「ビリーヴ(Believe)」は、1995年発表のアルバム『メイド・イン・イングランド(Made in England)』の冒頭を飾る曲である。1970年代前半に人気絶頂を迎えたエルトンは、1980年代後半から90年にかけて、喉の手術、友人や知人のエイズによる死去、さらには薬物依存とアルコール依存、過食症とトラブルを抱えていた。91年のアルバム『ザ・ワン』で何とか復活を果たすが、この流れの中で、気合の入ったアルバムとして出てきたのが『メイド・イン・イングランド』だった。このアルバムでエルトンは原点に立ち返り、ちょうど70年代前半の作品群(『ホンキー・シャトー』、『ピアニストを撃つな!』、『黄昏のレンガ路』)と同じ方法でこのアルバム制作を進めていったという。
前回の「悲しみのバラード(Sorry Seems To Be The Hardest Word)」では、愛の絶望が主題となっていた。その時から20年近く経ち、上で述べたような経緯を乗り越えた46、47歳のエルトンは、今度はこの「ビリーヴ」では、“僕は愛を信じる”、“僕たちにはそれしかない”と堂々と歌う。この曲での“愛”というのは、いわば人類の、人としての“愛”である。