メタボ&ダイエット研究所リーンバルク実験室
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先日、お伝えしたベアレン醸造所での死亡事故。非常にショックな出来事だ。まずは、佐々木ブルワーのご冥福をお祈りしたい。また、ご家族のご心痛を察すると共に、十分な補償がされるコトを望みたい。ベアレン醸造所は、製造販売を中止している。死亡した社員・休業中の社員への保障、銀行・取引先への支払い、などは待ってくれない。営業再開を目指すとあるが、事故ではなく、過失となった場合、どうなるか。それでは、今回の事件の影響について考えてみよう。事態は一醸造所の悲劇に留まらない可能性がある。未だ、詳しい事故の状況、原因は発表されていない。いくつかの未確認の情報を列記してみる。・タンクはドイツ製の中古品(十年以上前に製造、かなり古いとの情報もアリ)・ケグ詰めの後に加圧バルブを閉め忘れた(手順通りに作業終了との報道もアリ)・減圧弁が稼動していたか不明(減圧弁がついていなかったとの情報もアリ)・タンクは二十以上あった(全てが同一時期の同一品であるかは不明)・安全確認のための定期点検はしていなかった事故の再発を防ぐためにも、速やかな情報公開を望みたいトコロだ。まず、今回の事件での一番の影響は、「ビール醸造所は危険な場所」という認識が発生したコトだ。一部では、爆発という言葉も使われ、「二十センチの壁」をタンクが「突き破って」数メートル飛んだ、と報道されている。しかも、タンクは二十以上あり、たまたま他タンプにブツかるコトがなかったが、もし他のタンクも破裂していたら、より大惨事となっていたのは、簡単に予想がつく。今までは、醸造設備を置くコトに、慣用だった大家さんも、考えが変わるかもしれない。ビアレストランなどに併設された醸造所のタンクを見て、怖いと思うお客が出るかもしれない。つまり、ビール醸造施設の設置が、様々な意味で難しくなり、更には法的規制が設けられる可能性もある。それでなくても許可がでにくい、ビール・発泡酒醸造の免許の交付も、設置場所に難アリ、という判定が出るようになるかもしれない。また、設備への安全点検の定期的な実施は、確実に求められる。死亡事故の後だから、点検への目は厳しい。社員が、独自のマニュアルで点検では、甘いと言われてしまう。第三者(タンク製造メーカーなど)へ点検の外部発注になるだろう。経費がかかる上、点検の内容によっては、醸造を行いながらできないモノもあるだろう。そうなれば、定期点検に醸造スケジュールが縛られるコトとなり、点検が近いからビール造りを始められない、という事態も起こりうる。それが当り前なのだが、小ブルワリーには、大打撃だろう。点検の最も大きな問題点は、中古の設備だ。メーカーが中古品の点検を安全保障ができないからと拒否、また外国メーカーで点検のしようがない場合、使用できなくなる可能性がある。これは、自主的にだ。中古品でメーカーは点検しない・できない=本当に事故を起さないのか、という近隣住民の目に耐えて、中古設備を使い続けるコトができるかどうかだ。経験則から言って、こういった事故は、残念ながら最初で最後とはなりえない。それどころか、今までは取り上げられなかった些細なミスや事故が、報道されたり、近所で囁かれるようになるだろう。これまでの信頼関係があるから、まだ暖かな目で見てくれるハズだ。しかし、次に何処かで何かあった時、近隣住民に「あそこも危ない」と噂されるかどうかの要因は、点検に胸をはれる状況にあるかが、大きく影響するだろう。中古品を自分で点検している設備で、バルブが古くなって少量ビールが漏れ出した。これが、笑い話で済んだ時代は、もう終わってしまったのだ。また報道で「中古品」と連呼されたコトで、小ブルワリーへの風評被害が出ないか心配だ。醸造施設が「中古品」なのは、めずらしいコトではない。しかし、一般に「中古品」のイメージはよくない。しかも口に入れるモノが、「中古品」で造られている、というのが報道されるのは、イメージ・ダウンだ。これによって、「百年前の製法」や「古くからの造り方そのまま」という売り文句は使いにくくなった。安全管理も古いように連想してしまう。そして、最も心配しているのが、風評で済まなかった時だ。悪い意味で、ビール醸造施設がマスコミに注目され、(ないと信じたいが)材料の偽装、劣悪な設備などが発覚して報道されたら?好意的に取り上げていたマスコミが一転、パッシングに走る、などというのは、何度もその例を見てお分かりだろう。今まで、「地ビール」は、ビールを美味しく感じさせる魔法の言葉として持ち上げられてきた。イメージを転落させてしまう事態が続いたら、その落差は、元が高ければ高いほど、大きい。回復には、長い時間がかかる。いや、その前に、小ブルワリーは滅びてしまうかもしれない。まずは、事故の原因の解明と公開。会社として、安全管理責任者の処罰。更には、加入ブルワリーに強制力のある新団体を設立して、加入の呼びかけ。そして、加入ブルワリーの緊急点検の実施状況の公開。更に、法的規制が入る前に、安全点検の自主規制の制定と実施ブルワリーの公表による安全宣言。次の事故が起こる前に、先手を打たないといけない。お悔やみのコメント一つwebサイトに乗せられない団体に、期待していない。素人から小銭巻き上げて、妙な称号を与えている場合ではないのだ。「地ビール」という誰も舵を取らない泥舟に乗って、みんなで沈むか、新しい船を用意するか。できれば、その船は、外国ビールのモノマネではない、日本に合ったビールへ向けて進むといいのだけど・・・今回の事件が、古い「地ビール」の終焉となり、新たな気運が立ち上がってほしいと考える。ビール情報リスト
2008/01/24
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