フリーページ
(皆川剛)
「大学を休講にして活動に没頭した世代と異なり、現代の若者の社会運動は日常の延長にある。彼らは『一つの場所に10万人が集まった』など、活動に数の象徴性を持たせる必要をあまり感じていない」と富永氏は指摘する。
1986年生まれの富永氏は、85~95年生まれの男女34人への聞き取りを5年間重ねた。年長世代との意識の乖離を痛感したのは、若者が他者との差異に敏感で、価値観の押しつけに対して強い抵抗を感じている点だった。
社会運動を「革命」と形容して特別視する安保闘争世代の大人たち が、運動に参加する若者たちの意図を深読みし、「非日常の活動の新たな担い手」として称揚するほど、デモに特別な意味を込めていない。そうした姿勢が若者に共通して見られたという。
国会前から姿を消した後も、実は若者たちは単位取得やアルバイトの時間をやりくりしながら、関心のある運動に参加している。セクハラを告発する「#MeToo運動」や高度プロフェッショナル制度などの労働問題、性的少数者の権利獲得・・・。それぞれの生活実感に根差した草の根の運動を志向している。
その背景には、 経済成長の行き詰まりと価値の多様化 がある。「今は同じ階層や学歴、性別であるというだけで単一のキャリアを送れるとは誰も考えない。同じ大学を卒業しても、就活に失敗したり奨学金の返済に追われたりする学生もいるのです」。 一つの世代が政治観や社会観を共有し、集合的なアイデンティティーを形成する時代が過ぎた ことを、富永氏は教育の現場で実感している。
年長者と若者世代とのすれ違いが如実に表れるのが、政権批判の態度という。安保関連法、共謀罪法、モリカケ問題など、政府・与党の姿勢に疑問符が付く事態が続く。だが、 諸問題に「反安倍(晋三首相)」という大きな串を通し、問答無用で「悪」と見なす年長世代の姿勢 を、若者はイデオロギーの強制だと嫌う。
大学の授業アンケートでも、「あの先生は安保法を『戦争法』だと講義した。授業で偏った考えを押しつけてほしくない」「原発って何が悪いんですかと先生に尋ねたら、怒られた」など、学生が教員の言動を思想の「押しつけ」と捉える構図が見て取れる。
そうした若者の社会運動のモデルとは何か。一つは インターネットによる議論の喚起 だ。「保育園落ちた 日本死ね」との投稿は、国の待機児童対策を促した。車いすの男性がタラップを自力で上らされたバニラ・エアの問題も、企業を動かした。いずれもSNSの拡散が現実を変えた。
富永氏自身も最近、「大きなデモを伴わずとも社会にインパクトを残す運動は可能。路上での活動に過度にこだわる態度が、既に年長者的なのではないか」と考えるようになってきたという。
とみなが・きょうこ 北海道大経済学部卒。東京大大学院人文社会系研究科博士課程修了。 2015年から立命館大産業社会学部准教授。著書に、博士論文を基にした「社会運動のサブカルチャー化」(せりか書房)や「社会運動と若者」(ナカニシヤ出版)がある。
「女系天皇誕生封じる」 海外、日本社会… 2026年08月05日
11宮家が離れたわけ(4日の日記) 2026年08月04日
養子案、安倍氏源流に急浮上 「女系」高… 2026年08月03日
PR
キーワードサーチ
コメント新着