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2024.01.06
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カテゴリ: 観照

               2020.6.25                   2013.4.27
西本願寺の阿弥陀堂門 。左が堀川通に面した正面。右が境内から撮った景色です。
切妻造で前後に唐破風の付いた四脚門です。この門には前回とは異なる箇所に沢山の龍がいます。


          2018.2.27                    2020.6.25
これは 四脚門の正面・右(北)側の控柱 です。この角柱の下部、礎石のすぐ上には 柱の保護を兼ねた荘厳装飾金具 が取り付けてあります。 ここに龍がいた!





撮れなかった或いは撮らなかった面がありますので、大凡の全体像をイメージしていただければと思います。機会があれば現地でごらんください。


正面・左(南)の控柱             2020.6.25




正面・右(北)側の本柱    2018.2.27


正面・左(南)側の本柱    2018.2.27



境内側・左(北)側の本柱    2020.6.25



境内側・右(南)側の本柱    2020.6.25



境内側・左(北)側の控柱    2020.6.25





龍の様々のダイナミックな姿が各面に造形されています


さて、 龍がなぜこのような姿で表現されるのか についてです。
南方熊楠が「竜とは何ぞ」の一文の中 で、支那つまり中国の龍について要を得た説明だとして 『本草綱目』 から引用している説明文があります。
孫引きになりますがご紹介 します。 (資料1)

<竜形九似あり、頭蛇に似る、角鹿に似る、眼鬼に似る、耳牛に似る、項(ウナジ)蛇に似る、腹蜃に似る(蜃は蛇に似て大きく、角ありて竜状のごとく紅鬣(コウリョウ)腰以下鱗ことごとく逆生す)、鱗鯉に似る、爪鷹に似る、掌虎に似るなり、背八十一鱗あり、九々の陽数を具え、その声銅盤を戞(ウ)つがごとし、口旁に鬚髯あり、頷(アゴ)下に明珠あり、喉下に逆鱗あり、頭上に博山あり、尺水と名づく、尺水なければ天に昇る能わず、気を呵して雲を成す、既に能く水と変ず、また能く火と変じ、その竜火湿を得ればすなはち焔(モ)ゆ、水を得ればすなわち燔(ヤ)く、人火を以てこれを逐えばすなわち息(ヤ)む、竜は卵生にして思抱す>

こんなにも詳細に想像上の動物・龍を具象化しているのには驚きます。
どうしてあのような龍の姿をイメージできるのか、それには根拠があったのですね。
そして、そのバリエーションが、画家や彫刻家の想像力・創作力により、様々に表現され、各所に龍が棲息していることになります。

現在の市販されている辞書が龍をどのように説明しているか
手許にある辞書での説明を列挙してみましょう。コンパクトな辞書か厚みのある大きな辞書かによって、辞書編纂方針と記述のボリュームに対する制約がありますので、様々な説明のバリエーションがあることに気づきます。

1.想像上の動物。水中にすみ、形は大きなトカゲに似て胴体が長く二つの角とひげと四本の足がある。自由に飛行して雲を起こし、雨を降らすという。たつ。りょう。 (資料2)

2.想像上の動物。体は大蛇に似ていて、頭には二本の角があり、口辺に長いひげをもつ。水中または地中にすみ、時に空中を飛行し、雲や雨を起こし、稲妻を放つという。 (資料3)

3.想像上の動物の一つ。竜(タツ)。水中あるいは地中にすみ、空中を飛行し、雲や雨を起こすという。仏教では仏法の守護神とされ、中国では天子になっぞらえる。「りょう」とも。 (資料4)

4.たつ。想像上の動物。巨大な爬虫類の形をしていて、鳳(ホウ)・麟(リン)・亀(キ)とともに四霊の一つ。雲をおこし雨をよぶ。「天竜・登竜門・独眼竜・飛竜」「竜虎・竜神」 (資料5)

5.想像上の動物。体は巨大な蛇に似て鱗(ウロコ)におおわれ、頭には二本の角と耳がある。顔は長く口辺にひげをもつ。平常は海・湖・沼・池などの水中にすみ、時に空にのぼると風雲を起こすとされる。中国ではめでたい動物として天子になぞらえ、インドでは仏法を守護するものと考えられた。たつ。 (資料6)

6.海中または池沼中にすみ、神秘力を有するという想像上の動物。姿は巨大な爬虫類で、胴は蛇に似て剛鱗をもち、四足。角は鹿に、眼は鬼に、耳は牛に似、地上では深淵・海中に潜み、時には自由に空中を飛翔して雲を起し雨をよぶという。インドでは仏法を守護した説話が多く、普通、毒蛇・コブラの形で表現され、竜王はその威力を神格化したもの。我国では竜神といわれる。中国では鱗虫の長とし、麟・鳳・亀と合わせて四瑞とし、天子になぞらえる。また形体により、鱗のあるのを蛟竜(コウリュウ)、翼のあるのを応竜、角のあるのを虬竜(キリュウ)、角のないのを螭(チリリュウ)、天に昇らないのを蟠竜(バンリュウ)などとよんだ。りょう。たつ。 (資料7)

辞書の記述の対比からまた情報がひろがります。辞書を読む面白さがあります。

龍の足の爪の本数については、いずれも言及されていません。祇園祭で懸装品を見ていてあるとき疑問に感じました。爪の本数の意味合いについては、補遺をご覧ください。

門に棲む龍についてはこれくらいにして、手水舎に棲む龍に移ります。

つづく

参照資料
1)『十二支考 (上)』  南方熊楠著  岩波文庫  p144-145
2)『新明解国語辞典 第五版』  三省堂
3)『現代国語例解辞典 第二版』 小学館
4)『学研全訳 古語辞典 改訂第二版』  学研
5)『日本語大辞典』(初版) 講談社
6)『大辞林』 三省堂
7)『広辞苑』(初版) 岩波書店

補遺
爪の数 ​  :「卜深庵」(武者小路千家)
意外と知らない龍(竜)の爪の意味、ほんとうは何本? ​  :「Mitsutomi」
竜の指の数の意味を知りたい。日本と中国で違うのか? ​  :「レファレンス協同データベース」

  ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

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その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)


観照 辰年 時空を跨ぎ龍の棲息地へ -1 まず好みの龍のいるところから へ
観照 辰年 時空を跨ぎ龍の棲息地へ -2 建仁寺から時空を広げて へ
観照 辰年 時空を跨ぎ龍の棲息地へ -3 門に棲む龍 (1) へ





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Last updated  2024.01.06 15:59:51 コメントを書く


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