来年も海外歌劇場の来日公演はいくつかありますが、大型の引越し公演で、楽しみなものが2つあります。それも、ドイツ、イタリアを代表する劇場が、それぞれ、ドイツもの、イタリアものの名作を携えてくるのが嬉しい。
9月のバイエルン国立歌劇場の引越し公演と、6月のパレルモ・マッシモ劇場の引越し公演です。
バイエルンのほうは、ベルリン・フィルのシェフに決まったキリル・ペトレンコが指揮し、ワーグナーのプリンス、クラウス・フローリアン・フォークトが初役のタイトルロールに挑む「タンホイザー」がとにかく楽しみ。もうひとつの「魔笛」は、定番のエファーディンクのプロダクションで誰でも楽しめそうです。
とはいえ、イタリア・オペラ好きとしては、パレルモ、マッシモ劇場の来日はほんとうに楽しみ。マッシモ劇場は、シチリア島最大の歌劇場で、イタリアを代表する劇場のひとつ。かなり前ですが一度来日し、シチリア島ゆかりのオペラ、「カヴァレリア・ルスティカーナ」(「道化師」とのダブルビル)、「シチリアの夕べの祈り」を上演しました。今回は、イタリア・オペラのきわめつけの人気作「トスカ」「椿姫」です。
「トスカ」は、タイトルロールに、今この役を世界中で歌っているアンジェラ・ゲオルギューをキャステイング。一方「椿姫」は、御大ヌッチに、主役は、これも今ヴィオレッタをあちこちで歌っているランカトーレ、そしてイタリアのリリックテノールの期待の星、ポーリ。これ、3人とも、現時点ではほぼほぼ理想的なキャスティングではないかと思います。さらに、ランカトーレはパレルモ出身。地元が生んだ世界的なソプラノなのです。だから、その点でも、理想的なのではないでしょうか。
さらに、指揮が、今、注目しているイタリア人若手指揮者のひとり、フランチェスコ・イヴァン・チャンパなのです。彼は2013年にパルマで「群盗」を聴いて注目し、その後サレルノの「オテロ」、モデナの「シモン・ボッカネグラ」などを聴くことができました。今年6月にはヴェネツィアのフェニーチェ歌劇場で「椿姫」を聴き、ていねいで、綺麗で、歌心あふれる音楽作りに感服しました。
その時のブログです。
http://plaza.rakuten.co.jp/casahiroko/diary/201607180000/
そのチャンパ、ちょうど今月、新日本フィルで「第9」を振るために来日。合間を縫って、短い時間ですがインタビューに応じてくれました。「たぶんこれまで一番多く振っているオペラ」だという「椿姫」(2014年にはパリのオペラ座でダムラウと共演しています)について、音楽について、オペラについて、大いに語ってくれたのですが、またそのことは改めてあちこちで書いていこうと思います。とりあえず今回のパレルモ来日公演の「椿姫」のキャストは、「理想的。素晴らしい。夢のよう」だと語っていました。また要のジェルモンを歌うヌッチについては、「自分が出会った現役の最高のアーティスト」だと。
以下、フェイスブックにアップした内容を貼り付けます。
インタビューは、主に、来年6月に彼が日本で振る、パレルモの来日公演についてでしたが、音楽について語るチャンパの目がきらきらしていて引き込まれてしまいました。ほんとうに音楽が好き、というのがふつふつと伝わってきて。「自分はただ作品に奉仕するだけ。何よりもそれが第一。名声とか財産とかそういう ものはすべてその後のこと。有名になることに興味はない」。。。。ああ、私、こういうせりふに弱いんです〜。笑。
主に影響を受けたのはジュリーニとオーレン。今日、彼の演奏を聴いていて、ちょっと「ジュリーニ」がよぎったのは確かで、そう伝えたら、ほんと?と嬉しそうに顔を輝かせていました。
オーレンからは「劇場のリズム」の存在を教わったのだそう。どんなオペラにも、特有の「リズム」があるのだ、というのでした。
6月に来日するパレルモ、マッシモ歌劇場の公演で、彼が指揮する「椿姫」について、「単純な音楽だからつまらない、というひともいる」と水を向けたら、「それは作品が全然わかっていない、作品を全然読んでいない人の言葉。「椿姫」はすべての音符、そして音符の間に意味が有る。その音が語っていることは無限」なのだ、と。
今回のパレルモの「椿姫」のキャストの素晴らしさ、とくにヌッチの素晴らしさを熱く語り(600回も「リゴレット」を歌っているのにまだ勉強していること、まだ、毎回、「新しいこと」がないかと探していること、初めて顔合わせをした時に、緊張している自分に向かって、「あなたが指揮者なのだからあなたに従う」といったこと、子供のように目をきらきらさせて楽屋に入ってくることなど)、ヌッチは「自分が会った中で、現役の最高のアーティスト」だと言っていました。あと、パリの「椿姫」で共演したダムラウのことも絶さん。「すべての音に意味を見出してくるアーティスト」なのだそうです。その他にもいろいろなアーティストの名前があがりましたが、常に相手に敬意を持っていることが伝わってきて、とても心地よく感じました。こういう人はオペラで重宝されると思いますが、げんにチャンパは今相当な売れっ子で、今回の「第9」のあとも、スペインのビルバオ、アルゼンチンのコロン劇場、イタリアの各地の劇場、ベルリンでのダムラウのコンサートと、予定が目白押しです。
とにかく音楽が大好きで、崇敬していて、独自の言葉を持っている、そんなアーティストの言葉をきいているのはこの上なく幸せなもの。短いインタビューでしたが、極上の時間を過ごすことができました。ありがとうマエストロ!
マッシモ劇場の公演は、東京のほかにもびわ湖や名古屋でもあります。ぜひ、ひとりでも多くの方に観て、聴いていただければと思っています。
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