記憶の記録

2009.06.12
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カテゴリ: 住宅革命
以前御紹介した僕の本

は7月末に日本住宅新聞社から出版されることになりました。
たくさんの方に御協力をいただき
何とか出版にこぎつけることができて
本当に幸せです。
ありがとうございました。


気の早いフライングシード


タイトルは
「住宅革命」
主人公シード君がミステリーを解き明かしながら
理想の家に近づいていくという
フィクションだけれどほとんど実話という危険な内容です。

しかも「住宅革命」は
このブログで連載することにしました。
日記の合間に書き綴っていこうと思っています。
完結するのがいつになるのか・・
なにしろ長編大河ドラマですから・・
とりあえず今日は






「住宅革命」

 そのとき、僕は哺乳類の小動物だった。
 サイズはネズミくらいで、巨大な爬虫類の脅威にさらされながらわが身と家族を守るために地面に穴を掘って身を潜めて生きている。数億年後に人類となるために。
 僕は、他の生物と変わることなく大自然の中で身を守りながら食料を得て生命を繋ぐために子孫を増やすという本能を全うしていたのだった。
 僕の家族は14匹。ハニーは抜群のプロポーションで12匹も子供がいるとはとても思えない。授乳中だから8っつのおっぱいは、はちきれんばかりだ。この状況ではしばらくの間、僕一人で食料の調達をしなければならないけれど、それも本能の赴くままの気楽な家業なのだ。


「お客さん、お客さん、終点の東京ですよ」
車掌に肩を叩かれて目をさますと、名古屋駅を出たのぞみは一瞬で東京駅に着いていた。
どうやら人類の祖先シード君は、小惑星の激突や氷河期も生きながらへ、ついに地上の覇者「人類」となってくれたらしい。ボインのハニーも子供たちも、きっと幸せな人生をおくったにちがいない。

 研究所に戻ると新しい仕事が僕を待っていた。
<環境建築研究所>という、いかにも胡散臭い名前の職場だが、なかなか鋭いスタッフがそろっている。なかでも所長の杉山は胴回りが120cmはあろうかという重鈍な風貌とは裏腹に、鋭い視点で建築を分析するプロフェッショナルで、まだ駆け出しの僕にさまざまな現象の分析法を教えてくれる。
 その杉山が僕のほうをチラチラと見ている。きっと、新しい仕事を僕に任せても良いものかと検討しているのだ。
(やばっ! 頼むから、厄介な仕事は先輩の穴沢にでもやらせてくれ)と目をそらした僕を杉山が呼んだ。
「シード!来てくれ」
(しまった。一瞬目が合ってしまった。)
「はいっ所長。何でしょう」
杉山は、乱暴に走り書きされたクライアントの連絡先を僕に渡しながら言った。
「ここへ行って来てくれ。外壁に奇妙な模様が浮き出していて。気味が悪いから調査してくれという依頼だ。場所は群馬県の前橋だ。調査費に余裕が無いから在来線で行け」
「ラジャー(まったくこの所長ったらケチ親父なんだから)」と思いつつも出張好きの僕は七つ道具を手に取るとすぐに研究所を出て、現場に向かった。在来線ののんびりした走りも、僕の居眠りでワープしたかのように一瞬のうちに前橋に着いたのだった。前橋駅にはクライアントの田村京子が待っていた。(ラッキー!)深田恭子似の美人だ。僕は杉山に感謝しつつ、小さくガッツポーズを決めた。このあと、とんでもない現場が僕を待っているとも知らずに。









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Last updated  2009.06.12 11:55:06
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