「極秘捜査」
警察・自衛隊の「対オウム事件ファイル」
麻生幾 1997/1 文藝春秋
図書館の一般開架式本棚に並んでい資料は、決して一級資料とはいえない。誰でもが簡単に見れる資料に「極秘情報」など、あるわけはない、と思うのが常識だろう。だから、この本がでた1997年1月とは言え、そうそう簡単に「極秘」情報が一般に出回ることはなかったはずだ。だから、この本に書かれていることはたぶん事実だとしても、ここに書かれなかった「極秘」の事実は山ほどあるに違いない。
それは、当然ながら捜査側にもあるだろうし、その捜査対象になった麻原集団側にもあったにちがいない。だから、これをもって決定版であるとか、全てを知りえたなんてことにはならない。しかしながら、あまり一般的に語られることがなかったK察やJ隊の活動というものが、大体のところどういうものか、ということは、この本を読み進めていくと、おぼろげながらわかってくる。著者は一番最後「エピローグ」にこう述べて閉じている。
史上最悪の犯罪集団に対して、わが国の治安機関は、血を出し、傷つきながらも何とか勝利を収めることが出来た。だが、シャンバラ帝国という”悪の帝国”を築こうとしたカルト集団たちの野望は、警察、自衛隊の必死の攻防で、実はギリギリのところで防がれていたという事実は、忘れてはいけない。そこには、決して表には出ないが、警察や自衛隊の、名もなき男たちの全てを犠牲にした血と汗にまみれた姿があったことも是非、記録に留めておきたい。
p379
K察やJ隊が「活躍」したことは間違いないし、麻原集団の「野望」が彼らの活躍により、規制され解除される方向に向かったことは確かなことだ。だから、サリン事件の被害者や、麻原集団への出家者を抱える家族などの視点とともに、K察やJ隊の視点というものも忘れてはいけないだろう。ただ、「史上最悪の犯罪集団」とか、「悪の帝国」「カルト集団の野望」と、断定的に言ってしまうところに、著者の視点がある。このくらいの強い思い込みがなければ、このような一冊をまとめることは不可能だろう。
警察庁警備局のカルト・チームを指揮していた公安第一課長のT(実名)は、対オウム捜査極秘オペレーションのコードネーム(暗号)を密かに命名していた。
「○S--マルエス」
オウム真理教の”真理教”の頭文字「S」を取ったに過ぎないが、この瞬間から警備局が作成した「執務資料」から初めて、コードネーム「○S」が使われることになった。
p53
なるほど、意外と簡単な暗号化だ。
<√5---ルートファイブ>
中学2~3年の数学の時間に暗記させられる、√5の答え(2.2360679)フジサンロクニオームナク、をもじったものだった。コードネームの存在も、厳重な緘口令が敷かれた。オウム突入作戦は指揮官意外にはまったく知らされなかった。ただ、誰がこのコードネームを最初に付けたのかに関しては、どの警視庁のスタッフに聞いても、いまだハッキリと答えられる人はいない。
p90
なんともジョークともユーモアともつかないエピソードである。ひとつひとつの局面において、検証したり新たな推理をすることを今はしないが、もし、将来的に事件を取り巻く全体を再検証しようとするなら、こちらの資料からの突き合せも必要となるだろう。
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