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Terui @ Re:育めんパパです 育めんパパさん、こんばんは! すみませ…

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Terui

Terui

2004/03/05
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カテゴリ: 国語
今回、某中学の国語の試験範囲に入っていた井伏鱒二の「山椒魚」。


国語の成績が上がらない理由には、「解答の書き方を知らない」、「文章の読み取り方が分からない」など様々な要因がある。しかし、あまり言われないことであるが、重要なこととして、「その子が持っている知識の絶対量が少ない」という原因が大きく絡む場合がある。

この「山椒魚」はまさに「知識の絶対量」が試されるような文章で、生徒さんによっては、この文章が一体何の話をしているのか全く読み取れない生徒さんがいる。

この文章の最初の方は次のような内容である。

「ある夜、一匹の小えびが岩屋の中へ紛れ込んだ。この小動物は、今や産卵期のまっただなかにあるらしく、透明な腹部いっぱいにあたかも すずめの稗草の種子に似た卵をかかえて、岩壁にすがりついた。そうして、細長いその終わりを見届けることができないように消えている触手を揺り動かしていたが、いかなる了見であるか、彼は岩壁から飛びのき、二、三回ほど巧みな宙返りを試みて、今度は山椒魚の横っ腹にすがりついた。」

学校で意味調べをさせる(「する」じゃないところがまた問題)とき、上記範囲の中から学校が指定するものは、「岩屋」「稗草」「触手」「了見」である。

ところが、国語が苦手で「知識の絶対量」が少ない生徒さんは、これだけ調べても全く文章のイメージ化がはかれない。

3年途中にご紹介で入会した生徒のJ君。

「小えび」が分からないことには、その後の「産卵期」も、「透明な腹部いっぱいに」も、「消えている触手」も一体なんのことやら、になってしまう。

J君に聞く。
君は『小えび』を見たことはない? 食べたこともない?
「えびは天ぷらでしか・・・」
ん~、天ぷらのえびは「小えび」じゃないからねぇ。 

その後よく話をきいたが、J君はむいた形(寿司ネタとかの)のえびしか見たことが(認識したことが)ないようだった。まずい、寿司ネタ状態のえびが「えび」と認識している。

『かっぱえびせん』の袋にのっているえびだよ。
「はぁ。」
今一歩、ピンときていないようなので、A4の紙にでっかく「小えび」の絵を書く。

でも絵じゃなぁ、「生きているえびは透明だ」というのまでは分からないもんなぁ。
あっつ、君は図鑑をもっていないの?魚とか説明している「生物図鑑」。小さいときにお祝いとかでもらったりしないのかなぁ。

しばし部屋の中を捜すが発見できず。
「捨てたかもしれません。」
あ~そうなんだ。あのような図鑑は中学卒業までは手元に置いておいた方がいいんだよね。

仕方がないので、私が書いた「小えび」の絵で説明する。
でも、教えていてもなんかしっくりこない。

例えば「生きているえびは、透明です」が、「生きているイカも透明だから、それと一緒なんですね。」みたいに。
しかし、彼にはあまりそれが感じられない。

ふと、
君は釣りに行ったことある?
と聞いた。
「はい、あります。」
あっつ、ホント! 何釣りだったの? 海釣り? 川釣り?
「あの、なんか四角に区切ってありました。」
ん? 四角? あっつ、君、それ釣堀じゃん。
しかも彼はそこで「釣り」をしないで、見ていただけだったそうなので、「魚」というものを実感としてとらえられていないようだった。

「魚類」全般に関して「実感」がないので、井伏鱒二の文章を読んでも、躍動感あふれる「えび」の様子がわからず、おまけにスケール感もないので、この後出てくる「山椒魚が閉じ込めた」も、「なんで閉じ込められるのか」がさっぱりわからないことになる。

学校では、こういったことは「分かっている」という前提で進められている。J君は一生懸命ノートを取ってきているのだが、授業で言っていることのほとんどが理解出来ていないんだろうな、と思うと、J君が不憫でならない。

お家の方からすると、こういうのは、「学校でノートを取ってきているのに、テストができないなんて。。。やっぱりこの子は頭が悪いんだわ。」とお考えになる原因なんだろうな。
頭が悪いんじゃなくて、「知識の絶対量」が少ないんだよね。

小さいときにお家の方とどこかに遊びに行った、という経験があまりないJ君。
さらに、読書もあまりしないというJ君。
もっと言えば、お家の方とほとんど会話をしないJ君。

私が見た感じとして、J君は同年代の生徒さんの半分以下の「知識」しかない。

もう少し早く入会されていれば、まだまだ手の打ちようもあったのだが、中3の今となっては、とにかくテストの点数を上げるための、「その場限りの指導」に走らざるを得ない。

私立なので高校受験がなかったから良かった。ただ、こんな感じで高校生になっても苦しいだけだよなぁ。高校の文章はもっと難しいもんね。

お家の方には、現状の状態を正直にお伝えした。
「あの子はえびが分からないんですか!」と絶句されるお母様。そうだよね、国語の成績が上がらないのが、「知識不足」が影響しているんだもんね。

こういった「知識量が少ない」生徒さんが最近増えている気がする。
お家の方がよく見ていれば多分、気づくことだと思うのだが。
「国語ができない」と嘆く前に、「知識量がどうなのか」も考えると、適切な対応というのは、もっと違ってくると思う。

お子さんに「お前は勉強ができない」と言う前に、お子さんの様子をもっとよく見てあげてください。





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Last updated  2004/03/06 12:10:25 PM
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