モラルに体当たり記

モラルに体当たり記

September 16, 2006
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カテゴリ: 書評
さて、この夏の100冊でよくお世話になっているのが、
中公クラシックスシリーズ。
中公クラシックスは、中央公論が出している、新訳の古典シリーズである。

私は、その装丁のシンプルな美しさと新書サイズという手軽さから、
このシリーズを好んで買うのだけれど
(だってこれが揃って棚に並んでいると本棚が美しいのだ)、

その見た目の美しさ以上に、
私が中公クラシックスシリーズを愛する理由がある。

それは、各本の最初に収められている寄稿である。


それらの寄稿は、多分、各本の著者の研究者によって
書かれているのだと思う。
(つまり、レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』なら、
レヴィ=ストロース研究者が寄稿を寄せている。たぶん。)

もちろん、寄稿者は、寄稿するくらいだから、
当然その本を推薦しているわけだけど、
これが、そこんじょそこらの書評や推薦文とは全く違う。

なんというか、寄稿者がその本や著者に抱いている愛に打たれる。

各寄稿者がその本やその著者に、ある種心酔に近いくらいの、
ものすごい愛を抱いているのがわかるのだ。
(いやまあ、その本やその著者の研究者になるくらいだから、


もちろん、各寄稿者は大体は研究者だから、
その筆致は努めて冷静で分析的だ。
決して、大声で「素晴らしい!」なんて言い立てていない。

けれど、その抑制的な文面の行間から、
「・・・でも、ほんとに最高だから読んで!!!」


そして、彼らの気持ちが伝染して私も、
うわああ、読みたーーーい!!という気持ちになるのである。

まあ実際、本文で挫折することもよくあるのだけれど・・・(涙)。
でも、そんなときも、この序文を読み返すと、
「やっぱり頑張って続きを読もう!」という気持ちになる。
それだけの力が、このシリーズの寄稿序文にはある。

この序文を読むだけでも、このシリーズを買う意味があると思うほどだ。

感動とは『感じて動く』と書くけれど、
愛の力は、確実に、人に伝わり、人を動かす。
しかも、強制ではなく、本当に気持ちのいい自発的な方向で。

研究者だったら、学問と研究対象に愛を抱くこと。
ビジネスマンだったら、自分の商品と自分の顧客に愛を抱くこと。

あんまりふだん意識しないけれど、
そういうことって、実はすごく大事なんじゃないかなあ。

その「愛があるかないか」が、
最終的なところで論理や損得も超えて、
「伝わるか伝わらないか」につながる気がする。

このことは、日常の研究過程や業務過程では忘れがちなので、
きちんと心にとどめておきたい。

ちなみに今日読んだのは、折口信夫『古代研究』の寄稿(by岡野弘彦)です。
ちょっと涙出ちゃったくらい、これもいい寄稿でした。

というわけで、みなさまに中公クラシックスお勧めです。





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Last updated  September 27, 2006 03:20:50 AM
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