町辺りは、静かで鄙びた雰囲気が漂っていました。大都会の中の東西の商業エリアのコントラストも興味深く感じた次第です。

二階堂地蔵堂の説明板によると、 下ツ道は「中街道」とも呼ばれる ようです。


下ツ道を南下していくと、昔の街道にマッチする風情の屋敷や民家もみかけます。こういう建物に出会うのが街道歩きの楽しみでもあります。歴史としての街道をイメージするのに役立ちます。

県道109号線と交差する手前で通りすがりに見た 地蔵堂

交差点を横断すると、「二階堂小学校」が進行方向左側(東)に見え、その先の東西の道路を隔てた南側に「奈良健康ランド」があります。


この辺りから川が南北に流れていて、川の両側が道路になっています。川の東側の道路を南下します。この川の西方向に見えている高架は 「京奈和道」 です。 この川のところがかつての下ツ道の側溝部分と重なる可能性が高いようです。かつては下ツ道の両側に2m幅の側溝があったということですので 、歴史の連続性を身近に感じます。

さらに進むと、川の中央を境界にして、東側は天理市嘉幡町、西側は川西町下永の最北端の地域に入って行きます。下永は天理市二階堂南菅田町と南北の関係で東西の道路中央線を境として接しています。
余談ですが、地図を見ているとおもしろいことに気づきます。二階堂南菅田町の区域に、「下永北公園」という名称の境界道路に接した公園があるのです。かつての地域と現代の行政区画の元ができたときの線引きでこういう現象が生じたのでしょう。
かつての下永村は初瀬川の両岸にわかれていますが、中世までは平群郡にあり、近世には式下 (しきげ) 郡にあった地域です。現在は上記のとおり川西町に属しています。

この境界の道から三筋目の道路を右折して進むと、辻の南西角に 「教願寺」 が見えます。
地図(Mapion)はこちらをご覧ください。

教願寺の山門
今回このお寺は外観を拝見しただけですが、この山門の細部は見応えがあります。

現在は浄土宗本願寺派のお寺です。
ここは、この後に訪れる 「白米密寺」の附属寺院だったところ だそうです。宝永5年(1708)に転宗したとされています。「当初は村持ちの道場で、宝暦5年(1755)に本尊・寺号が本山から許可された」といいます。当寺には、14世紀前半のものと推定され、 白米密寺から移されたと伝わる石塔残欠 が残されているそうです。 (資料1)


前面控柱の頭貫上部の蟇股です。

四脚門本柱の頭貫の上部全体に大きくダイナミックに龍が透かし彫りされています。


門の屋根を支える大瓶束の両側に菊花の装飾彫刻がしっかりと施され、一方木鼻も深い彫りで像や獅子が造形されています。


門扉の前、両側面には内側に獅子と草花文が彫り込まれています。

向かって左側面の外側は草花文が全体に彫られていて、内側とはまた趣が異なります。

門扉に彫られた意匠です。中央に彫られていうのは、ここの寺紋でしょうか。


山門の左に二階建の建物、 太鼓楼 があります。二階部分に 花頭窓 が見えます。

右の画像に見えるように、獅子口や軒丸瓦にも門扉と同じ紋章で統一されています。
太鼓楼や塀などを含めてまだ新しい感じを受けますが、これは昭和61年(1986)以降、順次修復や改築を重ねてこられた結果のようです。

山門の右側の道路を少し進み、振り返った景色ですが、山門の右奧、ここからは左側に鐘楼があります。

屋根の鬼瓦の造形がおもしろい。
 鐘楼の木鼻も深い彫りで獅子が造形されています。


本堂の建物を横に眺めながら、西方向に歩み、最後の探訪地に向かいます。

 西に進めば、 「大和川」の堤防 に突き当たります。

堤防上の道の上を、「京奈和道」の高架が通っています。 大和川の上流部は「初瀬川」と称されます 。かつては初瀬川の名称が主に使われていたのでしょう。

たとえば、こんな歌が『新古今和歌集』に収録されています。 (資料3)
 すずしさは秋やかへりてはつせ川ふる川の辺の杉の下かげ  有家朝臣 261
 いしばしる初瀬の川のなみ枕はやくも年の暮れになるかな  後徳大寺左大臣 703
 『続後撰集』に
 ちきりきなまたわすれすよはつせかはふるかはのへのふたもとのすき 寂連 898
 はつせかはなかるるみをのせをはやみゐてこすなみのおとそさやけき 読人不知 1019
  『後拾遺集』に
 はつせかははなのみなわのきえかてにはるあらはるるせせのしらなみ 実氏 119

現在は下流域と上流域の管理管轄が国土交通省と奈良県で区分されています。その管理境界地点から下流域が大和川、上流域が初瀬川と呼び名が変わるのです。 (資料4,5)


見えて来るのが 「下永橋」 です。この橋を渡り向かったのは最後の探訪地「白米密寺」です。

つづく

参照資料
1) 「関西史跡見学教室26~奈良・二階堂~」 龍谷大学REC講座
     当日配布の講座資料 作成:龍谷大学非常勤講師・松波宏隆氏
2)​ 教願寺 ​ 
3) 『新訂 新古今和歌集』 佐々木信綱校訂 岩波文庫 
  ​ 国際日本文化研究センター ​ データベース 和歌  
4) ​ 大和川 ​ :ウィキペディア
5) ​ 大和川中流 ​ 初瀬川から大和川へ :「大和川」

【 付記 】 
「遊心六中記」と題しブログを開設していた「eo blog」が2017.3.31で終了しました。
ある日、ある場所を探訪したときの記録です。私の記憶の引き出しを維持したいという目的でこちらに適宜再録を続けています。
再録を兼ねた探訪記等のご紹介です。再読して適宜修正加筆、再編集も加えています。
少しはお役に立つかも・・・・・。他の記録もご一読いただけるとうれしいです。

補遺
式下郡 ​  :ウィキペディア
第1次府県統合後の国郡・府県(1871年12月末) 大和国 / 奈良県
本願寺の紋は下がり藤? 天真寺通信 ​  :「浄土真宗本願寺派天真寺」
藤原有家 ​ :「コトバンク」
後徳大寺実定 ​ :「コトバンク」
寂連 ​ :ウィキペディア
西園寺実氏 ​  :ウィキペディア

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その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)

探訪 [再録] 奈良 二階堂、下永を歩く -1 前栽駅付近・弥勒堂・星塚古墳・下ツ道・杵築神社 へ
探訪 [再録] 奈良 二階堂、下永を歩く -3 八幡神社・白米寺(白米密寺)へ
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Last updated  2017.12.27 20:49:26
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