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主人公の古山裕一は作家の水野伸平(モデルは火野葦平)や洋画家の中井潤一(モデルは向井潤吉)とともに、インパール作戦が進行中の激戦地ビルマに慰問(史実では報道班員としての従軍取材)に来ている。朝ドラは戦時をたびたび舞台にしてきたものの、戦場をここまで真正面から描いたことは今までなかったんじゃないだろうか。
作曲家の古関裕而が朝ドラの主人公に選ばれたのはオリンピックイヤーを意識してのことだったのだろう。ところが東京オリンピック・パラリンピックは延期になり、朝ドラも休止になって、 9月に再開してみたら別の意味で今の時代にぴったりな内容になってしまった。 裕一は多数の軍歌を作りながら、自分は戦争に協力しているのではないかと悩んでいる。
いつから国策に巻きこまれてしまったのか、彼自身も視聴者もはっきりとはわからない。他人事では全然ないからね。日本学術会議の任命拒否問題は「あそこが分岐点だったのかも」となりかねない事態といえる。
権力者は芸術も宗教も学問も国策の道具にしたがる。秦の始皇帝の焚書坑儒も、徳川時代の蛮社の獄も、戦前の日本の思想弾圧も、国策に逆らうとこうなるという見本だった。今日の古山裕一は明日の私たちかもしれない。
(文芸評論家)
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