モラルに体当たり記

モラルに体当たり記

May 1, 2005
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私の未完の連載のひとつ、「カルチャラル夜話」。


つーか、まだ一話も書いてないので、未完というのも憚られるが(苦笑)。

さて、記念すべき第一回として、私が心より愛する遠藤周作から始めよう。

遠藤周作と近しかった作家安岡章太郎がこう言っている。
「遠藤は作家ではない。思想家だ」

私もその意見に賛成である。

彼には芥川や志賀直哉のような天賦の筆致力があるわけではない。
ストーリー展開に唐突と感じる部分が多いことも否めない。



彼は、モチーフとして聖書を使うことや、歴史的背景(例えば切支丹迫害の歴史)を
暗喩した表現・設定をよく行っている。
いわゆる【暗黙知】の範囲が他の小説より大きいのだ。
このことが、彼の作品を馴染みにくくしている一因であろう。

しかし彼は、小説作品としての分り易さや完成度よりも、
「テーマの端的な伝達」という方を取ったのである。

ここに彼が思想家だと言われるゆえんがある。

彼にとっては、「思想先にありき」であって、
文章はその思想を伝えるための道具であったのであろう。

彼自身も筆致力を鍛えるため、よく他の作家の文章を勉強していたらしい。
小説家としての名声を確立した後も、照らうことなく【小説の作法を勉強している】


彼の永遠のテーマは、
【人生における苦しみと愛との関係】であろう。

【なぜ人は苦しむのか。
神というものがあるなら、なぜ神は人に苦しみを与えたのか。
苦しみは何のためにあるのか。


という、宗教の原点のような問いだ。

そのひとつの答えが、【苦しみがあるから人は愛を知る】ということ。

もう一回言います。【苦しみがあるから人は愛を知る】ですよ。
うわああああすげえええええええええ。

愛を知る、とはすなわち、人の苦しみに自分の苦しみを重ねあわせ、
思い遣ることができるようになる、ということ。

同時に、自分がいかに周りの人たちに愛されてきたか、
生かされてきたかを知るということ。

そして、たぶん、苦しみを通じてはじめて、人は人を求めるんじゃないでしょうか。
周作も書いてますけど、人間は利己愛というのがあって、他人はぜんぶ、
自分のためにServeするものなんですね。
こどものころの自己愛が全ての状態(全能体とかいうんだっけ?
愛されるのが当然と思っている無敵の状態ね)。

でも、苦しみがあって初めて、人は自らのを世界の中心におくことをやめるというか、
自分を客観視できるようになるんじゃないかなあ。

愛全開になって、口調変わっちゃってますけど、
あのね、このすごさはね、私のマックス・ウェーバーへの愛とかとはぜんぜん違うの。

なんつーか感動じゃないんですね。
もっと根源的な、それこそ哲学的な、魂に触れるような。
がつん!とじゃなくて、じわじわと。

本当に苦しいときに、苦しくて仕方ないときに、一回作品を読んでみてください。
いや、今、ほんとに苦しかったときのことを思い出してみて。
で、この言葉を反芻してみて。
ほら、涙出てきませんか?

作品読むのが面倒なら4ページくらいのエッセイもあるから、もう、それ送るから言って!!
著作権ガン無視だけど、きっと周作なら許してくれるよ!!

私は無敵のスーパーマリオだった自分の大学時代を、そしてまだ無敵の人々を、
今でも懐かしく羨ましく郷愁をもって見つめるけれど、
今の自分のほうが好きだと言える理由のひとつが、たぶん、この言葉に表されている事柄だ。

あー、周作読みたくなってきたので、とりあえずいったん筆を下ろしますが。

でも、苦しいときには周作!ですよ。絶対。
今苦しい人がいたらほんとおすすめ。

明日は遠藤周作【2】無力者としてのキリスト、に続く(たぶん)。





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Last updated  May 9, 2005 03:27:28 AM
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