音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2025年06月06日
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テーマ: Jazz(2003)
カテゴリ: ジャズ
1960年代当時、アメリカ人が思い描いたラテンとは?


 ジャズ・トランペット奏者、チェット・ベイカー(Chet Baker)の一風変わった盤で、1966年に録音・リリースされたのが、この『ハッツ・オフ(Hats Off)』という作品。ティフアナ・ブラスよろしく“マリアッチ・ブラス”を名義にし、チェット自身はフリューゲルホルンで参加しているが、実はこのマリアッチ・ブラスはこれに先立ってアルバム(チェット・ベイカー&ザ・マリアッチ・ブラス名義の『ア・テイスト・オブ・テキーラ』)を録音しており、実質的には2作目ということになる(さらにこの後にもマリアッチ・ブラスのアルバム作品は続いて出されている)。なお、マリアッチ・ブラスにはティフアナ・ブラスと重複するメンバーも含まれていたらしいとのこと。

 さて、マリアッチといえば、メキシコの伝統民謡なわけだけれど、その明るい雰囲気を取り込んで大衆受けをというのが、この盤の狙いだったようだ。そんなせいか、チェットの作品としては非正統派扱いされ、あまり着目されないものとなってしまっている。けれども、こうした“疑似ラテン”というか、ラテン音楽への憧れのようなものを含んだ演奏と作品は、アメリカン・ミュージックに確かな足跡を残した1ページということを考えると、無視できるものではないだろう。実際、この作品の収録曲を見ても、とくに伝統音楽マリアッチに根差したという色合いのものではない。しかしながら、演奏は“マリアッチ・ブラス”なのだというところが本盤のミソという風になっている。

 収録された楽曲のいくつかを簡単に見ておきたい。1.「ハピネス・イズ」はブラスによるラテン風の明るいノリをといった雰囲気で、オープニングに相応しいナンバー。3.「バン・バン」は、ちょうどこの頃にリリースされたシェールのシングル・ヒット曲だが、潔いほど派手なマリアッチ風アレンジに仕上がっている。4.「フェニックス・ラヴ・テーマ」は、あまりマリアッチ風という感じはしないものの、元はイタリアのシンガー、ジノ・パオリのナンバー(元のタイトルは「センツァ・フィーネ」)。

 8.「スパニッシュ・ハーレム」は1960年のベン・E・キングのナンバーで、もはや“スパニッシュ”と“メキシカン”の区別もよくわからなくなっているが、要はこれが当時の“ラテン風”と思えばそれでよしなのだろう。やたらにラテン風が強調された演奏の9.「チキータ・バナナ」は、文字通り元々はチキータ・バナナの宣伝ソングとして作られたもので、これもまたラテン風味という意味ではいかにもな感じだったのだろう。

 とまあ、このような感じで、21世紀の現在の観点から真剣にラテン音楽とは、マリアッチとは、と問いかけてはいけない。むしろ往時の雰囲気の中でのラテン的なものが“マリアッチ”というキーワードの下で披露されている。そんな中で奏でられるチェット・ベイカーのフリューゲルホルンを聴くというのもまたオツではないかと思ってみたりもする。


[収録曲]

1. Happiness Is
2. Sure Gonna Miss Her

4. The Phoenix Love Theme (Senza Fine)
5. These Boots Are Made for Walkin'
6. On the Street Where You Live
7. Armen's Theme
8. Spanish Harlem
9. Chiquita Banana
10. When the Day Is All Done (Foy O)
11. You Baby
12. It's Too Late


[パーソネル、録音]

Chet Baker (flh), Tony Terran (tp), the Mariachi Brass





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Last updated  2025年06月06日 17時14分58秒
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