2020/11/03
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民主主義を揺るがす「誘導工作」脅威への備えを急げ  =後節=​
= WEDGE Infinity 2020年10月29日 トランプvsバイデン 戦の後にすべきこと : 飯塚恵子 (読売新聞東京本社編集委員・論説委員)


サイバー攻撃はさらに、インフラ施設を混乱させる行為や、それをめぐる脅迫などによって、政治的圧力を行使する手段にも発展している。

 更には、サイバー攻撃は中長期的な時間軸で、世論に影響を与えたり、選挙戦に介入したりして、「誘導工作」を図るものだ。少し前までは、文字や画像の悪用や改ざんが中心だったが、前述のように、この1~2年、動画の「ディープフェイク」も席巻している。

 今、世界では、この二つのタイプがからみ合い、様々な「工作」や「操作」が刻々と行われている。

知らぬ間に進む世論操作 「情報」めぐる欧露の攻防
 世論はどのように誘導されるのか。そして、その目的は何か。2016年の前回米大統領選に対するロシアの介入が一つの典型である。

 ロシアは、ドナルド・トランプ候補(共和党)に肩入れし、対露強硬派だったヒラリー・クリントン候補(民主党)をおとしめることを狙った。その手口は、大きく分けて二つある。

 第一に、ロシア国内の企業を使い、米国内外のソーシャルメディア上に、トランプ氏に有利になるような虚実取り混ぜた情報をまき散らした。
 第二に、クリントン陣営のスタッフらのメールアカウントをハッキングしたり、民主党全国委員会などのコンピューターネットワークに侵入したりして、何十万件もの文書を不正に入手し、ソーシャルメディアに流出させた。この時は、内部告発サイト「ウィキリークス」も使い、民主党内の機密情報なども暴露した。



 米国のロバート・モラー特別検察官らの捜査により、一連の行為は、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)が行ったことが明らかになっている。重要なことは、こうした脅威が当時、米国社会で広く認知されておらず、知らない間に進んでいたということだ。

 これらの世論操作や選挙介入が、米国の有権者に最終的にどう影響したのか、具体的には測りようがない。しかし、大統領選に勝利したトランプ氏はこの4年近く、ロシアに総じて甘く、プーチン大統領とも融和的関係を保っている。何より、トランプ氏は、プーチン氏が望むような国際秩序の不安定化、そして米国内の分断化に、結果的に大きく〝貢献〟してきた。

 ロシアは、14年のウクライナ侵攻以降、欧米から制裁を受けて孤立し、国内経済は停滞している。プーチン政権にとって、西側社会を混乱させ、分裂させて弱めることは、国家の地位と尊厳を保つための主要な戦略目標だともいえる。いわば、「カオス(無秩序)」を目指す戦略である。

 ロシアのこうした動きに対する脅威認識や対応策は、米国よりも、むしろ地理的に直接対峙する欧州の方が進んでいる。「誘導工作」を安全保障上の脅威としてとらえ、北大西洋条約機構(NATO)や、欧州連合(EU)などが対策に力を入れている。

 NATOはいくつかの研究所を設け、国際会議開催や報告書発表などの啓発活動に余念がない。また、NATO加盟国ではないが、例えばスウェーデンでは、政府が「情報操作対策ハンドブック」をまとめ、18年の総選挙の前に各自治体で「世論操作の見分け方」の訓練を実施した。すべては、国民のリテラシー向上を目指すものである。



 さて、この11月の米大統領選はどうなっているのか。米欧の様々な機関や報道の指摘からも、ロシアは当然ながら介入を試みていることがわかる。前述の「ディープフェイク」の駆使など、技術的にも高度化している。

 米国に本社を置くIT専門メディアCNETは、「ディープフェイク」の影響力について、「内容そのものよりも、真偽が判別できないディープフェイクの『存在』自体が人々を惑わせる」と指摘する。この惑いが選挙システムの信頼性への疑念を生み、民主主義を揺るがす、という分析は、カオス状態を一段と深めたいロシアの狙いにも合致する。



各国の思惑渦巻く介入工作 日本も脅威認識を高めよ
 米国の情報機関を統括する国家情報長官室(ODNI)は8月、ロシアに加え、主に中国とイランが大統領選への介入工作を継続している、との警告を発表した。ロシアはトランプ氏の勝利を望み、中国とイランはトランプ氏の敗北を期待している、と具体的に指摘する異例の内容である。16年の教訓を踏まえた動きともいえる。

 注目すべきは、ODNIの警告は、ロシアより中国をトップに据えていることだ。「中国は、自国の国益に反し、批判的な言動をする政治関係者に対し、圧力をかけたり誘導したりする『影響努力』を続けている」としている。ロシアやイランの項目と異なり、具体的な手段は詳述していない。

 日本にとって、こうした中国やロシアの動きは他人事ではない。特に、東シナ海での海洋活動などを通じ、政治的な自己主張を強める中国は、目に見える軍事的な動きだけでなく、すぐには感知できない世論操作やサイバー攻撃を本格化させる可能性は十分ある。

 16年の大統領選の最大の教訓は、こうした「誘導工作」という脅威に対する認識が米国内で浸透していなかったことだ。デジタル化を進める日本がまずできることは、この脅威認識を高めることである。冒頭で指摘したように、情報に対するリテラシーを上げるため、国民を啓発する取り組みを本格的に始める時が来たといえる。

(参考記事) 選挙人制度はもう古い、改革はありえるのか 土方細秩子 (ジャーナリスト)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/21201?utm_source=newsletter&utm_medium=email&utm_campaign=20201029



古都 老翁がいた。 翁は愛犬を愛で朝夕の散歩に伴う。 翁は大壺を持ち、夕刻 酒を片手に壺に躍り入る。 くぐもる声で語る傾国の世辞は反響し、翁の安息を妨げ、翁はなす術も無く自笑。 眠りに落ちた。 
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Last updated  2020/11/03 05:40:05 AM
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