突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2009.06.21
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 ベベルギアを苦しめていた声明が、ひときわ長く余韻を引いて、ふっ、と途切れた。

 冷たい空気に触れたように、頭の芯が、すっ、と軽くなって、思考が、徐々にはっきりした形をとり始める。
 フードの奥で、アナルケルが、くっ、くっ、と笑った。
 「ご気分はいかがです、ベベルギアさま」
 フードの奥を睨み返して答える。
 「ここはどこだ? 俺に何をした?」
 アナルケルが、大仰に身をのけぞらせた。
 「これは心外な。 なぜわたくしがあなたさまに危害を加えるようなことをいたしましょう。 ・・・お仲間を一度に3人もなくされてお悲しみの深かったためでしょう、火葬が済みますとあなたさまは急にご気分が悪くなられたのです。 そこでひとまずここにお連れしてお休みいただきました。 ここはリュキア神殿の地下です。 邪悪なものは侵入できません。 どうぞご安心なさってその思いよろいを脱ぎ、こちらの薄物にお召し替えなされませ。 ずっと楽におなりですよ」

 「そんなものが着られるか! 俺はこのままでいい。 それよりもお前はさっき、俺は今から“黒衣の宰相”の指揮下に入るのだと言ったな。 ならば今すぐその方に会わせてくれ。 お前の指図を受けるのはまっぴらだ」
 アナルケルが小さく肩をゆらして、部屋の中へと入ってきた。
 「もちろん、宰相さまにはすぐにもお目通りがかないます。 たぶん、あなたさまの今後の身のふり方についても、あのお方は親身になって考えてくださるでしょう」
 アナルケルが後ろ手に戸を閉め、音もなく部屋の中を横切って、寝台の上に、持ってきた衣類を置く。
 「けれど、その前にあなたさまには、ここでしばらく、身を清めるための修行を積んでいただかねばなりません。 その身体にまとわりついた邪気を早急に祓わなければ、宰相さまのお役に立つどころかご自身のお命さえ縮めることになるのですよ。 そして、ここに居られます間は、好むと好まざるとにかかわらず、わたくしの忠告に従っていただかねばなりません。 ほんのわずかの間です。 ご辛抱をお願いいたします」
 腰の剣に手をかけて、ベベルギアはこの、言葉遣いこそ慇懃だがぶしつけな神官を睨みつけた。
 「邪気だかなんだか知らんが、死のうと生きようと俺の命だ、お前の指図は受けぬ、・・・と言ったらどうする?」
 アナルケルが、じろり、とベベルギアの剣に目を落す。 と、今度は、はっきりそれとわかる忍び笑いをもらして、アナルケルは頭を大きく横に振った。
 「あなたにそんなことはできませんよ、ベベルギアさま」
 なまいきな! と叫んで引き抜いた剣は、しかし、重たくて、どうしても振り上げることができなかった。 これが本当に、いつも振り回していたあの、俺の剣か、と目を疑うほど、重いのだ。 ありったけの力を振り絞って、何とか剣を持ち上げる。 するとその重みに、今度は足がふらついてまっすぐ立っていられない。 たちまち噴き出す汗に手がすべる。 ひとまず剣の先を床について、一息入れてまた剣を持ち上げる。 すると剣はさらに重みを増していた。 もう振り上げることはとてもできない。 今度は思い切り勢いをつけて剣を横になぎ払う。 が、なぎ払った剣の重みに身体のほうが振り回され、バランスを失う。 こんなことを数回繰り返した挙句、とうとう大きな音を立てて床に倒れこんだ時には、ベベルギアはもう腕一本動かすこともできないほど疲労困憊していた。
 どうしてこんなに疲れるんだろう、と、息をあえがせながら考える。 酸欠で朦朧とした頭にその答えがぱっと浮かぶ。 そうだ、よろいのせいだ。 よろいが重たくて、動きにくいんだ。 これを脱いだら身軽になる。 よろいを脱いで、素手で、あのなまいきな坊主のフードをひんめくって、鼻っ柱にガツンと一発食らわせてやる! 

 そのときベベルギアの顔を、アナルケルがひょいと覗き込んだ。
 「お手伝い、いたしましょうか?」
 屈辱に顔をゆがめ、ベベルギアは敗北を認めるしかなかった。
 「さっさとよろいの肩紐を緩めろ! ぼんやり見てるな!」
 待っていましたとばかり、アナルケルが器用な指先でするするとよろいの肩紐を緩め始めた。






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最終更新日  2009.06.21 17:00:31
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