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2月の衆院選開票速報を見ていて、「んんっ」と聞きとがめた。宮城県で当選したタレント議員が、東日本大震災15年への抱負を聞かれ、さらっと口にした。
5年更新の国の復興事業は一区切りつき、道路・住宅などハード面の建設はほぼ完了。被災地自治体の多くで、部署名から「復興」の文字が消えるらしい。
前を向くのは大事だが、傷心を癒やすのは共に忘れずにいることだけだろう。こころに「復興」という名の押し付けは禁物だ。
大手ネットニュース記者がこぼした。「震災はタブーなんです」。関連ニュースは明らかに掲載されにくい。見出しに「震災」があると直されるという。「全国的には読まれない。震災の文字を見ただけで避けられるのが、データ上はっきりしているから」
歳月のなせる余儀なき仕業だけが風化とは限らない。一人一人の思慮なき悪意が吹きだまって、猛威を振るう風化もある。
日本記者クラブ取材団で福島県双葉町と大熊町を再訪した。福島第1原発の敷地がまたがる両町に、同県内で除染された土や草木、がれきなど膨大な廃棄物(東京ドーム11杯分)の中間貯蔵施設が設置されて11年が過ぎた。
用地は東京都渋谷区に匹敵する約1600ヘクタール(取得率約8割)。原発の爆発で強制的に立ち退かされた多くの住民が、次は帰宅どころか父祖伝来の土地・家屋を「核汚染のゴミ置き場」として手放す苦渋の決断を強いられた。
法律で30年以内(2044年度末まで)に全て県外で最終処分すると決まっている。同県の重すぎる負担を日本中で分かち合う趣旨だが、多くの国民は自分の町にも除染土が来るとは知らない。現状は首相官邸や中央省庁の花壇に少量を移した程度にとどまる。
「原発の電力は首都圏で使われていた。なぜ除染土まで我々が引き受けねばならないのか。人ごと感が強すぎる」。伊沢史朗双葉町長は憤まんやるかたない。
帰還が始まったのは一番遅く、震災の11年後。7140人いた住民は、今も43都道府県300余市町に離散中。希望者に毎月、町の現状を伝える便りを送る。住民票を残している人は多いが、宛先は2750世帯に減った。
現町民201人。6割は新たに移住した壮年・若者世代だ。
提案したい。スマホの購入時、日本中の人に両町の実情を知っているか確認を義務づけたらどうだろう。原発の罪と罰を知らずに利便だけを享受する暮らし。それが風化を進める。
(専門編集委員)
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