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・3,18、木
狭いサロンの中は満員電車よろしく、ぎゅうぎゅう詰めの皆立ったままの状態の中、矢崎節夫さんが現れた。
彼は60代前半ぐらいの紳士で、僕はもっと年配の方と思っていたので驚いた。
この方がいなければ、金子みすヾは現在も全く無名な詩人なのだ。
彼が大学生だった時(その時すでに矢崎さんは童謡詩人を目指していた)、偶然みすヾの大漁という作品に出会い、言い表せない大きな衝撃を受けたという。
それは鰯の大漁で浮き立つ港で、海の中の鰯の立場に立つことができるというショックであった。
みすヾの全作品を通じて一本通った姿勢は、私と貴方ではなく、貴方と私であるという。
それは仏教の教えにも通じる自分は生きているのではなく、生かされているという考えから来る視点。
例えば「土」や「お魚」「こだま」「さびしいとき」などという作品にはくっきりとその視点が表されている。

しかし上山さんがみすヾの名を口にし、しかも自分の姉だと言えるまでには何十年の歳月が必要だったという。
みすヾの自殺は、それほどまでに上山さんの心に重い何かを落としていたということだろう。
そして上山さんの手から500編以上の作品(みすヾは西條八十と上山雅輔ただ二人だけに自分の作品をまとめたノートを預けていた)を手にした矢崎さんは、このような素晴らしいものを独り占めしていてはいけない、必ず世界中の人々に読んでもらわなくては、そのような思いで今まで活動されて来た。
その結果今や様々な国で翻訳されて出版されている。  つづく


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最終更新日  2011.03.18 06:39:23
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