突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2011.04.12
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 ダイダロスは、アンタレスのたった一人の理解者だった。


 自分の死が間近に迫っていることを悟ったダイダロスは、病床にアンタレスを呼んで言った。
 「アンタレス、私がおまえに教えてやれることは、もう、すべて教えた。 おまえのために工夫してきた武器も、これ以上はもう私には考えつかない。 あとはおまえが、自分で自分を鍛え、剣の道を究めるのだ」
 痩せ衰えたダイダロスの手を、ぎゅっと握り締め、うなずいた。
 かすかに笑って握り返したダイダロスの手の、その弱々しさに、思わず涙が零れ落ちた。 

 「アンタレス、おまえは強くなった。 もう、どんな大きなバルドーラも、おまえの敵ではないだろう。 しかし、いくら剣技を磨いても、おまえの心はまだ弱く、未熟だ。 たやすく折れて壊れてしまう、脆い心は、独りでは支えきれない。 私がいつまでも支えてやれればいいが、そういうわけにもいかない。 そろそろ別れが近づいているらしい」

 「・・・いやだ!」
 こらえきれなくなって、アンタレスはその場に泣き伏した。


 「アンタレス、心がくじけそうになったときは、私の鍛えた剣を見て、私を思い出せ。 私の魂は、いつもその剣とともにあって、おまえを支え、見守っている。 そのことを決して忘れるな」

 涙をぬぐってうなずいたアンタレスの頭をひと撫でして、ダイダロスが静かに言った。
 「では、もう行け。 もうここに戻ってきてはならない。 今日からおまえは、一人で、おまえの旅をはじめるのだ」

 顔を上げて、アンタレスはじっとダイダロスの顔を見つめた。
 生涯忘れないように、しっかり記憶に刻み付けた。
 ダイダロスも、じっとアンタレスを見つめた。

 それから、アンタレスは立ち上がり、ダイダロスに深く頭を下げた。
 「ダイダロス、ありがとうございました。 あなたの教えは、深くこの胸に刻み込んで、生涯忘れません」
 ダイダロスが微笑み、うなずいた。
 「私も、君に剣を鍛え、教えてやることができて、幸せだった。 君は、私の人生の最後を照らしてくれた、一条のあたたかな光だった」

 アンタレスにとってもまた、ダイダロスは光だった。 

 その光を失ったアンタレスは、生きる希望を見失った。
 いつまでも立ち直ることができなかった。
 心がくじけそうになったら剣を見て私を思い出せ、とダイダロスは言ったが、剣を見るとダイダロスを思い出してよけい悲しくなった。
 アンタレスは、ダイダロスの剣を荷物の奥深くにしまいこみ、酒におぼれるようになった。
 悲しみから逃げるために、夜も昼も、泥酔していたかった。



 暗闇の向こうで、誰かがアンタレスを呼んでいた。
 ――― アンタレス、起きて。 目を覚まして。
 声のほうに目を凝らしても、真っ暗で何も見えない。
 また、声が呼んだ。
 ――― アンタレス、こっちに帰ってきて。

 いやだ、そっちへは行きたくない、と思った。

 前方に、光が見えてきた。
 清らかな光の向こうに、やさしい、なつかしい、ダイダロスの姿が見えた。
 ダイダロス!  あなたのそばへ行く!
 アンタレスは、両手をいっぱいに伸ばし、ダイダロスに向かって跳躍した。

 が、あと少しというところで、届かなかった。
 ダイダロスの姿が、ふっ、と消え、アンタレスは再び暗闇の中に落ちていった。





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最終更新日  2011.04.12 20:13:20
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