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白井さんと私の答えはほとんど同じで、国民が無関心なのは、日本の安全保障戦略を決定しているのが日本政府ではなく、米政府だからである。
白井さんは『永続敗戦論』(太田出版)でも『国体論 菊と星条旗』(集英社)でも、日本は主権国家ではないということを指摘してきた。大日本帝国において天皇が占めていた超憲法的地位に今は米国がいる。日本は安全保障もエネルギーも食糧も、基幹的な政策は米国の許諾を得なければ、決定することができない。米国(とりわけ在日米軍)の既得権益を減ずる可能性のある政策は日本では決して実現することがない。
日本は米国の属国なのである。これは白井さんと私か繰り返し指摘してきたことである。
日本の指導者たちは、ある時期から後、徹底的に対米従属することによって米国から「属国の代官」の官位を「冊封」されてきた。かつて中華帝国の「東夷」として「日本国王」の官位を受けていたのと構図は変わらない。東西の方位が入れ替わっただけで、いま日本はアメリカ帝国の西の辺境、西太平洋戦略の前線基地である。
日本の国防政策を決定するのはホワイトハウスであって、永田町ではない。防衛費がGDPの2パーセントというのもアメリカがNATO諸国に対して要求した数字に揃えただけで、岸田政権の発意ではないし、F35を「爆買い」したのもトマホークを購入したのも、米政府の指令に従っただけである。 米国の指令に素直に従っていれば、米国は自民党政権が半永久的に続くことを保証してくれると信じてそうしているのである。 そうであれば、国民が安全保障政策の「大転換」に無関心なのも当然である。それは久しく見慣れた風景に過ぎないからである。
◆「宗主国」に捨てられたら
だが、それ以上に深刻なのは、日本の政治家や官僚が衆知を集めて起案した安全保障政策よりも、ワシントンの「ペスト&フライテスト」な知性が日本政府に代わって起案してくれた安全保障政策の方が合理的かつ現実的ではないかと日本国民の過半がいつのまにか思い始めたことである。長く思考停止を続けているうちに、自国の安全保障は国民が自分の頭で考え、自分の言葉で語るものだという基本的なことを日本人はもう忘れてしまった。
だから、これも白井さんと意見が一致したのだが、日本人が自国の防衛について、ほんとうに真剣になることがあるとしたら、それは米国が日本から手を引く時である。万一、中国が日本列島を攻撃することがあった場合、ミサイルがまず狙うのは米軍基地である。沖縄、横田、横須賀などがまず攻撃目標になる。そこには多数の米国市民が居住している。米国市民が死傷すれば、米国はいやでも米中の全面戦争に踏み切らざるを得ない。それは米国にとっても世界にとっても破局的な未来である。
米国が中国との戦争に巻き込まれるリスクを最小化するためのとりあえず最も確実な手立ては「中国が日本列島を攻撃する時そこに米市民がいない状況」を作ることである。だから、米国は在日米軍基地の縮小・撤収プランをだいぶ前から検討していると思う。私か米国務省の役人なら「日本列島に大型固定基地を置くことのリスクを過小評価すべきではない」というレポートを書いている。
「宗主国」に見捨てられた「属国」はその時どういう安全保障戦略を起案することができるのだろうか。それについて日本人は何も考えていない。
<うちだ たつる・思想家>
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