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読者の方がこれらの文書を読めば、「NATOを東方に拡大しない、ロシア封じ込め政策を実行しない」という約束は、当時の米政府高官だけでなく、英仏独3政府の大統領・首相・外相レベルの高官も、ロシア側に伝えていたことが理解できる。しかも閣僚レベルの高官だけでなく、アメリカ国務省の局長レベル・部長レベルの中堅官僚まで、この約束をロシアの外務官僚に伝えていたのである。最近の米政府の「あの約束は、たった一回だけだった」とか、「ベーカー国務長官の思い付きにすぎない」とか、「米政府側には、そんな約束をしたという記録は何も残っていない」などという言い逃れは、すべて嘘(真っ赤な嘘!)なのである。
約束を守らない米政府は、2008年以降、「ウクライナとグルジアをNATOの加盟国にする」と公言し始めた。ロシア人がアメリカに対する不信感と敵愾心を強め、パラノイア的な対米恐怖感を抱くようになったのは当然の帰結であった。
◆「経済自由化」というロシア国民資産の大窃盗
安全保障政策に関してロシアを裏切った米政府は、「ロシア国民資産の大窃盗」という(我々日本人にとって)信じ難い犯罪まで実行した。クリントン政権は1993年1月、「ロシアが所有する巨大な自然資源を民営化させる。この民営化プロセスを、米政府と米金融業者がコントロールする。この民営化によってアメリカが利益を獲る」という大胆なプランを企画し、冷酷に実行したのである。
この「ロシア資産民営化」プランを最初に発案したのは、ハーバード大学の経済学者とウォールストリートの投資銀行・ヘッジファンド業者であった。彼らは「ロシア国有資産を急速に民営化させれば、アメリカの投資家と金融業者は大儲けできる」と気付いたのである。クリントン政権のルーピン財務長官(投資銀行ゴールドマン・サックスの前会長)とサマーズ財務副長官(ハーバード大・経済学教授)は、この「急速な民営化」を米政府のロシア政策の最優先課題とした。そして、ウォールストリートから大量の政治資金を受け取っていたクリントンは、エリツィン大統領に、「ロシアがIMFと西側諸国から経済援助を得たかったら、アメリカが作成したロシア経済民営化プランに賛成せよ。もし賛成しないのなら、我々はロシアに経済援助を与えない」と申し渡したのである。(当時アメリカ東部に住んでいたソルジェニツィンは、エリツィン政権のコズィレフ外相に「アメリカの民営化プランを採用すると、ロシア人はアメリカの奴隷になってしまう。こんなプランを受け入れてはならない」と忠告した。しかしコズィレフはすでにアメリカの金融業者に取り込まれており、ソルジェニツィンのアドバイスを無視した。)
クリントン政権の対露経済政策に関して、カーター大統領の安全保障補佐官を務めたブレジンスキーは、著書『Second Chance』(2007)において、 「ロシア経済に群がったアメリカの”経済コンサルタント”たちは、ロシアの自称”改革派”と共謀して、一擢千金のロシア資産民営化プランを強行させた。この腐敗した”経済改革”によって、ロシア国民の巨大な資産が窃盗された。この行為のため、米政府が提唱していた”ロシアの新しい民主主義”というスローガンは、悪趣味なジョークとしか見なされなくなった」 と述べている。クリントン政権時、モスクワの米大使館に勤務していた国務省官僚のドン・ジェンセンも、「米政府が”ロシア経済の民主化・民営化”と称する犯罪的な政策を支持し続けたため、多くのロシア国民は、アメリカのことを”国有資産窃盗の共犯者”と見なすようになった」と回想している。
当時、モスクワに勤務していたアメリカの財務省・国務省・CIAのキャリア官僚たちは、ワシントンの米政府に、 「ロシアの経済改革は大失敗である。エリツィン政権は腐敗したオリガーキー(=急速な国有資産の民営化によって、たった数年間で巨万の富を獲得した金融犯罪者たち)によって支配されている。このような犯罪を止めさせるため、西側諸国とIMFはロシアに対する経済援助を即座に停止すべきである」 という内容の報告書を繰り返し送った。しかし クリントン政権の財務長官・国務長官・中央銀行総裁(グリーンスパン)は、これらの報告をすべて握り潰したのである。 米露イスラエル3国の金融業者がロシアにおいて濡れ手で粟の荒稼ぎをしていた7年間、クリントン政権は巨大な犯罪行為を容認し続けた。
このクリントン政権による犯罪容認行為に関して、1999年9月21日、CIAのロシア政策・最高責任者であったフリッツ・エアマース(Fritz Ermarth)が、非常に重要な議会証言をしている。(エアマースは、レーガン政権の安全保障会議のロシア政策主任であった。彼は次のブッシュ政権からクリントン政権にかけて、National Intelligence Councilの議長として、米政府で最も権威あるnational inteligence estimateという情報分析書の内容を決定していた。つまり彼は、アメリカの16の情報機関に所属する数万人の情報分析官のトップであった。)
エアマースは米露の金融業者による巨大なロシア国有資産の窃盗に関して、以下のように証言している(この証言は現在でも、c-span.orgという公共放送のインターネット・サイトで視ることができます):
「現在のロシア経済は泥沼状態である。”民主主義的な資本主義”と称される経済において、政府公認の経済犯罪が横行している。 ”ロシアの民主主義”とは偽物の民主主義であり、”ロシアの資本主義゛は虚妄の資本主義である。これは、ロシア国富の単なる窃盗行為にすぎない。 ロシア政府の”経済改革”とは、最初から犯罪者たちによる富の収奪行為であった。しかもエリツィン政権の作り出した超インフレによって、大部分のロシア国民の貯蓄は破壊されてしまった。現在のロシア国民は、資本主義体制を憎悪している。
(つづく)
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