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千菊丸2151さんコメント新着
「紗羅さま! ご加護に感謝いたします!」
が、ミケが歓喜に打ち震えながら手を合わせる、その間も待たず、透き通るような白光は、あっという間に闇に飲み込まれ、再び闇に閉ざされた空間を、また新たな、青緑色の巨大な光が、こちらに向かって猛スピードで近づいてきた。
恐ろしい轟音。
地を揺るがす振動。
大きなトラックだ。
これは、あの魔道で車にひき殺された猫の、恐怖の記憶だろうか。
きたね、新手の悪霊め! もう惑わされはしないよ!
金色の瞳をかっと見開いて、ミケは迫り来るトラックの真正面に四肢を踏ん張り、耳を聾する轟音に逆らって、あらん限りの声を張り上げた。
「お前は車にひき殺されたのか? よくお聞き。 それは事故だよ。 お前をひき殺した人間だって、なにもお前が憎くてやったんじゃないだろう、間違いだったんだよ。 お前をほったらかして走り去ってしまった? そりゃあ、人間は忙しい生き物だからねえ、お前を助ける時間はなかったのかもしれないね。 だけどその人間だってきっと、お前を置き去りにしたことを悔やまなかったはずはないと思うんだよ。 そのことでうんと苦しんだかもしれない。 間違いではすまされない、と言いたいお前の気持ちもわからなくはないけど、そうやって恨みに凝り固まって、わが身を悪霊にまで墜とすなんて、いっそう不幸なことじゃないかね。 お前がそんなふうにだれかれ構わず恨んで呪いをかけたところで、お前を死に至らしめた当の人間には、何も伝わりゃしないんだよ」
心をこめて説得する間にも、迫り来るトラックの轟音は耳を劈き、ミケの声も空しくかき消されてしまう。
巨大なトラックが牙をむいてミケに迫る。
