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戦後最大の方針転換なのに、閣議決定で勝手に進んでいくのはおかしい。国民投票をやってもいいぐらいの事案だと思っています。
でも、自分の周りで同じ世代と話していると、自分には関係ないという人が多い気がします。防衛費を拡大して、もし戦争になったらという話をすると、「そうなったら海外に行く」というんですね。
いまの若い世代は、SNSでグローバルにつながっているので、 上の世代と比べると国家の境界線が薄れているように感じます。 「最悪の事態になれば逃げればいい」と思っているから、自国の政治にあまり関心を持たない。
その背後には、国家の意思決定や政治に対する不信があります。今のシルバー民主主義では、若い世代はマイノリティーです。投票しても無駄だというあきらめがある。
私の周囲の人は、政党よりも政策の中身を冷静に見ています。 選択的夫婦別姓や同性婚は支持するし、平和であってほしいけれど、「左」とは違うという感じ ですね。そういう人の受け皿になる政党がない。「投票する先がない」という声はよく聞きます。
防衛費のための増税に反発が強いのは、そもそも政府の税金の使い方に信頼がないからでしょう。増税は、必要があるものに対して痛みを分かち合うという話ですけど、シルバー民主主義の中で冷遇されていると感じている若い世代には、不公平感を強めるようにしかみえません。
問題なのは、経済成長への努力が不十分なことです。GDP(国内総生産)比2%の防衛費は外国では常識だと言われますが、日本はこの30年間、経済成長していないじゃないですか。世界で勝てる新しい産業が生まれているのか。安心して子供を育てられる環境になるのか。そういう長期的な兆しが見えないのに、防衛費を増税で増やすと言われても、負担をさらに背負わされる気分です。
今の若い世代は、過去の実績や常識にとらわれず、今後の日本の姿をゼロベースから話し合える場を欲しているんだと思います。2050年の望ましい社会像を描いて、未来逆算的に、いまどんな政策をとるべきかを考える。いま防衛費をGDPの2%にすることが、そういう社会の実現に本当に役立つのか、 人口が減っていく中で巨額の防衛費を維持できるかを、考えたほうがいいと思います。
防衛費の議論の前に、外交努力も足りないと感じます。唯一の戦争被爆国なのに、平和外交のリーダーシップを取れていない。今年の広島サミットで岸田文雄首相は、防衛費拡大のアピールではなく、日本の平和主義のビジョンをしっかり訴えてほしいですね。
(聞き手 シニアエディター・尾沢智史)
<いしやま・あんじゅ> 1989年生まれ。ミレニアル世代の官民シンクタンク、パブリック・ミーツ・イノベーション代表理事。
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