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・12、6、月
本のタイトルが橋のない川であるにも関わらず、物語の中に橋のない川は出て来ない
。
唯一第一部本の冒頭で、二人の少年の母(ふで)が義理の母(おばあさんのぬい)に向かって見た夢の話をする場面がある。
日露戦争で死んだはずの夫が川の向こう岸で自分を呼んでいる。
でも川に橋はなく、お互い上流から下流に走り回って橋を探す。
でもそのうち夫はロシアの雪に埋もれて行くという夢。
おそらく橋のない川は、彼らの前に横たわる社会的激流を表すのだろう。
もちろん明治維新以前、明治天皇による部落解放令発令より前には、本当に村と村の間の川に橋がなかったと聞く。

と本は語る。
校長、教師、クラスメートたち全体から受けるその凄まじいいじめを耐え抜いて誠太郎も孝二も尋常六年を終え、尋常高等科まで卒業する。
皆充分な教育を受ける権利を剥奪されて来た上、明治の子は学校に行っても差別に耐え切れず退校するため、村のほとんどの人々が文字が読めない。
そんな中文字の読める孝二たちを中心に、麻裏草履作りの仕事場で新聞の内容について社会情勢を語り合う男たちの哲学が展開されて行く。
この村の人々だからこそ持ち合わせる、澄んだ目で見る我が国の政治に対する疑問である。

しかし考えてみれば著者の住井すえさんは女性でありながら、男たちの心の動きを実に事細かく巧みに表現する。
孝二が密かに心を寄せる普通村のまちえへの思いなど、何故女性にそこまで知り得るのかと思わせる部分がある。  つづく



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最終更新日  2010.12.09 00:37:25
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