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本書には書き下ろし評論「安倍政権の危険すぎる手口」ほか、雑誌などに発表された文章が収められている。全篇、行間から、激しい怒りが伝わってくる。東日本大震災と民主党政権瓦解(がかい)後、急速に右旋回するこの国の政財官に対する怒り。そして、「いのち」が粗末にされていくことへの危機感。本紙連載コラム「本音のコラム」等をまとめた『悪政と闘う』とも通じる。
だが、著者は怒るだけではない。冷静に情況(じょうきょう)を観察し、したたかに明日を見すえる。たとえば8月30日の国会前集会を、新聞各社がどのように伝えたかの比較。どれだけの人が抗議のために集まったのか、ひとつの事実を伝えるのにこんなにも違いがあるとは。驚き、呆(あき)れる。 右旋回は官邸が突出し、財と官がそれを支えるが、マスメディアもまた、多くは取り込まれ、官邸の広報装置と化している のだ。
憲法は揉欄(じゅうりん)され、原発は一基、また一基と再稼働する。では著者たちは敗北し続けるのか。そうではない。著者たちもまた、進化を続けるからだ。たとえば次のような一文。「わたしはこの四年間、脱原発集会とデモに参加して、全国を歩いてきた。わたしたちは、原発反対を(さようなら原発)と組み替え、デモをパレードといい換え、戦争反対を(戦争させない)と口語に翻訳した。 硬直した慣用句と集会・デモの形式は、ひとびとの心を捉えない、とようやく気づいた からである」
気づき、反省し、改める者は、次に勝利する。 政財官の右旋回によって、わたしは、わたしがわたしであることを立脚点に、、ものごとを考え、行動するようになった のだ。著者をオールド左翼などと嗤(わら)う者は、現実によって手ひどいしっぺ返しを食うだろう。
(評者永江朗=フリーライター)
鎌田慧著「戦争はさせない」(岩波書店・1944円)
かまた・さとし 1938年生まれ。ルポライター。著書『原発列島を行く』など。
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