「火星からのメッセージ」
ジム・ベル /寺門和夫 2007/05 ランダムハウス講談社 単行本 203p 原書 POSTCARDS FROM MARS 2006
★★★☆☆
スピリットとオポチュニティ、双子の火星探査機が、火星から送ってきた映像を厳選してできた写真集。火星は、外惑星だから、地球より太陽から離れている。だから太陽も地球でみるより2/3の大きさになる。「グセフ・クレーターに沈む太陽」p98~p99は、もっとも人気のある写真の一つであるという。地球から見た場合、見かけの太陽と月はほぼ同じ大きさだ。その大きさが2/3になるということ自体、そこが火星であることを思い出させる。
著者のジム・ベルはカール・セイガンの学生だった人。
AI人工知能の進化によって、人間の身体とは何かが問われている。たとえば、手足を失った人が、まだそこにあたかもまだ手足があるように感じる感性は、それは身体かどうか。あるいは、視力が弱った老人が、杖によって、大地の感触を確かめるとするなら、その時の杖は、身体の拡大かどうか。
もしこの時の杖が身体の拡大と考えることができるとするなら、地球人は、みずからの「杖」を火星まで伸ばすことによって、自らの「身体」を火星まで送り込んだ、と同じような意義を持ったことになるかもしれない。
初めてみるありありとした火星の大地の写真をみながら、地球の40%ほどの地球の重力の中で、ああ、なんだか、ここでも暮らせるかもなぁ、と思う。だけど、写真の選択の結果でもあるのだろうが、なんとも淡々とした平原は、ある意味、非常に単調だ。
地球の風景では、このようなところは砂漠としか呼ばれない。緑もなければ、生命の痕跡さえない。日本の風景に比べたら、岩と砂漠と渓谷のようなネイティブ・アメリカンの大地も、火星の風景に比べたら、起伏にとんだ豊かな大地だ。
火星まで足を伸ばした、地球人の「スピリット」と「オポチュニティ」。その偉大な進歩を確かめつつ、それに比較しても、なんとこの地球の素晴らしいことよと、痛感することになる一冊だ。
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